第5話 僕がきみを、想う気持ち


今日は署内で射撃コンテストが行われる
だがもちろん警察署が休みというわけではなくいつも通り仕事は行わなければならない
休憩の間に隙を見て見に行けといった様子だった
ナナもいつも通りに朝早く出勤する。始まるのは10時からだ
が、その前にクリスに上着を返しに行こうと思った
S.T.A.R.Sのオフィスに向かうために2階への階段を上る。その途中でケビンに出会った
思わず目を逸らしてそのまま横を通り過ぎようとした

「クリスに言ってやった…今日はお前を賭けて勝負するってな」
「!?」
「俺は負けないからな…」

ケビンはそれだけ言うとその場を去る
思わず彼の背中を見つめるがこちらを振り向かずに行ってしまった
ナナシは首を振ってクリスの元へと向かう、S.T.A.R.Sのオフィスの前に来るとちょうど中からクリスが出てきた

「ナナ、おはよう」
「おはようございます……あの、これ…ありがとうございます」
「ん?あぁ、いいよ」

クリスの上着を渡すナナ
彼女から上着を受け取る、ナナはそのまま去ろうとした

「今日の射撃コンテスト…よかったら見に来てくれないか?」
「!…ぁ、え…と」

ナナは戸惑ってしまった
射撃コンテスト見に行きたいが、ケビンの事を思うと見に行けない
そういえばクリスは知っていて言っているのだろうか?

「……あの時の質問の答え、教えてあげようか?」
「質問の答え……?」
「休憩室での事」
「あ……」
「…ずっと見てたからだよ。好きだよナナ」

クリスはナナに自分の気持ちを伝えた
ナナの心臓がドクンとなる。頬も真っ赤に染まってしまった
クリスはその様子を見て微笑むとそのまま横を通り過ぎる

「ぁの…!」
「……今日の射撃コンテストでもし俺が優勝しても、ケビンの方が好きなら行ってくれても構わないよ。でも俺はS.T.A.R.Sの誇りにかけて負けるつもりはないから手加減するつもりはない」
「っ…!」

彼は優しい声で言うとそのまま去ってしまった
ナナは思わず服の胸の部分の布を掴む
優しいクリスの言葉に自然と涙が頬を伝った
どうして二人を大事にできないのだろう、どうして一人を選ばなくてはならないのだろう。ずっとずっと3人で仲良くしていたかった
だけどフラフラしている訳にもいかない
ナナの中で答えはもう出ていた


射撃コンテストが始まって2時間が経っていた
決勝戦に残ったのはクリスとケビンだった
ケビンは鋭い瞳でクリスを睨みつけている

「優勝はもらうぜ、クリス」
「望むところだケビン」

両者は銃を構えた

ナナはそわそわと落ち着かない様子で時計を見ていた
そして同僚の女が慌てた様子で入ってくる

「今決勝戦始まったんだけど……クリスとケビンが戦ってるのよ!」
「!!」
「ホント!?すごいわねーケビンったら……あ!ちょっ…ナナ!?」

その言葉を聞いてナナは走り出していた
同僚たちが声をかけるが、それも聞かずただ走り出す

(二人が決着をつけるのなら…私もつけるわ!)

会場に着いた時
すでに戦いは終わっていたようだった
ナナは息を切らしながら二人の姿を見つける

「今回の優勝は……ケビン!!」

周りがわーっ!と声を上げる
ケビンはトロフィーを受け取り周りの同僚たちに見せる
クリスは傍で拍手を送っていた。そしてそのまま会場を去っていく
ナナは苦い表情で彼の背中を見送る
トロフィーを見せていたケビンがナナの姿を見つける、だが彼女の表情を見て彼もまた眉間に皺を寄せた

