(※ウタウッキーと、今年の紅白総合司会さん。司会者視点。ほのぼの)
(※一様リアルの方をモデルにしているため、お気をつけて)




 それは、大晦日の大仕事の打ち合わせを終わらせ歩いていた、周りの部屋の暖房で少し快適になっていた廊下でのこと。
「ウキー!(あべアナウンサー!)」
「ウキー!(あべアナウンサー!)」
「うわっ……!」
 ポフポフ、と二段階に重ねてぶつかってくるあたたかいもの達。
 私は、ぐりぐり大きい頭を擦りつけてくる赤と白の柔らかさにくすくす笑った。
「もう……どうしたんですか。ウー、ター」
 ――この子達はウタ♪ウッキー。数年前に生まれた、歌の妖精。
 歌の妖精、と聞くと嘘だ、現実的じゃない、と言われそうだが、私は嘘をついた気はない。なぜなら、この子達と毎年、歩んできたから。
「ウキー!(あべアナウンサー!)」
「はい?」
「ウキッ!ウキッ!(ウタッチ!ウタッチ!)」
「あぁ、はいはい」
 パチン、パチン、と大きな手と手にハイタッチ。……そんなときに、ほら。触れあったところから優しいものを感じられるから。
 赤色の子――ウー♪と白色の子――ター♪はそんな心を知って知らずか、大きな腕を私の体に再び巻きつけてにこにこしている。
「ウキー!(あべアナウンサー!)」
「ん?何ですか、ウー」
「……ウキ、ウキキッ!(……ううん、なんでもないよ!)」
 にぱ、と口を大きく開けて笑ったウーに「なんでもないって何ですかそれー」と、微笑んでしまった。
 右手を赤いウーの頭に、左手を白いターの頭に。ふさふさの頭を撫でてやると、ターは白い体を揺すって喜んだ。
 ……そういえば。
 『――歌を愛する人の隣にそっと寄り添い、歌で人と人とを繋いでいくのがこの子達の役目なんだよ――』
 と、誰かが言っていた気がするが。
 ……私に対しては“そっと寄り添う”以上じゃないか、と。たまに、思う。
 必ず近付いてくるときは名前を呼んで。抱き着いてきてくれる。絶対にウタッチはかかさない。一緒にいれば話しかけてくるし、何げなく話しかければ弾むように返してくれる。
 まぁ、この子達のことが嫌いなわけがないから、別に嫌ではないのだが。
 …………と、いうか。
「ウー、ター。駄目じゃないですか」
「ウキ?(なにが?)」
「こんなところで油を売ってたら」
「ウキウッキー?(あぶらをうってたら?)」
「ウキ?(あぶら?)」
 ウーとターはお互いに見あわせた。首を傾げさせて「ウキー?」「ウキー?」と考えている。
 私はもう少し簡単な言葉にすればよかったと、人差し指をピッと目の前に持っていくと。
「だからね、――紅白に出場する歌手の皆さんの近くにいてあげなくてよいのですか、って言ってるんです」
 こんな、司会を務めるアナウンサー、ではなく。
 歌声で見ているすべての方に、勇気や感動を与えるすばらしい方々の元へ。
 しかし、二匹の反応はイマイチであった。
「ウキ?(なんで?)」
「いや、なんで、って……。――ウタウッキーは歌の妖精でしょう?」
 素敵な歌を誰かに届けたり、みんなの歌を応援したり――歌で人と人を繋ぎ、想いを繋いでいく。それが、この子達なのではないだろうか。
「私は総合司会です。ウーもターも、よくわかってるでしょう?私達は一昨年からずっと一緒にいるのですから」
 そう微笑みかけると再び「ウキー?」「ウキー……」と顔を見合わせた。しかし、ちょっとしんみりしていて。
「ウキ、ウキキー?(あべアナウンサー、ウーたちのこときらい?)」
「ウキッキー?(うた、きらいになっちゃった?)」
「っ、そんなこと……!」
 しゅん、と、しょんぼりしてしまった赤と白に、もう一度頭を撫でてあげた。
「……ただ、私は……紅白を見てくださってる方々が一人でも歌手の皆さんの歌で繋がってもらえたらと思うのですよ。それにはきっと、あなた達の力が必要だから……」
 そう言ってぎゅっと二匹を抱き寄せる。それに、ぎゅうっと二匹の強い腕が抱き着いてきた。
「……私はウタウッキーも、それから歌も大好きですよ。……私自身、すばらしい歌が聞けることを楽しみにしてますしね」
「……ウキー……(……よかったぁー……)」
「ウキー、ウキキキー(ターたち、あべアナウンサーにきらわれちゃったかとおもった)」
「何言ってるんですか、もう……。自分達がそんなにへこんでどうするんですか、ウタウッキーは人を歌で元気にする、歌の妖精でしょう?」
「ウキッ!(もちろん!)」
「ウタウッキー、ウッキー!(ウタウッキーは、うたのようせい!)」
 塩らしくなっていた声質もどこへやら。今では二匹でパチンとウタッチをかわしている。
 それに私はどことなく愛しさを感じて。
「……じゃあ、出場歌手の皆さんのところへ行ってあげてください。ウーやターの力を、わけてあげてきてください」
 そう言って、すっと手を離す。ふわり、とウーとターの毛並みが揺れた。
 そして、ウーとターは。一度、顔を見合って。
「……ウキ、ウッキー!(……だいじょうぶだよ、あべアナウンサー!)」
「え?」
「ウキキ、ウッキッキー!(だってターたちは、うたのあるばしょにはどこにだっているんだよ!)」
「ウキ、ウキキ、(だって、ウーたちは、)」
「――ウタウッキー!(――ウタウッキーだもん!)」
 えへん。大きな胸を叩く。シンメトリーに胸をはった赤と白。
 ……それに、私は。
「……あははっ……そうですね、ウタウッキー、ですもんね」
 歌の妖精。明るく、元気で、歌を愛する、歌を愛する人々を愛する――歌の、妖精。
「ウキー!(そうだよぉ!)」
「ウキキ、ウキ!(うたのちから、だよ!)」
「歌の力、か……」
 きっと、歌の力は。その人その人が持っている、それこそ魔法のような力で。この子達はそれを背中からその強い腕で押して、表情溢れる声で支えているのだろう。
 だからこの子達はこんなに。……笑顔を与えてくれるのだろう。
「私達も力にならなきゃね。歌の力に」
「ウキッキーウキ!(あべアナウンサーもみんなにわけてあげてね!)」
「え?……何を?」
 きょとん、と柄でもなくなってしまった。そんな私に、ターは顔を覗きこんできて。
「ウキキッキ!(こえのちから!)」
 にっこり、と。白い頭が、ぴょこんとはねた。
「ウキキ!ウキッキー!(そうだね!あべアナウンサーにしかできないよね!)」
「ウキウキー!(そうでしょっ!)」
 赤い頭もぴょんとはねた。にぱ、と笑った。ぴょこぴょこ共鳴して、そして、二匹してこちらに一緒に振り向いた。
「ウキキッキ!!(こえのちから!!)」
 目はキラキラとさせ、口角ははっきり上がっていて。
 思わず、……くすっと、笑った。
 ――この子達が前に出て声を歌うとき、いつもそばにいたのは、もしかしたら私だったのかもしれない。対決する色の司会よりも、間を取り持つ総合司会のことを、もしかしたら。この子達はずっと見ていてくれたのかもしれない。
 歌ではなく、声で人と人を繋げるために。
 ……それは、自惚れなのかもしれないけれど。
「……ありがとうございます。ウタウッキー」
 くしゃくしゃ、と両手でいっぱいいっぱいにふさふさの毛を撫でてやる。そうすると「ウキーっ」「ウキキーっ」と幸せそうな声を奏でる。
 ……この子達の声は本当に不思議だ。自然と優しい気持ちになる。本当にこの子達は――歌に愛されているんだな。
「ウキッ、ウキキ!(それに、あべアナウンサーさっきうたってたしね!)」
「――え!? い、いつですか!?」
「ウキキー。ウキ、ウキッキ?(さっき鼻歌歌ってたよー。もしかして、自分で気付いてなかった?)」
「……気付きませんでした」
 顔を手で覆って立ちつくす。まさか廊下で鼻歌歌ってたなんて……。
 確かに、先程の打ち合わせで今回歌われる曲を聞いて。好きだな、早く本番で聞きたいな、と思った曲はあったが、まさか。
「同僚に聞かれてなかったかな……恥ずかし、」
「ウキッキキー?(べつにはずかしいことじゃないよ?)」
「いや、でもね、ウー、」
「ウキ!ウッキキー!ウキキッ!(そうだよ!うたをうたいたいきもちはだいじ!だーいーじ!)」
「ター……っくすくす、……もう……」
 ぴょいぴょい弾む赤と白。
 だから、私は。

「――大晦日、頑張りましょうね、ウタウッキー」
「ウキ!(うん!)」
「ウキキッウキ!(うたのちからをしんじて!)」
「ええ。――声の力を、信じて」
 そして、静かに二匹が口ずさみはじめる。ハモリ出すのは、ありきたりのような、……それでいて、あたたかいメロディー。
 私はその優しさに微笑みながら、自然とその小節に乗ったのであった。


 ――廊下で鼻歌を歌ってたことに、昔紅白でともに司会を務めた女性アナウンサーに明るい声で笑われて指摘されたのは、次の角を通過したときのこと。



Power of VOICE

 Goodbye 2011, Hello 2012 !
 ―― A HAPPY NEW YEAR !!






〜あとがき〜
 やってもーた(笑)もう需要とか次元とか意味不明なまま猪突猛進に書きました←
 最近ウタウッキーが好きで仕方ないです。ぴょこぴょこしてるし、中の人も素敵だし。阿部アナウンサーも素敵。
 歌の妖精と総合司会としてずっと一緒だからウタウッキーは阿部アナウンサーに一番懐いてるんじゃないかなと思ってます(笑)阿部アナウンサーが敬語なのは私が彼の敬語が好きだからです←
 なお、最後の方は有働アナウンサーです← ゲストゲスト!私得!←





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