機動六課のある場所。
 整備員が駆け回る中、自分の相棒のヘリコプターを整備する一人の男性が一人。
「……よしっ、これで完了っと」
 調整が終わり、顔をあげる。
「大丈夫ッスか?ストームレイダー?」
<All light>
 そう答えられ、苦笑する彼は「さぁ、休憩するっかな〜」と、相棒からおりた。
「ヴァイス曹長ッ!」
「あ、アルト」
 同じヘリパイロットのアルト・クラエッタが走ってくる。
 手にはたくさんのファイルがある。
 彼――ヴァイス・グランセニックは、ふりむいて声をかけた。
「どうした?」
「こ、これ!シグナムさんがっ!」
 そして、ヴァイスの前に手の中にあった山盛りのファイルを突き出した。
 アルトは続ける。
「シグナムさんが、『お前の怪我の内容だから、しっかり読んでおけ』……って!」
 ――マジで……?
 ヴァイスの頬に冷や汗が伝う。
 ――まぁ、姐さんが、優しいのはわかりますけど……。
 ただ、このファイルを読めっつうのは……。
「だから、はいっ!」
 アルトは無理矢理ヴァイスに渡すと、くるりとして。
「このあと、私会議なんで!」
 大量のファイルを持ってたっているヴァイスをおいて、走っていってしまった。
「…………マジかよ」



少しだけ休憩時間



 ――30分後。
 今までずっと読んで、やっと半分。
「……疲れたッスよ……」
 ヴァイスはストームレイダーに背中を預けて、身体を休ませる。
 ――少し寝てもいいッスよね……。
 そう思って、目を閉じて――。

「ヴァイス君?」

 紫の瞳と、視線がかちあう。

「……んなぁあ!?」
 ヴァイスは跳び起きた。
「あらぁ?びっくりしてもうた?」
「は、はやて隊長!?」
 くっくと笑っているのは機動六課部隊長の、八神はやて。
「ま、まじびっくりしたッス……」
「そか?いや、そんな気はないんやけど……」
 とかいいながら笑いをとめられていないはやて。
「ま、あれやで?勤務中にしっかりしとらんからよ?」
 それにはヴァイスも「う……」と、絶句した。
「はい。差し入れや」
 そう言うと、ヴァイスに飲み物をだす。
「あ、ども……」
 と、そのとき。

 ――ヴァイスさん、差し入れ、どうぞ。

 ――あぁ、サンキューッス。ティアナ。

 あるひとときの会話。
 ヴァイスは飲み物をとりながらあのオレンジの少女の笑顔に苦笑した。
 そんなヴァイスに首をかしげながらも、ふとはやては見つける。
「……あれ?」
 見えたのはヴァイスの隣の、ファイル。
「これなんや?」
「あ、それッスか?それは……」
 ヴァイスが言い切る前に、ひょいとファイルをとってパラパラ見始める。
 ファイルは、関心するほどよくできている。
 ヴァイスの後の治療の話みたいだったのだが、細かいところは手書きであった。
「よくできているなぁ……この字は――シグナムやな」
「あ、やっぱ、そうッスか?さすがッスね〜はやて隊長を」
「当たり前や――家族やで?」
 そう言って、ヴァイスをみると「そうッスね」と、苦笑した。
「シグナム姐さんも、優しいッスからね」
 ヴァイスは苦笑しながら続けた。
「いつもはあんな厳しいのに……いつも部下のこと考えていて。忙しいのに……ほんと、優しいッスよ。姐さんは」
 そんなヴァイスをみて、はやては、「なぁ?」と質問を投げ掛ける。
 ヴァイスは「なんすか?」とはやてをみた。

「ヴァイス君は誰が好きなん?」

 ふいた。

「な、な!?」
 急いで腕でふきとり、焦っていい返す。
 ――あ〜、やっぱりなぁ……。
 ヴァイスの焦りに苦笑しながら、確信して、より真実に行こうと質問する。
「いや〜機動六課っていい女性いっぱいいるやん?スタイルいいのとか、美人さんとか……近くにそんな人、いーっぱいいるんのに、なーんも気持ちがないなんてないやろ?」
 さすが、女性の_を手で__部隊長・八神はやて。

「な、誰が好きなんや?」
「い、いや……」
「そうやなぁ……あぁ、同じヘリパイロットのアルトは?」
「あいつは同僚、仲間ッスよ」
「じゃあ、フェイト執務官は?」
「あの人は優しすぎますよ……」
「じゃ、なのは隊長」
「ちょっ……やばい、と思うんすけど……?」
「シグナム」
「いや、姐さんは無理ッス!」
「じゃ、うちはどうや!?」
「ちょっ、た、隊長――!?」

