「――、――さん……」
 はじめに聞こえるのは、誰かの声。
 次に感じるのは、まぶたが白く、周りが温かいということ。
「――ヴァイスさん……」
「……ぅ…?」
 はじめに聞こえた声が、自分を呼ぶ声だと気付き、ようやく俺は目を開けた。
 目を開け、まず視界に入ったのは、緑の瞳。綺麗で宝石のようなその瞳は、俺の好きな人の瞳。
「……ティアナ?」
「はい。おはようございます、ヴァイスさん」
 その瞳の持ち主は、俺が名前を呼ぶと、柔らかく微笑んだ。
 一様体はおこしたが、寝起きだからしかたないが、ぼぉっと言葉を返してしまう。
「あぁ……おは、よう」
 と、言った瞬間、突発的にあくびがでてしまった。しかし、そんな俺をみて、彼女は余計くすくすと笑っていた。
「朝ごはんできました。先に行っているので、後から来て下さい」
 微笑んで、それだけ言って彼女は部屋から出ていく。きらきらとしたオレンジの長い髪を揺らしながら。
 先程まで半開きだった目もしっかり開いて、俺は周りを見渡す。
 一人分には十分すぎるベット。かけられた執務官のスーツ。机には大量の書類。壁の一角に貼られたたくさんの写真。清潔感溢れる部屋。
 そして、オレンジの短髪の男性に抱えられた彼女の幼き頃の写真が入った写真立て。
 そう。ここは彼女の部屋だ。
 そして、昨日のことを思い出した。
「あぁ……。昨日、ティアナと一緒に寝たんだったんだよな」
 昨日。昨日は、ちょうどお互いの休日がかぶった日だった。それで、今日もお互い休日だから、ティアナの家に行って、一緒に寝たのだ。
 彼女の部屋に備えつけられている洗面所で顔を洗う。
「……よし」
 そして、俺はタオルで顔をふくと、リビングに向かう。リビングからは美味しそうな匂いがする。
 ――ティアナの手づくり朝ごはん、早速いただきますか。
 そう思いながら、扉を開けた。
「ティア――」
 名前を言いかけ、そこから言葉がでなくなってしまう。
 目にうつるのは、彼女の後ろ姿。オレンジの髪が長くおろされている。
 しかし、目がくぎづけになるのは――彼女の格好。
「あ、やっと来ましたか。たまご、焼いちゃいましたよ」
 と、しゃべりながら、彼女は微笑んで振り向く。それによって、余計ありありと見えてしまう。

 彼女の今の格好――上はTシャツ一枚に、下は下着のみ。

 後ろからも腰の細さとかに目を奪われかけるが、前を見ると、Tシャツの胸倉が緩くなっていて鎖骨らへんが見え、その白さがきらびやかで。胸も、なぜかTシャツ一枚だからかありありと立体に見える気がする。多分、ノーブラ、なのだろうか……?
 頭がそんなことを勝手に考えはじめてしまい、顔が赤くなってしまう。……俺ってそんなに子供だったか?
 赤い顔を半分隠しながら、ティアナに声をかける。
「ティアナ……?」
「はい?」
 しかし、彼女はとくに何も感じないらしい。
 ――そんな顔されたら、自分で言うのが恥ずかしくなるじゃねぇか……。
 そう思いながら、しかし指摘しづらいながらも聞くしかなくて、余計顔が赤くなりながら聞いてみた。
「その……その格好、って……?」
「あ……」
 そう聞くと彼女も顔を赤くして微笑んだ。
「いつも朝はこんな格好なんです。この格好のほうが着替えやすいし、動きやすいし……」
 そして、下の少し長めの裾を、きゅっと握りこんだ。
 しかし、今の俺にとって、その行動自体が、どうしようもなく、かわいくて、色っぽい。
「う……」
 思わず、変な声がでてしまった。
 そんな俺を見てか、彼女は急に不安げに声をあげた。
「あの。ヴァイスさん……?私、そんなに変ですか?」
「え!?い、いや、そのなんつーか……」
 と、目線を変えた瞬間、彼女をふいに見てしまった。先程の、Tシャツ一枚と赤く染まる頬に、今下から目線が追加。まさに最強。
 そのコンボが決まり、俺の頭が半分ボロボロになりかける。何と返答しようか――。
「そ、その、一枚っつーのは……結構、胸とかわかるし、色っぽいな、とか」
「……はぁ!?」
「………あ」
 しまった。言ってはいけない単語ばかり言った気がする。
「い、いや!だ、だからっ……っ……」
 訂正しようと思ったが、彼女が下を向いてしまっていることに気づいてしまい、言葉がでなくなってしまう。
「……」
「……」
 しばらく、沈黙が落ちてしまう。
「……あの」
 しばらくして先に口を開いたのはティアナだった。
「朝ごはんに……しましょうか」
 その顔は笑顔だが、真っ赤。
「……そう、だな」
 そう答えた俺もきっと、真っ赤なのだろう、な……。



心って、突発的に揺れるもの


 こうして、朝がはじまった。



追伸
 このあとの朝ごはん中、なかなか会話ができず、ついには「俺、ティアナがいいわ」とかなんとかヴァイスが言いだして、ティアナがツンデレ全開だったということを書き加えておく。





〜あとがき〜
 きすはないけど甘い、というか王道っぽいお話。とぅーヴァイティアばーじょん。
 実は、ある掲示板で二次創作のティアさんのイラストがあって、Tシャツ一枚と下着のみの、少し恥ずかしがるイラストで一目見てこのお話を考えてしまいました。(掲示板に二次創作さんのイラストなどは無断転載しちゃいけませんよー!)
 最近ティアさんだけのイラストでもヴァイティアに思考が行ってしまう……。
 一気に書き上げたのですが、後悔はしていません(キリッ)




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