夢見 | ナノ
油断をしてはいけませんでした





「(…凄い。)」


そう思うくらいに、クダリさんは集中して仕事をザクザク終わらせていく。

普段はバトルしかしなくて、書類整理なんてそっちのけなイメージしかないからか物凄く珍しく思える。

…実際、ノボリさんは頭を抱えつついつも「クダリ!」とお怒りになってた気がする。

それがサブウェイマスターの日常と化しているのも事実なのだけれど。


でも、これだけ集中して出来るのだから…普段からやっておけば良いのに、とも思う。

まぁクダリさんのことだから、きっと書類整理が苦手で、事務仕事が大嫌いって感じなのかも。


また1つ、また1つと書類を終わらせていく。

先程の束はどこへやらといった具合。

このペースでいけば、きっと夕方には終わるんじゃないだろうか。


「(…。クダリさんのことあんまりジーッとは見ないけど…やっぱりイケメンだよね。)」


ノボリさんもノボリさんでイケメンなのだけれど(何せ顔が一部を除き瓜二つ)、ノボリさんはクールなイケメン、クダリさんは…にっかりイケメン?爽やかというか。

…あ、もうすぐお昼だ。

丁度いいところで終わりたいだろうし…声かけようかな。


「あの、ボス。」

「うん?なーに、ライラ。後ボス、じゃなくてクダリね!」

「…それは善処します。今の書類たちが終わったら休憩にしませんか?もうすぐお昼ですし。」

「えー、善処じゃなくてクダリって呼んでよー!書類はこれでひとまず終了しとく!」


トントン、と書類をまとめて私に身体を向ける。

そして割と近い距離で、なんと呼び捨てで呼べとのお達しだ。

…普通に考えて、この鉄道の頂点に立つお方が何をおっしゃるのやら…。

まぁ、それがクダリさんらしいといえばらしいのだけれど。


「いや、流石に呼び捨ては。」

「だって両方ともボスって呼び方じゃどっちかわかんないじゃん。ならボクを名前で呼べばいいと思う!」

「それについてはそうだと思います。しかしせめてクダリさん、と呼ばせてください。…ボスなんですから。」

「むー…まぁ、今はそれでもいっか!じゃー今度からはそう呼んでね!」

「はぁ、わかりました。」


なんとも我儘というか、まぁ自由というか。

しかしそれを断る理由も無いので、ひとまず呼び捨て回避できたしそれでいいかな。

まさかボスを敬語なし呼び捨てとか…他の職務の人に聞かれたらクビだよ完璧。

それにしてもお昼まだかなぁ。ノボリさんが持ってきてくれるってことは多分それなりに良いものな気がする。

…正直言って楽しみだったり。


「ノボリおそいねー、またなんか作ってるのかな。」

「え、ボスのお手製なんですか。」

「そうだよー。ノボリいっつも作ってくれる!」

「それは凄いですね…あれ、クダリさんは?」

「ボクのも一緒に作ってくれる!でも今日はお弁当じゃないみたい。」

「そうなんですか…何というか、主夫ですね、主夫。」

「ボクノボリと結婚してないよ!」

「それはわかります、ノボリさんがそんな感じだなって話ですよ。」

「ノボリはお母さんみたいだからねー!」


…よく喋るなぁ。私もつい楽しくて話しちゃうけど。

そう思ってると、段々と近づいてきているクダリさんに気づかず、ふと視線を上げると目いっぱいにクダリさんの顔が入る。

…ち、近い!近いよクダリさん!


「ク、クダリさん、」

「んー?なーにライラ?」

「ち、近いです。」

「何が?」

「クダリさんが!話すならもう少し離れてくださいよ。」

「え?普通だよーふつう!」


そう言ってる間にも、距離をがっつり縮めて今となっては椅子同士ピッタリくっついている。

流石にそんなに仲が良い間柄じゃないからこの距離は近いと思う!


「…ね、ライラ。」

「あ、はい、何でしょう?」


急に少しトーンを落として話しかけてくるものだから、私も思わず背筋を伸ばして応答する。

するとクダリさんはとんでもないことを言い出した。


「ボクすっごくライラのこと好き。だから覚悟しててね?」


その言葉と共に、リップ音が私の耳に残る。

…、今、何をされた?リップ音、え、何!?


「驚いた顔もカワイーけど、次は笑顔が見たいな!」


そして再び頬にリップ音が鳴り、クダリさんは身体を引く。

と同時に、コンコンッとノック音がドアから響いた。


「お待たせ致しました。クダリ、後どのくらいで終わりますか?」

「今のペースなら夕方には終わるかも!ライラがいてくれるなら頑張るー!」

「そうでございますか。…ライラ、申し訳ありませんが引き続きお願いしてもよろしいでしょうか?」

「え?あ…」

「いてくれるんだよね!ねーライラ!」

「助かります…本当に本日はすみません、ライラ。これはまた別の手当てでお支払い致しますので。」

「あ、はい、そう、ですね。」

「本当に申し訳ありません…クダリが何かしでかしましたらこちらまでどうぞ。」

「これはライブキャスターの番号ですよね…いいんですか?別に仕事用もあるのでは…」

「こちらの方が気づくので。悪用は致しませんでしょう?」

「それは勿論です。」

「ならばこちらをお渡し致します。クダリをよろしく頼みますね、ライラ。」


ではお昼はここに。といって、ノボリさんは颯爽と部屋から出て行った。

本当に多忙な人だ。


「ね、ライラ。」

「は、い。何でしょう、クダリさん。」

「終わったら一緒にかえろ!いいでしょ?」

「あぁ、それでしたら…まぁ、今日は特にないので大丈夫ですよ。」

「やった!じゃーライラの家にお邪魔してラッキースケベできるよね!ボク頑張る!」

「…え?」

「んじゃまずはご飯食べよー、んで集中して仕事!ねーライラ!」


クダリさんはそういって、ノボリさんが持ってきたご飯を食べ始める。

…今クダリさんはなんていった?


「(…ついてこられそうだったら、ボスに電話しよう。うん。)」


その後、案の定クダリさんは私の家までこようとしていたので、ノボリさんに連絡して連れ帰ってもらった。

…どうやら私はとんでもない人に好かれてしまったらしい。


「(でも満更じゃない辺り、私もダメかもしれない!)」


End


2話に分けましたがオチが思いつかなかった結果がこれだよ!

クダリさんはがっつり前に出てあわよくばラッキースケベ狙ってるといい。

嵐のような彼が書きたかったが上手く出てるかどうか。


戻る TOPへ


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -