夢見 | ナノ
クリスマスケーキ





「あーーーーーー寒い!寒すぎる!」

「…なら帰ったら?」

「やだ!それじゃあここに来た意味がないじゃない!」


レッドはシロガネ山から滅多に降りてこない。

未だに武者修行的なものをしているものだから、会いに行くならここの山頂にこなければならない。

ほんと、よくこの場所にずっと住み続けてるよ…私だったら心折れてる。

いやまぁ。好きだからこそ、ここに通うわけだけど。


「…でも、今日みたいな本当に寒い日にどうしたの、ライラ。寒いの苦手なのに。」

「…まぁ、レッドのことだし今日が何日か、なんてわからないよね。」

「?」


首をかしげてこちらを見るレッドは本当に…なんというか。

あざとい。あざとすぎる。


「というより、そういうイベントごとには興味ないよね。」

「イベント?今日は何かの日なのか?」

「そうだねぇ…強いて言うなら、レッドが喜ぶイベントかな?」


レッドは甘いものが好きだ。

それはもう、本当に偏った食事をするほどに。

見かねたグリーンが「お前はもう少し栄養考えやがれこのボケ!」といいつつ毎回肉も野菜も調達して運んでくれているのだけど…

最初聞いた時は驚いた。


レッドが喜ぶイベント、と言った瞬間、レッドの目はキラキラと輝く。

…多分予想がついたのかな?


「…それって、もしかして。」

「まぁそうだね。ちゃんと何の日か言えたら、レッドの大好物を差し上げようじゃないの!」

「簡単。クリスマス、でしょ。」


一応バレンタインとかもあるんだけど、多分本能と勘と…この時期の寒さを感じて、推測したのかな。

流石はレッド。甘いものには目がないね。


「正解。さすがだねレッド。」

「勿論。ライラの作るケーキ、大好きだから。」

「ふふ、本当に好きだよねケーキ。どうぞ!」


見た目には表情が変わらないレッドだけど、目を見れば一目瞭然。

早く食べたくて仕方ないらしい。

切り分けて、レッドにケーキを渡す。


「…いただきます。」

「どうぞ、召し上がれ!」


私が焼いたケーキはワンホールなのだけれど、レッドならたやすく全て食べてしまう。

あ、クリームついてる。


「レッド、右の頬にクリームついてるよ?」

「…ん?」

「まぁ美味しく食べてくれるのは嬉しいんだけどね。…ほら、今拭くから…」

「…はい。」

「っ、ちょっと、ケーキがついちゃったよ…いきなりどうしたの?」

「いや、ライラが食べてないから。…クリーム、頬についてる。」

「それはいきなりレッドがケーキを差し出すから…!?」


言葉と共に、レッドは私の頬についたクリームを舌で舐めとる。

な、何をしてるのこの人は…!


「ちょ、ちょっとレッド!?」

「何?」

「何、じゃないでしょ!自分で拭き取れるのに…!」

「顔、真っ赤。…可愛い。」

「ひ、人の話聞いてる!?」

「聞いてる。…でも、そこにクリームがあったし。…何より…

 ライラのこと食べてるみたいで、いつもより美味しかったよ。」


なんて甘い言葉を吐き出すんだこの男は…!

なんて思っていると、いつの間にか食べ終わったのか、空になった皿を置き私の目の前にやってくる。

まずい、今岩壁を背にしてるから逃げられない!


「…ね、ライラ。今日は下山するよ。…そしたら、いいよね?」

「…何が、いいよね?よ…はぁ、まぁ下山するなら…いい、かな。」

「ん。じゃあいくよ。」

「え、今!?」

「勿論。いくよライラ。下山したらもっと甘いもの、くれるんでしょ?」


期待に満ちた目をしたレッドに、私は頷くことしかできなかった。


End


レッドさんてほんと本能の赴くままに色々やりそうですよねっていう。

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