第1話 甘いかおり、苦い味


「あ!見てウェスカーよ!!」

同僚の一人の声により他の女も集まってくる
ナナも同じように目線を向けた
彼女たちの見る先にはS.T.A.R.Sの隊長アルバート・ウェスカーが歩いていた
出勤してくる彼を毎日見るのが彼女たちの日課となっていた
当の本人は気にもしていないようだが

「はぁ〜やっぱりカッコイイわね!S.T.A.R.Sの人間って!!」
「私たちと同じ空間にいるのにね!」

彼女たちは口々に彼を誉める
ナナもだが彼女たち一般の警察官からすれば彼らS.T.A.R.Sは特別な存在
誰もが憧れるところでもあった

「あ!見てジルお姉さまとクリスよ!」

次に入ってきたのはS.T.A.R.Sの女隊員ジルとクリスが入ってきた
またも悲鳴を上げる彼女たちにジルは挨拶をする
クリスも片手を上げてそのままS.T.A.R.Sのオフィスへと向かう

「はぁ…私もS.T.A.R.Sに入りたいわぁ!」

ナナは苦笑して再び書類に目を戻した
確かにS.T.A.R.Sのメンバーは芸能人のようなオーラがあってカッコイイと思う
だがナナは騒ぐほどに興味はなかった
彼らとも全然関わる事がなかったし、これから先もないだろうと思っていた

「あー遅れちまった」
「ケビン!また遅刻したの!?」

ようやく出勤してきたらしいケビン
彼もナナと同僚の警察官射撃の腕は一流だが、遅刻が多い為問題児だ
ケビンはニヤニヤしながらナナの手をとる

「そんなに怒るなよナナ。可愛い顔が台無しだぜ?」
「そう思うなら怒らせないで」
「なぁいい加減俺と付き合ってくれよ」
「真面目になってくれたらね」

あっさりとかわすナナにケビンは苦笑した
ナナはそのままその場を立ち去る。その後姿に女たちがケビンに声をかける

「おはようケビン、また怒らせちゃったわね」
「いつもの事だ本気で怒っちゃいないさ」
「いつになったらナナと付き合えるのかしらねぇ?」
「んー……」

ケビンはナナが好きだ
何度も告白しているが受け止めてもらえずにいる
ナナに好きなヤツでもいるのだろうか、と考えたりもしたが同僚たちの情報によればそれはないようだった
ケビンとしてはそろそろ身を固めたいが

「……そういやそろそろ射撃コンテストがあるな」

ポツリとケビンは呟きニヤリと笑った


「どうして毎日毎日遅刻できるのかしら…」

ケビンの遅刻に呆れるナナ
彼との出会いはここ警察署で務めだして数日後の事だった
務めだしてすぐにケビンは遅刻した。そんな彼を周りはなんとなく認めていた
彼の魅力には不思議に感じられる
話すようになってからナナは毎日告白されるようになった
だが彼にとって自分は本気ではないのだろう。他にも色んな女を口説いているようだし

「コーヒーでも買おうかな…」

自販機に目が行きお金を入れる
ボタンを押すと缶コーヒーが出てくる。身を屈めてそれを取り出した
だが手から滑り落ちてしまい転がっていく
追いかけるナナ、だが缶コーヒーは誰かの足に当たり止った
その人物は缶コーヒーを拾う

「君のか?」

拾ってくれた人物はクリス・レッドフィールドだった

「そ、そうです!すみません!ありがとうございます!!」
「…あれ?君って確かナナ…だっけ?」
「え?」

クリスに名前を呼ばれて思わず彼を見る
話すのは初めてなのにどうして自分の名前を知っているのだろう

「私の事、ご存知なんですか?」
「あ、その…いつも婦警の子たちがウェスカーやジルを見て騒いでるから……」
「え?私は「クリス!」

向こうからジルが声をかけてきた
クリスはそれじゃ、とその場を立ち去る
ナナは呆然とその背中を見送った

「私は騒いでないのに………あ!コーヒー!!……はぁ、また買いなおそう」

ナナはまた自販機にお金を入れる
クリスの第一印象はおっちょこちょいだと思った



やっちまったプチ連載…1クリスでの甘い話を書いたことないなって思って始めました。恋を知らないヒロイン?の話
確かに恋だった
110220

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -