――まったく、風邪拗らせやがって。無理するからだ。馬鹿野郎。
 帰ってきて、顔あわせた一発目にそう言われた。とても恥ずかしくて、元々熱い頬がより赤くなってしまった。仕事を急遽休暇を取らざるを得なくなったこんな体調にしてしまった自分が情けなかった。
 ふらふらとしながらも睡眠をとるために寝室に入ろうとして、腕を掴まれた。どこ行くんだ、はやく治すつもりなら薬くらい飲んでいけ。そして、その言葉に素直に薬を水で流しこみそうになった私に、何も腹に入れずに薬飲む馬鹿がどこにいる、と。また、馬鹿、と言われた。悔しいけど、正しいから、何とも言えずに椅子に座らされた。
 そうして、あの熱に浮かされてなるあのぼーっとした感覚になりながらも座っていた。と、何かあたたかな空気を感じた。ふと目線を上げると、先程から姿がなかった彼と、……どんぶり、が。
 目の前に出されたそれを覗きこむと、ふわふわとあたたかい湯気がほてる頬に当たって気持ちいい。中にはゆらゆらと揺れる茶色のつゆに白く、知らないくらいひらべったい麺が浸っていた。彼言うに、なのはさん方の故郷の星の食べ物で、きしめん、というらしく、フェイトさんが事前に彼に渡していたらしい。こうなることを予想して、なのかは知らないけど。あんまり噛まなくても食えるくらい煮込んでやったから、どろどろに溶ける前にさっさと食っちまえ。その言葉通り、食欲がなくてもゆっくりと食べきれた。
 程よい温度のお湯で薬を飲み干す。小さな物がのどを通ったことを認識したことを意識すると、寝るために椅子から立ち上がった。そのとき、どんぶりを片付けに行った彼が慌てて寄ってきた。ったく、そんななのに一人で行かせられるかよ。ため息とともに軽々抱えられ、鼓動が高なかったが、らしくもなく抵抗出来なかった。……熱のせいだ、絶対。
 ちゃんと整われたベットに力の入らない体を横たわされた。優しくその上から掛け布団を重ねられていく。少し重いけど、すごくあたたかい。最後に熱をとるシートを額にそっと彼が貼ってくれた。ひんやり、として。気持ちいい。
 そして、ぽん、とシートの上から手を乗せてくれた。大きくて、あったかい掌。軽く撫でて、おとなしく寝ろよ、と言って、そっと手を離して。
 ヴァイスさん、と。声をかける。呼びかけに軽くびっくりしたようで、どうしたティアナ、と眉を寄せた。あぁ、また不安にさせてしまった。でも、別に、具合が悪化したとかじゃない、から。
 我が儘、いっこ、いいですか?そう言うと、彼は、あぁ、と笑った。おまえが楽になるなら、何でもやってやる。頼りに出来るたくましい姿に、だから、直球に言った。
 歌ってください。私が知っていても、知らなくてもいいから。
 その言葉にびっくりして目を丸くした彼は何か口をもごもごとして視線を泳がした。そして、少しの沈黙の後、音ぶっ飛ばしても笑うなよ、と少し頬を染めながら言った。私は笑って頷いた。苦しくて、でも自然と笑えた気がする。それに彼は、我が儘な子供に子守歌なんてラグナの子供時代ぶりだな、なんて一人言う。私は子供じゃないです、とたどたどしく反論すると、お互い相変わらずの赤い顔で笑いあった。
 ぎし、と音が鳴って彼が私のベットの脇に座る。そして、彼の口から紡がれるのは、彼からの、愛のメロディー。その、慣れていない感があって、でも大好きな歌声に私は包まれ、眠りの波に落ちていく。
「――おやすみ、ティアナ」
 おやすみなさい、ヴァイスさん。



True my heart





〜あとがき〜
 めちゃくちゃ短いヴァイティア小話。
 今回長く書くつもりなくて(これもまた突発SSなんで)、あんまりない地の文で物語を綴ってみました。心の内面文章というか、“「」”の言葉が目立つかな、とか。でも、これはごちゃごちゃしますね。あんまりすすめられない(爆)
 熱出したティアさんとお兄ちゃんなヴァイスさん。自分的になかなか理想に近いヴァイティアが書けた気がします(笑)


※以下、この話の元ネタ話!ぶっ飛んでます故読むときは沙雪の心理を理解してからお願いします(爆)

 ところでタイトルで皆さんは何を連想、何の曲を連想いたしましたか?
 たいていの方は某ゲームだと思いますが(笑)伏線もあったんですけど、2つ、実は私の知ってる連想曲は2つで。
 某超有名ゲーム『きしめん』主題歌と、V6の『愛のMelody』(爆)
 もっと実は、この曲、先に知ったのって前者のほうで(爆)リリなのMADでハマって一時期見まくって聴いて覚えちゃって。その後、Vの6人が「とぅるーまいはーらーぶ」と聴き間違えた瞬間「うわぁきしめん(笑)」とか本気で思った残念な私です←
 けっこう昔の話ですが、ふと絡んだ小話(小説にする気は元々なかったから)を書きたくなって、ぽつりぽつり書いてみました所存です。
 この短編(短編?笑)もそんな過去があってこそ、生まれました(えぇー)なんというか……運命は不思議ですね(えぇえー!?)
 この小説のジャンル→連想ゲーム!(黙)






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