 興奮して、ずいずいヴァイスに詰め寄るはやて。
 しかし。
「なんや……完ぺき拒否かいな……」
 自分をあっさりあれだったんで、はあはあしながらも落ち込んでいる。
 逆にヴァイスは。
 ――よ、よかった……。し、死ぬかと思った……!?
 質問攻めに必死にたえたヴァイスも、息が荒い。
「な、んや……後、だれやろ……」
 いや、もぅいいんスけど……。というヴァイスの声も聞こえていない。
「スバル――は、あの子はちょっと突っ走るタイプやから、ヴァイス君のタイプちゃうか」
「は、はやてさん?」
 そういいながら肩を組んで、一人考えはじめる。
「キャロ――あ、あかんっ!そなんだったらヴァイス君はロリになってしまう!それはあかんよ!?……だ、第一にキャロにはエリオがいるんや!それはないな!そや!そらない!」
「あ、あの〜……?」
 ヴァイスはなんか勝手に言われゆくのに慌てる。
 そして、とめさせようと、後ろ向きのはやてに手を肩をおいて。

「ティアナ!」

 おもいっきりふりむいたはやてと。

「……ティアナ?」

 その名前を口にしてヴァイスは、思考停止する。

「ティアナ……?……ぅん?い、いやまてぇな?いや、いやいや?」
 自分で口からでた名前から連想させ、そのとき。
「……まさか、ヴァイス君?」
 そして、顔をみた。

 思考停止状態で顔を赤く染めるヴァイスがそこにいた。

「ヴァイス、君」
「……あ、はい!?」
 やっと思考がもどったヴァイスは焦ってはやてにかえした。
 ――そう、なるんな。
 そんな気持ちに苦笑して、はやては。
「そか、なんや。そうだったんやな」
「は、やて隊長?」
「――ヴァイス君」
 そして、肩において、微笑んでやった。

「その気持ち……えぇと思うで」


* * *



「そうか……あの熱心な姿に?」
 あれからはやてはヴァイスから話してもらっていた。
「……自分は凡人だ、っても、あいつは必死に努力してるんすよ。そんな、姿が、気持ちに……惚れたんすよね。きっと……」
 ヴァイスは苦笑した。
「それで……ティアナに伝えるんの?」
「――いや。やめときます」
「なんで?だって――」
「『好きだから』……です」
 ヴァイスは微笑んで、続けた。

「もし、伝えて――あいつの荷物になるのはいやなんすよ。あいつにはまず、あいつの夢を叶えてほしいんすよ……それが、俺も願ってますし。……だから、あいつの夢が叶ったら、伝えます」

 はやては関心した。
 ――ちゃんと、ティアナのことを思ってるんやなぁ……。
 いつもの飄々としたヴァイスと違うふいんき。それが、彼の本気であり、決着なのだ。
「まぁ、ええと思うで」
「……はやて隊長」
「――そな気持ち、大切にしないとあかんよ」

 ――人を好きになんるんは悪いことやない。いいことなんやから。

「……はい」
「さぁーっ!もと語りあおうかなぁ〜ヴァイス君ッ!」
 いきなりどんっとヴァイスをたたいて、むせるヴァイス。
「な、はやて隊長!?」
 そのままぐいぐいひっぱっていく。
「いろいろ教えるでぇ!そうやな、ティアナの胸の素晴らしさとか――」
「んなこと大声で言わないでください――ッ!?」

 その後、約15分後に、機動六課のカフェで、永遠としゃべる部隊長と、興味半分、疲れた半分の顔で聞くヘリパイロットが確認された。





〜あとがき〜
ずばり言います。
はやてさんは人の恋愛電波(某・ネ○ま!のラブ臭?)を瞬時にとらえられる女性だと思います。
いや、何たって部隊長だし、女性の_を手で__人ですし……。
しかし、その分、人を愛する気持ちの大切さは誰よりも知っているはずです。
あまりのまわりには男性がいないんではやてさん恋人いなかったですけど……。
でも、リーダーシップもあり、家庭内女性でもあるはやてさんはお嫁さん候補、絶対上位に入ると思います。
だから、きっと、誰よりも気付くのは、はやてさんでしょう……と。
はやてさんも大好きです、関西弁や、母性的なところに、ぐっときたりします。




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