ザキ | ナノ

 ミニスカポリスと遠距離デート(1/6)


真っ昼間のかぶき町



化粧は取れかかり、うっすらどころじゃないヒゲが生えた俺はすごく異質な存在だった。否、かぶき町ではそれも普通なのかもしれない

女に化けての密偵捜査は予想以上に時間がかかった。なんとか攘夷志士の秘密を聞き出せた時には2日が経っていた

少しフラフラしながら屯所に帰ろうとしていると、見覚えのある顔に胸が高鳴った


「うそ…なんでこんなところに」


婦警の格好じゃないけれど、それはすぐに分かった


私服姿のみょうじさん


コーヒーショップの店先で時計をちらちら気にしながら誰かを待っている様子
もしかしたら、友達と待ち合わせかな

弾む胸を抑えきれずに話しかけようと一歩踏み出すが立ち止まった
……カマッ子倶楽部のホステスのような今の俺



無理ィィィィィ!



ずっと会いたいと願っていた
朝も昼も夜も(特に寝る前)ずっと考えていた

そのみょうじさんが今目の前に…


まさかの偶然に運命を感じていると、またも目を疑った


「土方さーん」


彼女が手を振った先には、隊服を脱いだ副長だった

遠慮がちに片手を上げた副長は、どこか照れくさそうに見えた



…どういうことだ
なぜ、みょうじさんと副長が?
まさか二人…




いやだっ!嘘だっ!信じない!
これは夢か?丸二日寝てない俺が作り出した幻覚なのか?





「忙しい中どうもすみません」


「別に」


「それじゃあ行きましょうか」




やばい、こっちに向かってくる!

彼女と副長は、隣に並んで歩き始めた


フン、俺との方がもう少しくっついて歩いてたぞ…


なんて、少しだけ離れた二人の距離に、勝ち誇ったりしてみたけれどそんなの虚しくなるだけ


路地に隠れ、二人が歩く姿をドキドキしながら見ていた

これはもう後を追うしかない

始まったばかりの片思いを成就させるため、俺はどんな現実でも受け止める覚悟で追跡を開始した



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