マツバさんのタイプ
「ゲンっ!」
「わっ、ゲンガー!おはよう。」
「ゲンゲンっ!ゲンガっ!」
エンジュシティを歩いていると、頭の上にゲンガーが乗っかる。
…重い。けど、このゲンガーは確か、
「ライラちゃん!」
「あ、マツバさん…、あの、ちゃん付けやめてくれません?私そういう年でもないですし。」
「あぁごめんごめん。ついね。昔からそう呼んでたから。」
「だからって…もう私15歳過ぎましたよ?」
「はは、だからごめんって。…久しぶりだね、ライラ。」
「…うん、久しぶり。マツバさん。」
…うん、やっぱり、マツバさんのゲンガーだった。
そして久しぶりに会うお兄さん的存在のマツバさんはほんと、うん。
「(ははー…これはモテる顔だわ。雑誌が凄く持ち上げたのかと思ったけど。)」
かっこいい。文句なしに。
まぁ、昔からかっこいいお兄さんで自慢だったんだけど。
…本当のお兄さんじゃないのが、少し残念。
私もこんな美形に生まれたかなー。私は凡人だし。いや、別に気にいらないわけじゃないけど!
「ライラ?どうしたんだい?」
「あぁ、うんごめん。雑誌の真偽を問うために来ただけなんだよね。」
「…雑誌?この間受けたあれかな。…随分持ち上げられてたね。」
「そうそう。で、お兄さん的な存在のマツバさんがこんなんだっけ?と思ってね。せっかくだし、戻ってきたんだよ。」
「…そうなんだ。」
雑誌には本当にでっち上げのような内容も多々書かれていた。
マツバさんの趣味、好きなタイプ、付き合った人数…etc。
本当に凄いよね、雑誌って。
趣味はともかく、タイプは同じ金髪の、イケイケボディがいいとかなんとか。
…付き合った人数?そりゃあもう、星の数ほど。
…こんな人だったっけ?というかこんなタイプが好きな人だったかなぁ。
「で?どんなでっち上げをかかれたんだい?あまり深く読んでなくてね。」
「え?あぁ…趣味は焼けた塔に行くこと、好きな女性のタイプは同じ金髪でイケイケボディ、付き合った人数は星の数ほど。
…マツバさんってこんな人でしたっけ?」
「…うん、それは流石に…」
あ、顔ひきつってる。やっぱり違うよね。だってマツバさんって、割と大人しい人だし。
…間違っても、イケイケボディな人には興味を惹かれないと思う。
「でも、マツバさんのタイプって…大和撫子系ですかね?」
「なんでだい?」
「いや、なんとなく…マツバさん大人しめなタイプが好きそうだなぁって。」
「…ライラはそう思うのかい?」
「はい。なーんかこう、淑やかにしてる女性が好きそうだなーって。」
…違うのかなー。いや、多分マツバさんのことだ、生活力があって、はんなりした女性がタイプじゃないかな。
まぁ、私に淑やかさはないし、…生活力は、まぁ散々旅してるからあるけど、決して大人しいタイプではない。
うん、私はタイプに当てはまらないな!
「ふぅん…。ねぇライラ。」
「何ですか?」
「僕の本当の好み、知りたくない?」
「あ、知りたいです。気になりますし。」
「じゃあ、まず…そこに座ってくれるかな。」
「?ここですか?」
「そう、そこの椅子。」
「了解です。」
ストン、とそばにあった長椅子に座る。
マツバさんは、立ったままだ。
「それから、目をつぶってくれるかい?」
「え?目をつぶるんですか?」
「うん。そうしないと教えてあげないよ?」
「うーん…よくわからないけど、了解しましたよ。」
何故目をつぶらなければならないのかはわからないけれど、とりあえずマツバさんがいうのだから目をつぶる。
…真っ暗。まぁ、まだ日の光があるから、若干明るいけど。
それにしても…ただ話を聞くだけなのに、何で目をつぶるんだろ?
「ちゃんとつぶったかい?」
「はい。見えませんよー。マツバさんが移動されたりとかすると、もうどこにいるかわからないですし。」
「よし。じゃあ教えてあげるよ。」
おっ、ようやく教えてくれるんだ!
この行動の意味はよくわからないけど、タイプを知っといて損はない!
なぜかって?友達に好きな子がいるから!
…と、そこまで考えて。
「(…あれ、マツバさん、いつになったら話してくれるんだろ。)」
ずっと、先ほどの教えてあげる発言から何も喋ってくれない。
…教えてくれるんじゃなかったのかな。
いや、マツバさんは約束してそれを実行したら、ちゃんと質問とか行動とか、答えてくれるしやってくれる。
…待とう。それが正解だ!
「…うん、やっぱり僕はライラのことが、好きだよ。」
「…えっ!?」
私を好きって!?何!?
その言葉に驚き、思わず眼を開けてしまった。
「…ふふ、可愛いね、ライラ。」
ふわっと笑うマツバさんとの、距離が、近い。
そう思っている間に、唇にかすめる、マツバさんの、
「…!?え、あ、マツバさん!?」
「僕のタイプはね、ライラ。君だよ。」
「えぇぇぇっ…」
「僕は大人だからね、ずるいやり方でライラを奪っちゃうからよ?」
「あの、マ、マツバさん?」
「あぁ、好きなタイプは特にないよ。僕は昔からずっとライラが好きだったからね。
…そうだ、ライラが見たって言う雑誌の名前、教えてくれる?」
「…月刊、ポケジムトレーナ…」
「…あの会社か。そういえば毎回でっち上げが多いって噂だったし…。丁度良い、ハヤトも呼んで一緒に訴えに行こう。」
「マツバさん!?」
「あ、ライラはここ…じゃあダメだね。僕の家で待機してて。で、僕の帰りを待ってること。いいね?」
「…あ、はい。わかりました。」
「うん、良い子だねライラ。じゃあ僕はちょっといってくるから…あぁ、その前にライラを僕の家に送り届けないとね。行こうか、ライラ。」
「…はい。了解、です。」
…なんだか色々ついていけません。
けど、マツバさん…実は、こういう人だったんですね…!
私、一体どうしたらいいの!?
「そうだ、ライラ。君はこれから旅を続けるのかい?」
「え、いえ、しばらくエンジュに滞在しようと思ってるんですけど。」
「滞在?じゃあ、まだ旅を続けるつもりなのかい?」
「次の目的地はまだ決まってなくて…特に用事もないですけどね。」
「じゃあ決定だね。ライラは今日からここに住む。」
「えぇぇ!?」
「荷物は今あるだけかな。それなら問題ないよね?」
「いや、あの!?」
「さて着いた。僕の部屋の場所はわかるよね。じゃあ僕はハヤトのところにいってくるよ。良い子にして待っててね?」
じゃ、と歩いていくマツバさんに、私はかける言葉が見つからなかった。
「…私、何か凄い人に捕まってる気がする。」
…というか…マツバさんのイメージが…凄く、変わった…。
「…ん?メール?」
ポケギアのバイブが響き、私は開いて中身を確認する。
「…な、ななな…!!」
『今ハヤトと合流して会社を訴えに行ったよ。
…まだ家に入ってない、なんてことだったら…さっきのこと以上のこと、しちゃうからね?』
その言葉を見た瞬間、マツバさんの家の、少し離れた場所にある部屋に駆け込んだのは言うまでもない…。
End
終わり方がさまよってしまって結局こんな形に。
キャラ崩壊ですね多分。あはははは。
初マツバさん。もっと書きたいけどキャラがつかめない。
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