第4話 愛になる日を夢みてる


「きゃあー!S.T.A.R.Sよ!!」

ただ道を歩いているだけなのに婦警の女たちに騒がれる始末
ウェスカーはその声を聞いて眉間に皺を寄せていた

「まったく…うるさくて敵わんな」
「キャプテンが一番人気があるものね。そう思うでしょクリス?」
「そうだな」

くだらん、とウェスカーはさっさと歩く
ジルも続いて歩いていく
クリスはちらり、と婦警たちの方を見た
きゃあきゃあ騒ぐ軍団から一人外れている女がいたのだ
どうやら彼女は自分たちに騒ぐほど興味はないらしかった
それはそれでクリスの目を引いてしまう
そんな彼女の元に一人の男が駆け込んでくる

「ケビン!また遅刻したのね!」
「これでも急いで来たんだぜ?」
「そんな余裕面してたら信じられないわ、部長に言うからね」
「待ってくれ!今度お前の好きなもの奢るから」

慌てるケビンの様子がおかしくては笑った
その笑顔にクリスの胸が高鳴った
素直に可愛い笑顔だと思った
もっと彼女の事が知りたくなってきた
だが今はこれ以上長居する訳にもいかない、名前が分かっただけでもよしとするかとクリスはその場を去った


「ん……」

は瞼を擦って体を起こした
どうやら眠っていたらしい、身体を伸ばして周りを見る
彼女の身体にS.T.A.R.Sのロゴが入ったジャケットがかけられていた
それを見てすぐに気づいた

「クリス…?」

そう、眠る前にクリスがいた事を思い出す
だが彼の姿はすでになかった
休憩時間が終わって自分の部署に戻ったのだろう
休憩室の扉が開いてレオンが入ってきた

「ナナ。上から今日はもう帰っていいとの許可が下りたんで俺が送るよ」
「え…?あ…そうなの…」

駐車場で待ってる、とレオンは告げて出て行く
ナナはジャケットに目を落とす
クリスも仕事をしているだろうし、S.T.A.R.Sのオフィスにはどうも行きづらい
ジャケットはまた明日返せばいいか、とそれを抱きしめる
クリスの匂いがする、彼の吸っている煙草の匂いも
落ち着いた。そして頭の中に眠る前までの優しい彼の顔が浮かんだ
その途端にハッ、となって上着から顔を離す

「何をしてるの……私…っ」

ナナは急いで体を起こして部屋から出た



射撃場に音が鳴り響く
撃っていたのはクリスだった
撃ち終えると部屋に入ってきた人物の気配に気づいてそちらを見る
ケビンだった
クリスはヘッドホンをはずして声をかける

「ケビン、今日も練習か?」
「あぁ…まぁな……」

ケビンは愛想なく答えて銃を構える

「ナナと何かあったのか?」
「! なんでだ?」
「……疲れた顔して休憩室に来たから、昨夜何かあったんじゃないかと思って…」

その言葉を聞いてケビンは昨夜の事を思い出す
ナナの事だ。自分の言葉を受け止めて考えていたのだろう
ケビンはクリスの言葉には答えなかった
クリスはケビンの腕を掴んだ

「何かあったんだろ?」
「お前には関係ないだろ!!」

掴まれた腕を振り払う
ケビンは困惑しているクリスを睨みつける

「俺はな……ナナが好きなんだよ」
「!」
「お前が惚れる前からずっとずっとな…だから決めたんだ」

ケビンはクリスに指をさした

「今度の射撃コンテストで優勝したら、俺はナナに告白する」
「ケビン……」
「お前にナナシは渡さねぇ…絶対に」

ケビンの決意にも驚いたが自分がナナを好きだということにも見抜かれていたことに驚いた
何も言わないクリスにケビンは問い詰める

「好きなんだろ!お前もナナが…!」
「……あぁ、好きだ」
「……なら勝負だ。手加減はいらねぇからな」

ケビンはそれだけ言うと部屋から出て行く
残されたクリスは近くの長椅子に腰をかける
ストレートに言われてしまった自分の気持ち、ケビンにも気づかれるほどそんなに自分の感情が出ていたのだろうか
だけど彼が行動に出るのならば自分もジッとしているわけにはいかない
ケビンに譲ってやる気持ちなどない。それ程ナナが好きなのだから

「その勝負受けさせてもらうよ…ケビン」

クリスは呟いて再び射撃を始めた


「次の角を右に…」

レオンの車に乗りながらナナは自分の家の道を教える
相変わらず浮かない顔をしているナナ
そんな彼女に心配になってレオンは声をかける

「具合は大丈夫か?」
「……うん、体っていうより心が…ね」
「……恋愛か?」

彼から出た言葉に思わず目を見開く
図星か、とレオンは笑った
今のはわかりやすい反応だったな、と自分でも思う

「ねぇレオン…私今まで恋愛した事がないの」
「へぇ…そうなのか」
「うん…幼い頃から両親がケンカばかりしてて愛ってものが信じられなくなっちゃって私はこんな風になるぐらいなら恋なんてしないって決めてたの。……でも最近心が痛くて……」

ケビンの本気の気持ちに驚いて、最近ケビンともまともにしゃべっていない
いつもの様に彼の告白をあっさりと交わす事もできない
寂しい朝になってしまった、いつものあの会話がないと調子が狂ってしまう
クリスとしゃべる様になってからは毎日がドキドキして、彼の顔が思い浮かぶ

「ナナはどちらも好きなんだな」
「…そうなるのかな…?」
「聞いている限りではね…でもどちらか選べないって感じなんだろ?」

レオンの言葉に頷くナナ

「…どちらと付き合うかはわからないけど、恋愛はした方がいい。毎日が楽しいって訳じゃないけどとても幸せな気持ちになれる。…俺も別れる前まではそうだったから」
「レオン……」
「ここだな」

ナナのアパートの前に車が着く
車から降りてナナはレオンにお礼を言う

「ありがとうレオン…色々と聞いてくれて」
「いや…おやすみナナ」
「今日はもう帰るの?」
「また警察署に戻るよ、もうすぐ射撃コンテストがあるからな」

それを聞いてナナはケビンの言葉を思い出す
射撃コンテストで優勝して自分にトロフィーを送るのだと、優勝したら付き合って欲しいとの事も
レオンは車を走らせてその場を去る
それを見送りながらナナは複雑な表情で見る


射撃コンテスト
それは運命の日だ
ナナ自身も決めていた
この日で自分の心の中にも決着をつけるのだと
あの人の気持ちに答えると


レオンは相談役。レオンじゃないみたいww
次で終わらせる予定です…
110225

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