あるブリッジでの出来事
「…じゃ、説明してもらおうか。どういうことなのかな?」
「…さ、さぁ…私にも、さっぱり…。」
目の前に積まれたのは、人の亡骸…。いや、生きてはいるけど。
多分、後数時間は起き上がれないんじゃないかな…トウヤの攻撃、凄く重そうだったもん。
別に人間が人間を、ではない。ポケモン対ポケモンで、だけど。(でも時々トウヤはそこに積みあがった人達に向けていた気がする…。)
でも、どうして私が暴走族の人達に囲まれたのかは不明なので、聞かれてもとても困る。
「本当にわかんないの?」
「うん。ただシリンダーブリッジを通ろうとしただけなんだけど…。そしたら、何かこういう人たちがたくさんいてね。」
絡まれたっていうのかなぁ?多分。
まぁ、ポケモン勝負しかしない人たちだったから別に問題はないんだけど…あ、思い出した。
「そうだ、絡まれてたんじゃなくて、この暴走族の名前を言われてたんだっけ。」
「…?どういう…」
「暴走族の人達との勝負に勝った後、これからは「ブラックダイケンキ」にするぜ!とか言ってたような…。」
で、その後すぐにトウヤがこの周りにいた暴走族を倒しちゃったんだっけ。
…こう思うと、トウヤって凄く悪人…だってポケモン皆疲れてた気がするもんなぁ。
「…あぁ、そういえば今日は金曜日だったっけ。」
「…金曜日に何かあるの?」
「毎週金曜日の夜になると、暴走族がここにたむろって…で、騒音被害が出てるって聞いたことがあるよ。」
「そうだったんだ…。でも、ポケモン勝負で仕掛けてきたからそう悪い人達のグループってわけじゃないのかなって…」
「まぁ騒音は迷惑だろうから…もう少し痛めつけてもいいと思うんだけど。」
「それは流石に…他のグループの人達引いちゃってるよ?」
というか、既に半径1メートルは離れている気がする。
「…さて、もう暴走族の連中はどうでもいいや。…ライラ。」
「え、何トウヤ。なんでそんなに笑顔なの?」
こういうときのトウヤは、誰かを虐める時の顔なんだから…!
嫌な予感がして、私は急いでケンホロウをボールから出す。
どこだっていい、とりあえず逃げられれば…!
そう思っても、やはりトウヤの足は速い。すぐに腕を捕まえられた。
「…ライラ、俺から逃げるなんていい度胸してるね?」
「…あ、はは…なんとなく、嫌な予感がしたから…」
「嫌な予感?俺は何もする気はなかったよ。たった、今までは。」
「過去形じゃないの!」
「ライラが逃げなければひどいことはしないつもりだったんだけどね。」
「だってあの笑顔が怖かったんだもん!」
「へぇ…そうなんだ。まぁいいや、とりあえずライラ、動くな。」
「…」
ドSの顔をしてらっしゃるよトウヤ…。
ダメだ、逆らえない。本気になったトウヤなんかにかなうはずがない。
「よし、良い子だねライラ。そのまま俺を見ろ。」
「…トウヤを見るの?見てる…」
「俺の、顔。顔を見て。」
「…別にイケメンを押し出されても…」
「つべこべ言わずに見ろ。」
「…はい。」
有無を言わせず、トウヤが畳み掛けるように言葉を放つので仕方なく私はトウヤの顔を見る。
…相変わらず、非の打ち所がないイケメンである、と。
体格は少し小さめかもだけど、それを補うほどの顔と、ポケモン育成力があるからなぁ。
私も他よりはマシかもだけど。(…顔はわからない。私の幼馴染は顔が良いのが多すぎる気がするんだ!)
「…トウヤ?」
「…ん、よし。絶対動くなよ。」
ここで逆らったところで、逃げられないのは明白。
生憎私の手持ちは、えんまくとかそういった類の技を覚えていないので必然と言うことを聞かざるを得ない。
そしてトウヤが手に持つのは…黒い、ペン。
何をされるのかは、もうわかる。…油性でないことを祈るばかりだ。
「…変なこと書かないでね…。」
「変なことは書かないよ。俺にとって良いことを書くだけ。」
だから、それが不安なんだってば。
そんなことは言えず、なすがまま、頬に何かを書かれた。
一体何を書いたのだろう…あぁ、不安でしょうがない。
「今日1日以上、このままでね。」
「待って、1日以上ってどういうこと!?」
「言葉のまま。ひょっとしたら、ライラの様子で1週間以上続くかもしれないね。」
「…もう、なんて書いたんだか…。」
このままでは1週間以上続くという冗談が冗談でなくなるかもしれない。
それは流石に嫌だと思った私は、持っていた鏡を書かれた頬に持っていく。
「…トウヤ、これは…」
「ちゃんとベルとチェレンにも見せるんだよ。じゃないとまた書くから。」
嘘言っても2人にちゃんと聞くからね、と念を押されて、ニヤニヤした顔を浮かべながらトウヤが言う。
…いや、コレを見せるって…!
「これを、2人にも見せろっていうの!?」
「見せなきゃ他の人がどんどん見るだろうね?」
「(…鬼、悪魔…!!)」
鏡に映る私の頬には、こう書かれていた。
“俺の。手出すな。byトウヤ”
…これを見て即行、チェレンとベルを空から探したのは言うまでもない。
End
付き合っているようでいない2人だったり。
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