ありがとうをきみに。
ライラがそこで笑っていてくれるなら、俺は俺でいられるような、そんな錯覚に陥ることがある。
「あれ、レッド?どうしたの、ボーっとして。」
「…なんでもない。ただ、ライラが可愛いな、って思って。」
「も、もう!またそんなこといって!!」
「…本当のことだから。」
俺は言葉を選ばない。というより、言葉は少ない。
ライラ曰く、「ストレートすぎる」らしいけど。
そういえばグリーンにも言われたっけ。…あいつに言われるのはなんだか癪だったから、バトルでコテンパンにしたけど。
まぁ、その分気持ちは十分に伝わっている、とは思う。
言葉にするよりは、行動で示す方が得意だけど。
「ライラ。」
「なーに、レッド?」
「こっち、おいで。」
「…うん。」
まだ俺はシロガネ山に籠っているから、必然的にテントの中にいる。
それでも、俺とライラの距離が微妙に空いていたので呼び寄せ、抱きしめる。
暖かくて、安心する。同時に、いつもここに来てくれるライラには、感謝もしている。
こうしてきてくれるのは、嬉しい。
「…たまには降りてきてね?私もしょっちゅうこれるわけじゃないからさ。」
「…わかってる。…でも、まだ。」
「…来てくれると、いいね。まぁ当分は私で我慢してね?」
「ライラが、いい。グリーンはもうこなくていい。」
「そ、それは…まぁ、うん。ありがとう…グリーンが不憫だけど。」
「別に。あれは食料配達人だから。」
「でも感謝しなきゃダメだよ?私じゃあんなに持ち運べないし…。」
あいつに感謝。あまりしたくないけれど、俺に食料を送ってくれてるところは感謝しておこう。
…もちろん、運んでくれるポケモン…ピジョットに。
「さて、と。そろそろご飯作らないと、なんだけど…」
「まだ、このまま。」
「…だよね。…まぁもう少しだけね?レッドのポケモン達はお腹空かせてるから。」
ね?とライラが問いかけると、ピカ!と元気よく返事をする。
…最近、俺よりライラになついている気がするが…気のせいか?
まぁ、それはいいか。なついてくれている分には、良い。
…こうして、ライラと2人で過ごしていると、やはり心地が良いと思う。
3年くらい前は、たった1人で過ごしていた、白い世界。
そこに、人間らしさは全くないと言っても過言ではなかった。
…そんな俺に、ちゃんと感情を与えてくれたのは、ライラだ。
「…ライラ。」
「ん?どうしたのレッド?」
「…、ありがとう。」
「…?よくわからないけど、どういたしまして?」
「疑問にされても。」
「や、よくわからないけどって言ったじゃん!いきなりお礼言われたらどういたしまして、でしょ。」
「…まぁそうだけど。とりあえず受け取っておいて。」
「…そうだね。じゃあ改めて、どういたしまして!」
そう言って笑うライラを見て、俺は彼女にそっとキスを送った。
End
レッドさん視点でたまには。
普段喋らない分、なんだかとっても喋ってる感じがするなぁ。
戻る TOPへ