11.前夜(1/16)
「あ〜終わった終わった」
今日は半兵衛の鬼畜にも似た指導がなかった主人公Aはいつもより体力が有り余っていた
背伸びをし、鼻歌を歌いながら体育館のモップ掛けを始める
半兵衛目当てで見学していた者も入部希望者も、今日は半兵衛が来ないと分かると約半分程帰って行った
落ち着きを取り戻したと思われていた体育館
佐助と小太郎が残っているせいで未だに女子生徒の黄色い声が聞こえてくる
心なしかキャプテンと副キャプテンもいつめよりテンションが高い
「はい、じゃあ今日はここまで!お疲れ様でしたー」
キャプテンの号令で解散すると、それを見計らって佐助と小太郎がコート内にやってきた
「お疲れ、主人公Aちゃん」
佐助が笑顔で声を掛けると主人公Aはムスっとした表情になる
「ん?なに、怒ってんの、主人公Aちゃん?」
「別にー」
主人公Aは佐助を無視して制服に着替えようと部室に向かっていると、佐助は主人公Aに足音立てずに近づき後ろから耳元で囁いた
「もしかして俺様の人気に嫉妬しちゃったー?
…大丈夫、俺様主人公Aのことしか見てないから」
吐息がかかるほどの距離で低く囁けば、主人公Aの顔はみるみるうちに赤く染まる
「変態!そんな声で近づかないでっ」
主人公Aは佐助を押し払うと部室へ駆け足で逃げて行った
「そんなー、変態って…近づかないでって…俺様かなりショック」
佐助は床に座り込み、主人公Aの後ろ姿を見つめていると
「な、なんだよ風魔」
凛と立つ小太郎が「主人公Aに近寄るな」と言わんばかりに佐助を睨み、見下ろしていた
もう、なんなのよ佐助の馬鹿っ!
主人公Aは佐助に囁かれた言葉を思い出しては胸を高鳴らせていた
はじめて主人公Aと呼び捨てに呼ばれたこと
そして、自分のことしか見ていないと愛の言葉らしき台詞を言われたことにドキドキしていた
しかもあんなに低い声で
「適当なことばっかり言って佐助なんてやっぱり嫌い!」
主人公Aはムシャクシャする反面、複雑な想いでいた
「佐助は、主人公Bちゃんのことが好きなの?」
チラリと体育館に座り込む佐助を見ると、主人公Aは切なく呟いた
「お待たせ、小太郎!」
制服に着替えた主人公Aは元気良く小太郎に笑いかけた
「ちょっと!俺様を無視しないでよ主人公Aちゃん」
佐助をスルーしながら小太郎と並んで主人公Bの家を目指す
外は真っ暗だったが、主人公Bの屋敷だけ明かりがすごかった
「やっぱり主人公Bちゃん家って大きいねー」
主人公Aは主人公Bの屋敷を見上げて感慨深けに漏らすと、その横では珍しく小太郎も緊張していた
ハッ、竹中先生も主人公Bちゃんの家にまだ居るのかな?私、部活で結構汗かいちゃったけど汗臭くないかな?
一応、ビ●レのさらさらパウダーシートで拭いてきたから大丈夫だと思うけど…
主人公Aは主人公B屋敷の前でカバンから8●4を取り出すと、おもむろに体中にかけ始めた
「かけすぎだよ、主人公Aちゃん」佐助はそんなことを思いながらインターフォンを押す
少ししたら、屋敷から政元が出てきた
「やぁ君たち!昨日ぶりだね」
「あ、主人公Bパパさんこんばんはー」
主人公Aが手を振ってあいさつすると、いつも主人公Aのペースに飲まれる政元も上機嫌になり家に通してくれた
「主人公Bは部屋にいるよ」と政元に言われると、佐助を筆頭に主人公Bの部屋へと向かった
「主人公Bちゃ〜ん、こんな時間だけど遊びに来ちゃった!開けて〜」
トントンと主人公Bの部屋をノックし、主人公Aの呑気な声が響くと
「ふぁ〜い」
主人公Aよりも呑気な声が返ってきた
主人公Aたちは主人公Bがおかしいと顔を見合わせていると、ドアが開いた
「主人公Bちゃん!」
そこには、乱れまくった袴姿で妖艶な主人公Bが立っていた
This was written by あんず
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