夢見 | ナノ
一生の約束





「…、痛い、よ。N。」


彼は、答えない。

ただ、ギリギリ、ギリギリと、肩に食い込む爪が、私に痛みを起こさせ、同時に…少し、嬉しくなる。

そう思ってしまうのも、やはりNがずっとそばにいなかったからなのではないだろうか。

だって、Nは、旅立ってしまったんだ。トモダチの、ゼクロムと一緒に。

それを私は一番前で、見ていたんだ。

サヨナラを告げたのも、Nだ。

なのに、私はなぜ今、その消え去ってしまったNに出会い、こうして肩を掴まれているのだろう。

彼は理由がない限り、戻ってこないのだと思っていたから。

…理由があったところで、私の元になんかこないとも、思っていた。

私には、サヨナラを告げていた、から。

それなのに、今、彼は目の前に、いる。


「…ライラ…」


ギュ、と。今度は肩ではなく、全身を包まれる。

一瞬見た顔は、とても悲しそうな目をしていて。

何をそんなに悲しんでいるの、と聞こうとしても、抱え込まれて声を発することが困難になる。

何で私に会いに来たの、何で私を抱きしめるの、何で、何で。

浮かんでは消えていく言葉を、頭の中に押しやって。

ただひたすら私を求めるNに、私は黙って身を預けた。

ギュウギュウに抱え込まれるから、肺が圧迫されて、苦しい。


「ライラ、ライラ…」

「N、」

「ライラ。ボクは…君に、言いたいことがあってきたんだ。」

「…?言いたいこと?伝えたいことが、あるの?」


離してくれはしないようなので、少々声がこもるが声を発する。

Nはその声がはっきりと聞こえるようで、そうなんだ、君に、伝えたいことがあるんだ。と返してくる。

ギュ、と背中に回されていた腕は、再び肩におかれる。

今度は、優しく。ただ置くだけだった。


「…サヨナラって言って、ごめん。」

「…N、それは」

「ボクは、ここに帰ってきた。もう、逃げないよ。…ねぇ、ライラ。」


また、グ、と肩を掴まれる。

先ほどの、痛いほどの掴み方よりはマシだが、同じところを掴まれているようで、痛い。

それでも、私に、Nがいたという跡を残してくれるという事実に喜んでいる自身がいる。

…そんな私も、狂っているのかもしれない。

そして、暗い瞳で私を見る、Nでさえも、狂っているのだと、思う。

だって、彼の瞳は。


「ボクと、一生、一緒にいてくれるかい?」

「…それは、プロポーズかな?」

「…まぁ、そうとらえてもらっても構わないよ。ボクは君が好きだから。」

「…でも、私はもう、旅に出ないよ。レシラムだって、」

「彼らは彼らさ。君はただ、レシラムに乗って、ボクについてきてくれないか?」


誰もいない、でも、ボクらの生活には困らない場所があるんだ。

嬉々として話してくれるNの顔は、それしか回答がないとでもいうように私を引っ張っていく。

当然、私には選択権はない。

でも、自由を奪われてもいいとも思っている私は、末期なのかもしれない。

Nにサヨナラを言われてから、もう1年以上も経つというのに忘れられなかった。

今思えば、それは恋心だったのだと思う。


「…さぁ、ライラ。君のトモダチ、レシラムを出して。ボクと一緒に暮らそう。」

「…責任取ってくれるの?私、一応まだまだ現役なんだけど。」

「大丈夫。ボクは君のスベテだから。」


強引なのも、彼らしい。

だからこそ、私は彼に惹かれたのかもしれないな、なんて思う自分に、嘲笑する。


「…N。私は、」

「…君は、きっとボクからは離れられない。そうなると思うよ。」


ね、ライラ。

そういって綺麗に笑い、私に手を出す彼を見て。


「…そう、かもね。」


なんて気のない振りをする返事をして、Nの手をとった。


End


N夢。なんかうまくいかないなぁー。

最後のNの「サヨナラ」発言に全俺が泣いたよ畜生。

N、カムバックしてほしかった…。


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