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「ん……」
目を覚ませば、知らない天井が目に入った。あれ、ここはどこだったっけ…。それに、いつの間にベッドで寝ていたんだと急いで体を起こす。
「痛ッ…」
すると、体中に激痛が走った。全身が針で刺されているようだ。だけど、痛みでだんだん冷静になってくる。そうだ、お世話になる家に挨拶に来たら怒鳴られ、首を絞められて…殺されかけて…。特に痛みが酷い自分の首をそっとさする。
「……ッ…」
痛みがこれは紛れもない現実なんだとつきつけてくる。恐怖と混乱でボロボロと涙が出てくる。なぜ、自分がこんな目に合わなくてはならないのかー…、こんな所に来なければならなかったのかー…。もう嫌だ、怖い、逃げたいと思うのに体の震えが止まらなくて言う事をきかない。
「なんで…こんな目にっ……」
「本当、なんでだろうねぇ」
急に降ってきた声に体を震わし、そちらに顔を向ける。そこには、帽子を被った青年がニコニコと笑いながらドアにもたれかかっていた。
「…だ…誰…?」
「んふっ、ライトくんだよ、ビッチちゃん」
瞬きをした次の瞬間にはライトと名乗った青年はいつ移動したのか、気が付いたら既に目の前まで来ていて思わずベッドの端まで後ずさる。
「え…な、んで…」
「驚いちゃって、可愛いね。」
「ひっ…」
出来るだけ作った間も一瞬で詰められる。
「ねぇ…ビッチちゃん。ボクとイイことしようか」
「…え…きゃっ!!」
彼の言葉の意味も分からない内に景色がぐるっと向きを変えた。背中はベッドに押さえつけられ、視界は彼でいっぱいだ。
「…なにを……」
「そんなの決まってるでしょ、ビッチちゃん。キミを戴くんだよ」
あぁ、だめ。もう頭がついていかない。
「大丈夫、ぜーんぶボクに任せてよ。…ビッチちゃん」
首筋に冷たい感触がしたのも束の間、ずぶっと何かが私の体の中に入ってきた。
「あ…やだぁ、痛い…痛いよ…」
私の言葉なんて聞かず、じゅるじゅると私の中の何かを吸っている。
「…な、にこれ…。……ぁ、やだ、やだっ!」
抵抗しようにも彼がガッチリと私の体を押さえているので、抵抗出来ない。
「んんっ……はぁ…、ん…」
「あぁぁ……」
今度はより深く何かを埋められ、嬌声をあげさせられる。
「ん…、んぅ…………んっ、んん…」
「ひぅ……ぁ、…も…や、だ…やめ…ッ」
「あぁ、美味しいよ。ビッチちゃん」
やっと彼が顔をあげたと思ったら、彼の口は血で赤く染まっていた。
「ひっ……ば…化け物っ!!」
「化け物なんて失礼しちゃうなぁ。ボク等はヴァンパイアだよ、ビッチちゃん」
ヴァンパイアという言葉ではっと思い出す。
『僕らの餌にしかならない人間が屋敷を汚すなんて、どういう神経をしているの?』
『僕らの餌ー……』
玄関で会ったぬいぐるみを抱いた男の子の言葉。私はあの時気が付くべきだった。でも、もう遅い。今度はどこから吸おうと私の体を徘徊するキバをただ耐えるしか、もう術はなかった。
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