大会が終了してから
誰もいない廊下でナナはケビンと会っていた
ケビンはトロフィーを見せる

「優勝したぜ約束どおりだろ?お前にトロフィー贈るって……俺と付き合ってくれナナ」
「………」

ケビンは私の事がずっと大好きだったんだ
今までだってご飯奢ってくれたりアパートまで送ってくれたり、色々と助けてくれた
私の為に優勝してトロフィーだって贈ってくれた
そうだ、ケビンはこんなにも私によくしてくれてる。何も不満なことなんてないじゃない。きっと愛してくれる
だから私の気持ちぐらい我慢しなくちゃ……我慢しなく、ちゃ……

いつの間にかナナシの頬を涙が伝っていた

「ナナ……」
「あれ?どうして涙なんか……あははっ、そうかきっと嬉しくて泣いちゃっ「行けよ」

ケビンが途中で口を挟んだ
ナナの頬を彼が優しく撫でた

「嘘つくな、クリスが好きなんだろ?だったらアイツの所に行って自分の気持ち伝えて来いよ」
「っ…ケビン」
「俺の事も好きだから気持ちに答えないといけないって思ったんだろ?でも俺は嫌だ…他の男が好きなのに自分の気持ちを犠牲にして俺と付き合って欲しくねぇ……ナナなら尚更だ」

涙がボロボロと零れていく
どうしてこんなにも優しい人を傷つけてしまったんだろう
ケビンは優しく微笑んでナナの額にキスをした、そして彼はナナの背中を押した

「フラれたらいつでも戻って来い。幸せになれよナナ」
「……ありがとう」

ナナは走っていく
ケビンはその背中を見送ってから近くにあった長椅子に腰をかける
そしてポケットから煙草を取り出して吸い出す

「……フラフラしてた俺も悪いんだけどな、……でもまぁしばらくはまた休むかな」


S.T.A.R.Sのオフィスの扉をノックする
中から返事が聞こえて扉を開ける。そこにいたのはクリスだけだった
彼は訪問者に驚いて目を見開いた

「ナナ…!?」
「クリス……」

クリスは微笑むんで迎える
ナナはゆっくりとクリスに近づいていく

「射撃コンテスト結果知ってるだろ?今年はケビンが勝ったよ…まさかの事にみんなも驚いてたよ……悔しいから来年こそ「振ってきました」

ナナに口を挟まれてクリスは彼女を見る

「え?」
「私…ケビンの告白受けませんでした」
「それは……」

クリスは驚いていた
優勝したからてっきりケビンと付き合い始めたと思っていたのに

「ケビンと長い事一緒に居て…楽しかったし、正直嫌いじゃありませんでした……でも私はそれ以上に……あなたの事が好きになったみたいなんです」

想いを伝えたナナはクリスに抱きしめられていた
彼の優しい抱擁にまたも涙がこぼれてくる

「好き…クリス」
「俺もだよナナ」
「付き合ってくださ、い…」
「もちろんだ、これからは俺がナナを守るよ」

クリスは少し体を離してナナにキスを落とした




ここまで読んで下さりありがとうございます。ずっと書きたかったS.T.A.R.S恋物語を書けることが出来て嬉しいです。本当はヒロインをS.T.A.R.S所属設定にしようかと思ってたんですが、それだとクリスの事が好きになるのは当たり前だしケビンに言い寄られても好きにならないだろうなぁ…って思ったのでヒロインはケビンと同じ部署にしました。
ヒロインはケビンも好きなんですが今までいなかったタイプのクリスに惹かれていってしまったんです、もちろんヒロインはケビンの告白を断るつもりでしたが彼の気持ちも受け止めないと駄目なのではないかと自分の気持ちに嘘をつきますがケビンは当然見破ります、ヒロインの事ずっと見てきたからですwケビンの一番はヒロインに幸せになって欲しいことなので、私が書くケビンはどうも幸せになれてないのでいつか短編でもいいから幸せにしてあげたいですね。番外編を書けたら書こうと思います
長々と語ってしまいましたがここまでお付き合いくださりありがとうございました
110227

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