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08/29

21------

寂しくなんてない。わたしは一人じゃない。頭の中で二人のわたしが背中合わせに寄り添っているから。片方が泣いても片方は遊ぶことばかり考えている。相反する思考が同時に自分を支配する感覚、わかる?これが面白いんだ。対立するでもなく協調するでもなく二人はそこにいる。独り言を呟いている。


自分の中にはいろいろな自分がいることを認められるといいですね。

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08/28

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心の闇だなんて好き勝手言ってくれるな。おまえに何がわかる。他人を憐れむのは楽しいか。いい人でいられて満足か。そんなのは余所でやってくれ。おれを巻き込むな。歪だとか奇抜だとか色眼鏡で見るのをやめろとは言わない。知ったふうな口を利かれるのが我慢ならないだけだ。おまえはおれじゃない。


理解なんてされたくない。まして共感、同情など。

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08/27

19------

鏡の中で笑みを浮かべる美しい人を、私は知らない。白磁の肌に黒檀の髪、黄金比で配置された目鼻立ち。こんなに美しい人を他に知らない。愛するよりほかなかった。いつまでも見つめていたい。魅せられていたい。そっと手と手を合わせる。あなたは誰ですか。言葉は同時に紡がれた。悲しげに。


ガラスに切り取られた恋人よ。

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08/26

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イ・ショク・ジュウの神々。まずは異の神、妖なす衣を織りて包まれた赤子の姿形を変える。次に蝕の神、米に毒を混ぜ食した女を狂わせる。しまいに獣の神、蓄音機に宿り音を聴いた仮住まいの書生に狼藉を働かす。これら悪しき神々は、我が所有する古き帳面に記された黒き歴史の中にのみ名を残す。



我の歩んできた道に白い足跡などひとつもない。

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08/25

17------

小高い丘に植えられた樹齢一千年を越える桜が見下ろす町、桜下町。人影は途絶え家屋は朽ちて、建ち並ぶのは無数の墓碑のみ。この地に生きてこの地に眠る人々の安息を見守るのは樹齢一千年を越える桜のみ。骨の色をした花を咲かせる木。名も知らぬ人が立てた墓標。桜の木の下には死体が埋まっている!


時季外れですか。夏でも秋でも冬でも、桜はそこに在ります。

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08/24

16------

蝶の翅をむしる子は妖精の羽ももぎとるの?大人が教えてくれないから、絵本を読むのも流行らないから。子どもたちは何も知らない。小人を見つけたら小瓶に詰めて窒息させてしまいます。尻尾の分かれた動物たちは賢明にも姿を隠します。まっさらな心の持ち主しか彼らは見えない、その結果がこれですよ。


せめて知育玩具の代わりになれたらいいですね。

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08/23

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笑わないほうが可愛いよ。そうおっしゃるならば私は眠りにつきましょう。あなたには愛がない。そうお思いならば私はひとでなしになりましょう。人形になりましょう。皆が幸せを望むのならば私は砕けて散りましょう。砂となって流れましょう。そして水底に沈むのです。輪廻転生も休みます。あしからず。


オフィーリアのように花に囲まれて。

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08/22

14------

友達とおしゃべりするときは愚痴を零してばかりいるけれど、誰かに悪く言われるとムッとする。やっぱり好きなのかなぁと苦笑してしまうよ。今でも初恋の人の面影を重ねることがある。愛が重いと感じるときもある。もう別れたいとすら……。ああ、嫌よ嫌よも好きのうちとはよく言ったものだ。


春から夏にかけては他の異性にときめいて、秋から冬にかけてはパートナーを愛しく感じる。
どなたかこの現象を解明してください。

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08/21

13------

バスタブに浮かんだ無数の泡。それは無数の目。七色にぎらつく目玉たちが私を見ている。掌で掬い上げた。見ている。無数の目が見ている。見ている。見てくれている。ありがとう、オーディエンス。バスルームは私の舞台。歌い舞い踊る私を見て。落ちぶれてなんかいない。私はスター。これからもずっと。


透明な半球状の泡はレンズに似ているなぁと、ふと思ったんです。

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08/20

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首だけの猫を斬首刑にできるかどうかで彼らは争った。首だけになった妹に彼女は首飾りを贈った。手首だけになった私から腕飾りは外れてしまうのだろうか。それとも飾りに編み込まれた髪の毛がするすると伸びてきて、もう動かない肉塊を絡め取るのだろうか。動かない心をいつまでも締めつけるように。


私と腕飾り、一体どちらが朽ちるのが先か。

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