ガーネットの日々


君と出会った日の事は今でもはっきり覚えている


「やべぇ!また遅刻だっ!!」

街中を走る一人の男
しかも警官の制服姿だから余計に目立ってしまう
彼の愛用しているバイクのタイヤがパンクしていた、というよりいたずらされていたのだ。バイクを飛ばせば間に合うと調子に乗っていたらこのような目にあってしまった
誰もいないだろうか?と辺りを見渡しながら塀の上を登り飛び降りた

「あっ!!」
「きゃあっ!!」

降りた瞬間に一人の女性がいた
突然男が目の前に降りてきたのでビックリして尻餅をついてしまった

「悪いなお嬢さん…大丈夫か?」
「な、なんとか……」

男は手を差し伸べる、その手に捕まり立ち上がろうとしたがまたその場に座り込んだ
どうやら足首を捻ってしまったらしい
男はその様子に気づいてすぐに女性を抱き上げた

「え?えっ!?」
「怪我させちまったからな手当てしねぇと……あぁそうだ俺はケビン。お嬢さんは?」
「…ナナです」
「ナナか…しっかり捕まってろよ!」

ケビンはナナを抱えながら再び走り出した
突然の行動に驚かされてばかりのナナシがぎゅう、とケビンの首に両手を回して捕まるのだが、口を開いた

「あの…!私仕事に行くんですけど…っ!このままじゃ遅刻しちゃうっ!」
「仕事?そんなの俺も同じだぜ、でも今は手当てが先だ」

彼の勢いに飲まれて何も言えなくなってしまった
今日は初出勤なのに…とナナは目を閉じて自分が叱られる事を想像した


ケビンがたどり着いた先は自身が勤めている警察署だ
ナナを抱えながら扉を蹴破るようにして中に入る。入ってきた二人の姿に周りの視線はそっちに向く
上司の男がこちらにやってきた

「ケビン!遅刻してきた上に女連れとは…!」
「説教は後で頼む!まずは手当てをしてやってくれ…」
「あ…あー!おおおはようございます!!」

ナナは慌ててケビンの上司に頭を下げて挨拶をする
彼女の行動にケビンは目を丸めた。ナナに気づいた上司も驚いた顔をした

「君は…確か今日から入る……」
「はいナナです!今日からこちらでお世話になります!」
「はぁ!?ちょっと待ってくれ!!」

ケビンは驚いて声を上げた
ナナも彼の声に驚いてケビンを見る。ケビンは彼女の両肩を掴んだ

「アンタが警察官!?」
「はい、今日から配属になったんです。貴方も警察官だったんですね」

突然抱えられたから気づかなかった、とナナは笑った
その笑顔にケビンの心臓が音を鳴った。素直にかわいいと思ってしまった
ナナとケビンの出会いはこうして始まった


「ケビン!また今日も遅刻したのね!!」

眉間に皺を寄せて怒るナナ
一応立場上では自分が先輩なのだが、こうして遅刻しては後輩であるナナに怒られている
周りからも「これじゃあ逆ね」、と笑われていた

「勘弁してくれよナナ。…新人の頃のあの可愛さはどこに行ったんだ?」
「ケビンが悪いんでしょ?毎日毎日遅刻して…私が毎日注意してるのに聞いてくれないのね」
「ナナに怒られるのが快感っていうかなんていうかな…」
「……もういい部長に叱ってもらいましょ」

部長という言葉を聞いてケビンは慌てる
その場を去るナナを必死で止めた

「待ってくれナナ!部長だけには…」
「私が言っても意味ないんなら仕方ないでしょ?」
「そんな事はねぇ!明日からは遅刻しねぇから!!そうだ!好きなもの奢ってやるから」
「……ぷっ、あはははっ!しょうがないなぁー」

必死に頼み込むケビンの姿がおもしろくてナナは笑った
その表情を見てケビンも嬉しそうに微笑んだ
この笑顔が見れるのが嬉しいと、この笑顔に自分は惚れたのだ
突然ナナは頭を下げた。その先を見るとS.T.A.R.Sのクリスが立っていたのだ
どうやら今のやりとりを見ていたらしい。クリスは微笑むとその場を去った

「あービックリした…まさかS.T.A.R.Sの人に見られてたなんて……」
「あぁクリスだろ。アイツは悪いヤツじゃないぜ」
「そうなの…」

ナナはクリスの背中を見つめる
背筋がピンと伸びていてオーラがある。S.T.A.R.Sの人間はみんなカッコイイと思う
ナナシが憧れる部署でもある

「S.T.A.R.Sって…やっぱりカッコイイよね。私もいつか入りたいな…」
「……」

ナナの言葉をケビンは黙って聞いていた
そして決心するとケビンは彼女の方を向いた

「なぁナナ……俺がもしS.T.A.R.Sに入ったら、どう思う?」
「え?うーん…すごいなぁとは思うけど……」
「……そうか、わかったよ」

ケビンは一人納得していた。一人納得するケビンに不思議に思いながらもナナはすぐにニヤリと笑った

「まぁでも遅刻ばかりするケビンには無理だと思うけどね」
「な、なんだと!?」
「あははっ!ほら早く、ケーキ奢ってねケビン!」
「ちくしょー見てろよナナ!必ずS.T.A.R.Sに入って……お前とも結婚してやるからな!!」
「!?な、なに言ってるのよ!ケビンのバカ!」

お前の笑顔が見れるなら、俺はなんでもやるさ



ケビンとヒロインとの出会い編。実は同期に見えてヒロインは後輩だったんです、よく考えたらクリスってケビンより年下だったなぁ。ちょっとはケビンの幸せな話が書けたかなぁーと思ってます
約30の嘘
110306

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