10/09*シアワセメモ(HN)

11/18*Grown-up(JO)

02/20*Changed Hair, Not Change――(GM)





 今日行ったパン屋の珍しい点を忘れないように記入していたら、坂本くんが頭を出してきた。
「まーた店のメモしてんのか、長野」
 ため息まじりのそれに、俺はにっと笑った。
「いーでしょ別に。俺が好きでやってるんだからさ」
 そう。このメモ帳は毎回、自分の好きな食に関してメモをしている大切なもの。食べ歩きを好んでしていたらいつのまにかついていた癖で、今となったら習慣化して、みんなから聞かれたおいしいお店の質問なんかも、これで答えてたりする。
 坂本くんの「まぁ、別にいいけどよ」と言う声を後ろに俺はページの完成を進める。
 そして、
「出来た、っと」
「――長野くん」
「なーがのくんっ」
「ん?」
 急な高い二つの声に、俺は顔を上げた。
 瞬間、手元からなくなるメモ帳。
「もーらいっ!」
「あっこら!剛!健!」
 小さなメモ帳は森田と三宅に渡ってしまった。
 取り替えそうと思ったが、たったと行ってしまい、井ノ原と岡田がいる部屋の中心に潜ってしまった。
 それから輪になった四人の笑い声が聞こえてくる。
「あ〜ありゃあ当分帰ってきそうにねぇな」
 同情してくれているのか、笑いながら隣に来る坂本くんに「はは、そうだねぇ」と笑い返した。
「……けどさ」
「何?」
「お前、ほんとに食が幸せなんだな」
 そう言われ、そうかなと首を傾げて笑った。
 確かに、食べる事は好き。食べ歩きも。新しい店を探すのも。
「でも」
「ん、」
「坂本くんが思っているよりも、幸せなものはあるよ」
 そう言って向こうを見れば、固まって笑ってるメンバー。
 そして、
「…………ん。ああ」
 見続けてみたらリーダーはもごもご何かを言ってひそかに赤い顔をそらした。
「長野くーんっ!」
 不意にまた呼ばれる。そこにいたのは、相変わらずにこにこしている三宅。後ろには、森田、井ノ原、岡田もいる。
「はいっ、ありがとっ」
 あの明るい声で手の中にメモ帳が戻ってきた。三宅はにこっと笑うと元の場所に戻る。
「何してたんだろな、あいつら」
「さあ……いたずらじゃないとは思うけど」
 隣からひょっこり頭を出す坂本くんを置いとき、でもとりあえずメモ帳を一枚一枚確認していく。
「もー……健たち何してたん、……」
 そこで言葉がつまる。
「…長野?」
「……ね、坂本くん」
「なんだ?」
「俺の一番の幸せは食事じゃない。やっぱ、これだよ」
 真っ白だったはずのメモ用紙の一枚。
 それに浮かんでいたのは、文字の違ういくつもの言葉。
『なーのくんおめでとう!』
『いつまでも長野くんで』
『長野くん大好きだよ!』
『ひろし おめでとう』
 最後に坂本くんが隣から、さらさらとメモをした。
『誕生日おめでとう、長野』



HAPPY BIRTHDAY
Nagano Hiroshi



(とりあえずリーダー誕のリベンジ(笑)で2TOPの絡みを過剰にしました(爆))











 携帯が、鳴った。
 仕事が終わり、やっと帰ってきた自宅。夜遅く、もう日も跨いでしまいそうな時間なのに。
「……はい、」
『やっほ〜い准ちゃ〜ん』
「………なんや、イノッチかい」
『えーっそんな嫌そうな声出さないでよぉ〜……って待って待って!電話切らないで岡田ぁ!』
 なんで実際に見えてないのにわかるんや。
 そんな言葉が頭に浮かんだが、あえて飲みこんだ。というか。
「深夜なのによくそんなテンションでいられんなぁ」
『そんな言うなよ。今日は俺にとっても大事な日なんだかんよぉ』
 そう言ってにっと笑う感覚が伝わる。
 ……ああ、なんやかんやだけど。やっぱ、イノッチや。
「大事な、って?」
『えーちょっとちょっと。ついに坂本じいちゃんみたいにボケちゃっ――だだだ待て待て待て消すなよ消すなよっ!?』
 あ、本気で電源ボタンに手をかけてた。
 そう思ったが、次には携帯の向こうの咳をこむ音。そして。
『――岡田』
 ワントーン下がった、本気声。
『――お誕生日おめでとう』
「……ありがとう、井ノ原くん」
 思わず気持ちが高まってしまって、隠すようにわざわざ「井ノ原くん」と言ったら、予想通り『何々、わざわざ言い変えちゃって〜』と、いつもの洞察力を出してくれた。
『はやいな〜もう岡田も三十路かぁ』
「まぁ、そやな」
『てか岡田、今日仕事でお誕生日祝われなかったのか?』
「いや、してもらったけど」
 確かに、今日イベントで祝ってもらった。でも。
「まだぼけてへんで。俺は」
『ははっ、根に持つなよー』
 そんな笑った声に、こちらもつい笑みがこぼれた。
 ……と同時に、眠気がきて。
「そういえば」
『ん?何?』
「明日会うやん、イノッチと。イノッチの朝番組で」
 わざわざ今電話してこーへんでも。
 そう言うと、携帯の向こうでは、んーまぁねーと言いながら、切らない声。
 でも、自分も嫌じゃないから。疲れているくせに、お互い他愛のない話を続ける。
『そういや今日、ボジョレーヌーボの解禁だったな』
「ああ、そんなニュース見たかも」
『――あ!じゃあ岡田の誕生日プレゼント、ボジョレーヌーボにすっかな!』
「え、くれるん?」
『岡田がいい子でいてたらねー』
「俺は子供かっ!」
『あはははっ!』
 豪快な笑い声。夜遅くとは思えない、
『……でも、』
 その言葉に、不意に止まる。
『岡田は“俺ら”の弟だよ』
 例え、ボジョレーヌーボを飲めるようになっても。
 例え、三十路を越えても。
 例え、世界を跨ぐ大きな存在になっても。
 血も、繋がってないけど。
『岡田は、“V6”の末っ子だかんな』
 俺が、大大大好きな。
「……おん」
 力強い言葉に、ただただ頷いた。
『じゃあ岡田、また明日、楽屋でな』
「おん、了解や。イノッチ」
 そして、通話を切ろうと。
『……おやすみ、岡田』
「………おやすみ、井ノ原くん」

 明日もその次の日も、果てない未来も、
 みんなが一緒にいて、
 自分があの優しいグループの、誇られる“末っ子”として、
 みんなと笑いあえたらと、
 ――そう、願った。



HAPPY BIRTHDAY
Okada Junichi



(どんどん上を目指していく岡田さんが、いつまでも大好きなV6の末っ子でいられますように)











 ドアを開けたら、丸刈りが、見えた。
「……剛か?」
 そう思わず呟くと、焦げ茶色の頭が振り向いた。
「坂本くん?」
「おー」
 気の抜けた、でもいつもの自分の答え方で返す。すると、向こうも「んー」と言って、元の位置に戻った。
 俺と彼は、基本必要以上にスキンシップはとらない。仲が軽いわけじゃない。ただ、井ノ原や健のように、抱きついたりと過激にスキンシップはしないだけ。長野とか岡田も、そんな感じがする。
 ――昔は、理由が違ったけど。
 そう、なんとなく思って、楽屋に彼以外いないことをふと思った。
「ごー」
「何、坂本くん」
「みんな、どうした?」
「まだ来てない。みんな後から来るんじゃね?」
「そうか」
「んー」
 また、沈黙が落ちる。でも、それは悪い沈黙じゃなくて、心地よい、沈黙。
 俺は自分の鞄を置いてソファに座った。
 何をして待っていようか……。時間も微妙で、これからのスケジュールでも確認しようかと思って体を傾けた、その時。
「――ぅわっ!?」
 ガシッ、と頭を掴まれた。
 そのまま、髪をワシャワシャ掻き混ぜられる。
「うひゃひゃひゃ!」
「んなっ!?なっ、やめ、やめろ剛っ」
「うひゃっ」
 独特の笑い方で、でも止めの言葉を無視して続けていく。
「あーもうやめろ剛っ!舞台用の髪なんだから!」
「うひゃ、わかってるよー貴重だから今のうちにいじっとくんだよ」
「それどういう意味だょ――っ痛!?指にひっかかったって今!?」
 頭皮の痛みに顔を歪めると、さすがに観念したのか「ごめんごめん」と手を離した。笑っていたけど。
 ……忘れてた、悪ふざけはメンバー 一、二を争うくらいだったな。
「だってさぁ、珍しいじゃん?坂本くんがパーマだぜ?うひゃひゃっ」
 確かにそう言われれば、そうかもしれない。もうすぐ千秋楽を迎える自分の舞台。その役作りのために変えた髪形は栗色のパーマ。最近はストレートに近かったから、したばっかりのころはみんなの反応が新鮮だった。
 いや、それわかってるなら、むしろ乱さないでもらえるとありがたいのだが。
「……つか、おまえだって舞台のために丸刈りにしてるんだろ」
「まぁ、そうだけどね」
 すぐ前までは金色で、それから焦げ茶色に戻り。彼の舞台がはじまったと思ったら、丸刈り。
「五年ぶり、だっけ?」
「あー。多分?」
「いきなり丸刈りで、俺らもびっくりしたんだぜ?」
「そりゃどーも」
 ひらっと手をあげ、でも彼らしい笑い方を続けている。……なんか、気にくわない。
 俺はいい気になっているこの短髪頭を、
「――こんの野郎!」
「んぎゃ!?」
 思いきりわしづかみして、掻き乱してやった。
「やっ、やめろよリーダー!」
「うーわー。やっぱり丸刈って撫でやすいなー」
「意味わかんねぇよ!」
 がしがしと撫で回してやると全力で否定しようとしてくる。でも、笑っていて。俺も、笑っていた。
 ――昔じゃ、デビュー当初の俺らじゃ考えられなかっただろうな。こんな景色。
 不意に暖色の情を感じて、笑みが浮かんだ。
 だから、ストレートに言うのは恥ずかしいから、どさくさに紛れて言ってみた。

「誕生日おめでとう、剛」

 彼は、八重歯を見せて、笑った。
 のせた手から伝わる温もりは、優しかった。



HAPPY BIRTHDAY
Morita Go



(昔(私がまだ幼かったころ)は違った関係だったらしいけど、私は、今の2人の関係が――6人の関係が、大好きです)
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