賑わう街。
道路は沢山の人にうめつくされている。
今日は休日。買い物や遊びなどでみんな楽しんでいる。
そこに、人込みの中をかけていく少女がいた。
ピンクの髪をふわふわさせ、その街で待ち合わせ場所で有名な噴水へむけて、走っていた。
近付いたとき、少女はある人物に気付き手をふりながら走り、名前をよんだ。
「エリオ君っ!」
「キャロ!」
その声に気付いた赤の少年、エリオは、走ってくるピンクの少女、キャロに手を振り替えした。
うれしそうに駆けてくるキャロ。
そのとき。
「きゃあっ!」
噴水広場の前の石段で足をひっかけた。
「キャロッ!」
あせってエリオは自分の得意な高速で落ちかけたキャロを抱き寄せた。
「あ、ありがとう。エリオ君」
「大丈夫だよ。キャロがけがしなくてよかった」
お互い笑いあう。
「エリオ君……まった?」
「ううん。僕も今来たんだ」
「そっか……じゃあ、お買い物行こっか」
「そうしよう」
そう言いあうと二人は並んで人込みの中を歩いていった。
初華 ―Syoka―
少し、人込みがへった通り。
キャロは声をあげた。
「あれ?」
「……どうしたの?」
「う、うん。あのね……あの花……」
エリオがきくとキャロは不思議そうにその花に歩みよった。
通りにずっと続く木のした。そこには赤と白、一本ずつ、ぴん、と、背をのばして咲く、花火のような花があった。
「――彼岸花?」
「だと思うけど……変じゃないかな」
「どういうこと?」
エリオは首をかしげた。
「だって――他の木のしたには咲いてないよ?」
「……え?」
エリオはまわりの木のしたをみた。が、他のところには、彼岸花は咲いていなかった。
それは、誰かが植えたとは考えにくく、とても不思議だった。
エリオはほかの方法を考えてみた。
「どこからか種が飛んできたとか?」
「それもないんじゃないかな。だったら、ほかのところも咲いているはずだよ」
「そっか……」
「そこで子供が死んだんだよ」
「え?」
突然の声に二人は振り向く。
そこには、ワンピースの勝ち気そうな女の子と、その子のワンピースをつかんで、後ろからエリオ達をみている女の子より小さい男の子。姉弟……この辺の子なのだろうか。
勝ち気そうな女の子は続ける。
「小さい子供だった。明るい、優しい子供だった」
「……どう、して?」
「――交通事故で、死んだ」
エリオとキャロは顔を見合わした。
「いきなり、車がスピード違反して突っ込んできた」
「……そうだった、んだ……」
エリオは顔をしかめた。
「……苦しい、って」
小さい男の子も話しだす。
「痛いって、苦しいって……さみしい……って……」
その声はだんだん小さくなっていき、ワンピースを強くつかみこんで泣き出した。
そんな二人をみて、エリオ達は、その子達の頭にそれぞれ手をのせて。
「そっか……苦しかったんだね」
「辛かったよね……」
優しくなでてあげた。
「――ッ」
女の子は目をぎゅっと強くとじた。
そして、エリオとキャロに一つ、質問をした。
「忘れないで……いてくれる?」
「この花のこと?」
「……さみしかった、この子達のこと」
その言葉に二人は顔をみあわして。
いつも以上の優しい笑顔で。
「もちろん」
はっきりと、言った。
その言葉にワンピースの女の子は軽く笑って。
「……_____」
聞こえないくらいの言葉をはき、そして……。
「――ッ!?」
ものすごい風が、ふいた。
「……すごかったね」
「……秋風かなぁ」
エリオとキャロは笑った。
「……あれ?」
ふと、二人は気付く。
あの子達がいなかった。
「……なんだったろうね。あの子達」
「……うん」
「……でもさ」
「分かっているよ」
「うん」
――忘れないで……。
――忘れないでね、僕らのこと……。
「絶対に……」
「忘れないから」
また、秋風がふいた。
そこに彼岸花が咲いていた。
ぴん、と、まっすぐに背をのばし、綺麗に咲いた花があった。
もうすぐ、枯れてしまうけど。
今だけは、
今だけは、
今だけは、咲いていて。
――命の花。
〜あとがき〜
帰り道。大きな通りに、たった一カ所、そこだけに彼岸花が咲いていました。
それは偶然でした。
きっと、みんな気付いていません。
それでも、あの花は、背をのばし、赤と白の花を綺麗に咲かしていました。
あそこで、何があったのか、私は知りません。
けれど、もし、そこで、命がはじけたなら。
今だけは、綺麗に咲いていて――。
これは現実と、私の空想が重なってできた物語です。
上の、あとがきの下の日記みたいなのが事実です。
私は、帰り道、彼岸花をみつけました。そこにしか、咲いていない、けれど綺麗な花でした。
そのとき、私は、もしかして、そこで誰かが亡くなり、『生きたい心』が『種』となり、『生きたい気持ち』が『芽生え』、そして『花』になったんじゃないか、と――。
私は、真実は知りません。
が、もし、そうだったら、自分の好きな作品、リリカルなのはで、自分の気持ちをかきたいな、と……。
その彼岸花を私は絶対に忘れないでいます。だから……。
――もし、私の気持ちが届いたらうれしいです。
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