強くなったら
「勝者、ライラ!」
あれからトウヤさんに死ぬほど鍛えられ(といっても、主に私の心がズタボロになるまでしごかれたのだけど)、ジム戦をしてみた。
というのも、トウヤさんが「行って来い、負けたらこの修行の何倍もまた厳しくするからな」といって私をジムに押し込んだからなのだけれど。
ジムトレーナーの人たちは、もう見知った顔になっていたので自然とリーダーの方へと連れてってくれる。
バトルも修行だけれど、流石に何回もきていたのでショートカットさせてくれたのかもしれない。
ふと、視線を上げればそこにはトウヤさんが観戦していた。
…気づかなかったなぁ。トウヤさん、見ててくれたんだ。
「…おめでと。ライラにしては頑張ったね。」
「あ、ありがとうございます。」
トウヤさんがバトルフィールドに降りてきて、一言そう告げる。
それは私にとって、とても嬉しい言葉だった。
私が驚くところを、ちゃんと叱ってくれたり、ポケモンから少しでも目を離せばふざけるなと罵倒の言葉がたくさん浮かんでくるけれど。
それでも、あの修行は私にとってはとても為になり、それをちゃんとできたことでトウヤさんに褒められたことでそれは自信に繋がった。
勿論、過信はしないけれど。
ジムリーダーからバッジを貰い、8つ揃ったケースを眺める。
「…リーグには挑戦するのか?」
「いえ、バッジを集めたくてここまで来ました。自信にも繋がるかな、と思って。」
「…そ。まぁお前の腕じゃまだリーグは早いしな。」
だから、出るつもりはないのだけれど…トウヤさんは何か勘違いをしてないだろうか。
たしかにここまでくれば、誰もが一度はリーグに挑戦したい気持ちになる。
だけど、私はチャンピオンに勝ちたいわけではないし、この子達も満足してくれているからいいかなって思っている。
バトルがしたい時は、バトルサブウェイに行けば戦えるのだし、トレーナーなんてその辺にたくさんいる。
「私、リーグは…」
「わかってるよ。…でも、俺はお前が気に入った。つーわけで、ライブキャスター出せ。」
「え、」
「出せ。」
「…はい。」
修行の間は、トウヤさんがずっとつきっきりでしてくれたから連絡先も聞いていなかった。
もうこれでお別れかな、と思っていた矢先にこれだ。…驚くのも無理はない。
彼はそれを渋っていたように感じたようで、言葉を被せて命令する。
…俺様属性には、逆らいません。
ポケットから出して、トウヤさんに渡す。
しばらく操作して、私の手元に帰ってきた。
「俺の登録しといたから。…ライラ、メールと番号送って。」
「は、はい。」
登録されているトウヤさんのアドレスに、電話番号を書いて送る。
届いたそれに満足したようで、トウヤさんの顔が僅かに微笑んでいるのが見えた。
「よし。じゃあこれからはこれで連絡するから。電話は3コール以内に出ろよ。」
「え、流石にそれは無理…「3コール以内。メールはその日の内で許してやる。」…せめて5コールでお願いします…」
仕方ないな、といって肩を竦めるトウヤさん。
メールはその日の内ってことは、多分電話の方が多いんだろうな。
これからは腕につけておこうかな、出れなかったらまずそうだし。
「ライラはこれからどうするんだ?」
「一旦家に帰って、少しそこで休みます。その後は…今度はまだ行ったことのない町に向かおうかなって。」
ライモンシティから右の方はまだ行った事がなかったので、そちらを旅してみようと思う。
やっぱり旅は、新しいものを見つけるのが楽しみの1つだしね。
するとトウヤさんはどこかに電話をし始める。…どこに電話してるんだろう、なんだか穏やかじゃない。
「…俺のところまできたら電話くださいよ、俺そこにいつまでも鎮座したくないんで。えぇ、じゃあよろしくです、いやですから。じゃ。」
…何の会話だろうか、なんだか物凄く傍若無人な態度何だけど…。
電話が終わり、トウヤさんはくるっと私の方に身体を向ける。
「…その旅、俺もついていくから。」
「え?」
「一度しか言わないよ。…ほら、ライラの家はどこ?」
「カラクサですけど…って、つ、ついてくるんですか?」
「勿論、しばらくお邪魔するよ。案内しろよ。」
「…わ、わかりました…」
傍若無人な彼に、私は逆らえません。
でも、彼が旅についてくると聞いて、心が躍る気持ちが抑えられないかも。
…何でかは、わからないけど!
「…絶対、ライラから言わせてやるからな。」
「な、何をですか…」
「秘密。…で、どの辺?」
「あの辺です…ほんとについてくるんですね。」
「当たり前。しばらく一緒にいるから覚悟しといてね。」
とりあえず、トウヤさんと過ごす日々がまだまだ続きそうです。
おわる。
なぜひきのばしたのかが私にもわからない。
トウヤさんはこんだけ傍若無人でもいい気がする今日この頃。
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