夢見 | ナノ
なかしたい。ないてほしい、おれだけのために




※レッドの悲恋夢。











「どうしたの、レッド?さっきからずっと、上の空みたいだけど…。」

「…なんでも、ない。」


ライラは知らない。

俺が、ライラのことを泣かしたいと思っているなんて。

別にいじめたいわけじゃ、ない。

でもなぜか、彼女の泣いた姿を一度だけ見たときに、凄く、ドキッとした。

ライラが泣いたのは、あいつのためだけれど。(それを見ているだけで、相手を殺したくなるくらい胸が締め付けられた。)


「…そう?なら、いいんだけど…何かあったら私に言ってね、力になれることがあるなら力になりたいから!」

「…ん。」


一度頷き、再び見るのはライラの目元。

ほんの少し赤くなっているその目は、きっとまたあいつのために泣いた、ということだろう。


「(その涙が、全部俺のせいだったらよかったのに。俺のせいで、泣いてほしいのに。)」


そう思う俺はきっとひどい男なんだろう、と思うけれど、その衝動はなぜか止まりそうになくて。

ただ、ライラが傷つく姿を見るのも、嫌で。


「…でも。何かあったのはライラの方。」

「…、何も、ないよ。」

「嘘。…目元、赤い。泣いたんでしょ、あいつのために。」

「はは、さすがレッドだね。…うん、そうだね。また、泣いちゃったよ。」

「…俺ならきっと泣かせない、と思う。泣くなら嬉し涙だと思う。」

「それでも、」


私が彼を、好きなんだよね。

困り顔で、でもまた涙を溜めながら、ライラは言う。

…あぁ、いっそのこと攫ってしまおうか。そうしたら俺の手元にはくるのに。

でもそれをしないのは、連れ去ったとしてもライラが泣くのは、あいつのため以外に泣かないから。

…悔しい、なんて。バトルでも滅多に味わわないというのに。


「…もし、また泣きたくなったら…俺のところに、きて。」

「レッド、優しすぎるよ…」

「…そう?でも、誰にでも優しくするつもりは、ない。」

「…、」

「ライラ、今日はもう大丈夫?」

「…もう、少しだけ…隣にいても、いいかな。」

「もちろん。…肩も胸も、いつでも貸す。」


優しいのだなんて、ライラにだけ。他の誰にも、優しくするつもりなんてない。

だけどそれがいえないのがもどかしい。

…あぁ、この腕の中にライラがおさまってくれるのなら。

留まる事を知らないこの気持ちを、ライラが受け止めてくれるなら。

なかして、なかして、なかして。

でも、それが幸せだという証になるように、なかしたい。


なかしたい。ないてほしい、おれだけのために。


けれど、それが叶うはずはない。


「ねぇレッド。」

「…どうしたの、ライラ。」

「また、こうして傍に、いてほしいな。」

「…いつでもどこでも。これで、呼んで。ライラからなら、出る。」

「ありがとう…レッド。」


それでも彼女は、あいつを選ぶから。


End


切ないというか悲恋…ですかね。主人公の相手はご想像にお任せということで!

お題サイト様からお借りいたしました。
微妙な19のお題



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