ミニスカポリスと花火大会A(1/8)
「やばっ!寝坊した」
跳ね起き急いで隊服に着替え部屋を出る
副長にどやされるんじゃないか不安だったけれど、きっと彼女の顔でも見たらそんな嫌な事も吹っ飛んじゃうんじゃないかと思った
走って広間に行けば、そこに人集りが出来ていた
ざわつく隊志たちの隙間から見てみれば、局長と副長…そしてもう一人
「みょうじさん!」
ついつい大きな声で彼女の名前を漏らしてしまうと、副長の恐ろしい眼孔に捕らえられてしまった
「山崎、テメェ遅いぞ!」
「ヒィ!すんません」
いいのか悪いのか、副長が俺の名前を呼ぶので隊志達の群は俺の目の前を空けた
一歩一歩踏み出してみてみると、彼女に違和感を感じる
「おはようございます、山崎さん」
相変わらずの笑顔を俺に向けてくれる彼女。昨日とは違い緩く結えられた髪型、淡い赤で描かれた朝顔の花が美しい…
「浴衣?」
「おぉ、ザキ遅かったな!どーだ浴衣姿のなまえちゃん可愛いだろう」
ハッハッハと局長の恋人でもないのに偉そうに彼女の肩に手を置き笑う
「近藤さんにこの浴衣いただいたんですけど、どうですかね?」
浴衣姿の彼女がはにかんで笑う。「すごく似合ってるよ」が何故か言えずに俺まで照れた顔で「うん」と頷くのに精一杯だった
「あのー本当にいいんですか?すごく高価な浴衣なんじゃ」
申し訳なさそうな彼女に局長は豪快に笑う
「いいんだいいんだ、どーせお妙さんに受け取ってもらえなかった浴衣だ。気にせんで受け取ってくれなまえちゃん」
「はぁ…」
「近藤さんがいいっつってんだ、貰っとけ」
彼女が副長に目配せすると、煙草をフゥと吹かせた。彼女は副長の言葉を聞くと再び局長の方へ向き直し深々と頭を下げた
「近藤さん、ありがとうございます!この浴衣、大切にしますね」
「いや〜そんな浴衣ぐらいでそんなに喜ばれちゃイサオ照れちゃう」
「早くお妙さんて方と結ばれるといいですね!私、陰ながら応援してます!」
「うぉぉぉぉぉなまえちゃんはなんていい娘なんだっ!もしなまえちゃんが警察署を懲戒免職になっても真選組でずっと面倒みてあげるからね」
「はいっ!」
「ったく。…おいなまえ、いつもの服とは違ってるからって職務は忘れんなよ。花火大会ってことで浴衣にしただけ」
…そういうことだったのか。長いこと一人ぼっちにされたおかげでみょうじさんが浴衣を着ている謎が解けた
「なまえ、あとで打ち合わせだ。」
「はいっ!」
彼女は急いで副長の後に続いて行ってしまうと、立ち止まり俺の元へ戻ってきた
「山崎さん、焼きそば楽しみですね」
こっそりと耳打ちするように言うと「それじゃあ」と彼女は部屋を後にした
昨日の約束覚えててくれたんだ…
彼女の後れ毛がやけに色っぽくて艶っぽくて、自分じゃどうすることも出来ないくらいのにやけ顔を体を抓ってこらえていた
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