はじまりのはじまり1/2
―――それ、なんですか?
生まれて初めてみる大きな卵。
「これはね、ポケモンの卵だよ」
その卵を大事そうに抱えた人が答える。
―――ぽけ、もん。
無意識にびく、と体が動いて震えてしまう。
「そうだよ。…」
僕の姿を見て、卵を抱いた人はゆっくりと近づいてくる。
そして優しく響く声で言う。
「君も、触ってみて」
震えて上手く動かせない僕の手を大きくて温かい手が包み込んで
そっと卵に触れさせる。
初めて触るポケモンの卵は固くてざらざらしてて。
ほんのり温かくて。
とくん、とくん、とリズムを刻んでいて。
僕の手を包んでいた手が僕の頬に触れる。
―――あ、れ?
僕は涙を流していた。
流れた涙はゆっくりと大きな指がぬぐっていく。
頬と手に触れるものが温かくて、
心の凍った部分が溶けたかのように涙が止まらない。
「…君に、お願いしたいことがあるんだ」
泣いて声が出せない僕を 色の瞳が映し出す。
「この子を育ててくれないか?」
僕は自然とうなずいていた。
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