はじまりのはじまり
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―――それ、なんですか?
生まれて初めてみる大きな卵。

「これはね、ポケモンの卵だよ」
その卵を大事そうに抱えた人が答える。

―――ぽけ、もん。
無意識にびく、と体が動いて震えてしまう。

「そうだよ。…」
僕の姿を見て、卵を抱いた人はゆっくりと近づいてくる。

そして優しく響く声で言う。

「君も、触ってみて」

震えて上手く動かせない僕の手を大きくて温かい手が包み込んで
そっと卵に触れさせる。


初めて触るポケモンの卵は固くてざらざらしてて。
ほんのり温かくて。
とくん、とくん、とリズムを刻んでいて。


僕の手を包んでいた手が僕の頬に触れる。
―――あ、れ?
僕は涙を流していた。
流れた涙はゆっくりと大きな指がぬぐっていく。

頬と手に触れるものが温かくて、
心の凍った部分が溶けたかのように涙が止まらない。

「…君に、お願いしたいことがあるんだ」
泣いて声が出せない僕を 色の瞳が映し出す。


「この子を育ててくれないか?」


僕は自然とうなずいていた。


 
   

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