夢見 | ナノ
強くあるために




私は何度も挑戦している。それはもう、何十回も。

だけど、どうしても、勝てない。

それはポケモン達にも申し訳なかったし、私自身も、自信を失いかけていた。

ごめんね、と謝れば、皆はそんなことない、とでもいうように、私の手に、足に擦り寄る。

弱いトレーナーでごめんね、と心の中でもう1度謝り、負け続けても懐いてくれる彼らを抱きしめる。

何がいけないのか、何をしたら強くなれるのか。

ただの頭でっかちなのか、それとも素質がないのか。

私はただ、途方にくれていた。

心配させるかもしれないけれど、私の仲間たちにはポケモンセンター内の部屋で待つように言い、私自身は1人で外を歩く。


「…何がいけないのかなぁ…。」


ジムバッジは、7つ。

後1つで、全て揃う。

最後の難関であるドラゴンタイプは、私の攻撃全てをなぎ払った。

ジムトレーナーには勝てる。けれど、リーダーである彼女、アイリスに勝てないのだ。

少しずつ強くなってるよ、と言ってくれる彼女だけれど、今の私にはもう挑戦しようなんて気は起きなかった。

どう戦ったって、彼女には叶わない。

ベンチに座り、ため息を漏らす。


「…辛気臭い顔してるな、お前。」

「…、あぁ、すみません。今どきます…」


そんな気持ちでいたら、周りにも迷惑だろう。

目の前にいる彼も、肩をすくめながら、呆れたような顔でそういった。

どこう、そしてもう少し人から離れて落ち込もう。

そう思うのに、彼は私が立ち上がる前に横に座る。…辛気臭い顔してるから、邪魔だったんじゃないのだろうか。

足を組んで、ミックスオレを飲むその人は、なんとも偉そうな姿勢だった。

なんというか、ふんぞり返ってジュースを飲んでいる姿を見ると、思わず傍若無人なんて言葉が思い浮かぶ。

それでも、自信に満ち溢れている。今の私には、眩しい存在だった。


「…え、と。私はもう行きます、」

「待て。」


一言、そう制しただけなのに、私は動けなくなる。

威圧感、といえばいいだろうか。…物凄く、怖い。

肩を竦ませながら、彼の表情を見る。うん、眉間に皺。怖いです。


「…ポケモンは。」

「え、あ、借りてる部屋の中に…」

「今すぐ呼んでこい、そしてバトルするぞ。」

「で、でも今私そういう気分じゃ「いいから、早く持って来い。いいな。」…はい。」


有無を言わせない被せに、私は言う通りにして、私の仲間たち全員を持って再びベンチに戻ってきた。

彼は、仁王立ちだった。ほんと怖い。


「…出せ。」


ただその一言が、重い。

言われるままに、私は仲間たちを出す。

私の仲間たちを一瞥し、彼は彼のポケモン達を繰り出す。

どのポケモンも屈強なポケモンだ。時に可愛らしいポケモンもいるが、その瞳は強い。

というか、どこかで見たことある面子…つい最近、見た気がするのだけれど。

…あれ、この人もしかして、


「…えっと、チャンピオンさん…ですよ、ね?」

「だから?まぁ今はそんな肩書きいらないけどね。…十分強い。なら問題はお前自身。あ、名前は。」

「えと、ライラ、です。」

「ん。ライラ、多分予想外のことが起こるとパニクるタイプだろ。」

「…はい。」

「だからダメ。ポケモンたちも安心して指示聞けない。だから隙を突かれて負ける。特にこのジムはそういうとこに目ざといから。」


あぁ、やっぱり私がダメだったのかと落ち込み、目線を下に向ける。

しかし彼は、…トウヤさんは、私が下を向くのを許さない。


「下向いてる暇があったら、ポケモン達を見ろ。泣く暇があったら、考えろ。…それが出来たら、ライラは勝てる。俺が保証してやる。」

「…、が、がんばり、ます。」

「よし。じゃあ早速練習だ。ほらやるぞ。」

「え、えぇぇ?」

「いいからやる。いいな。」

「…、はい。」


そういう彼は、私が下を向かないことを目にすると、ニヤリ、と笑った。


「その心意気を忘れるな、そうしたらライラはもっと強くなる。いいな。」

「はいっ!」


いつの間にかもやもやする気持ちなんかふき飛んで、私はトウヤさんにバトルを教わった。


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短編のはずが続いちゃった罠。

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