ザキ | ナノ

 気になるトナカイ(1/4)


最近、隣のクラスの山崎の様子がおかしい

こんな寒空の下、誰かを待つ放課後の山崎をもう何回見ただろう

本人に聞いてみてもはぐらかされるし、土方に聞いても「知らん」の一言
お妙ちゃんは「好きな子でも待っているのかしら」って他人ごと。まぁ他人ごとなんだけど





「山崎ー」


雪がちらつく中、今日もダッフルコートに身を包んだ山崎は校門に立っていた

手を振って駆け寄れば、一瞬ビクついてからチラリとこちらを見た


「なんだ、みょうじか」


なんだ、とは何だ!腹の立つ奴め。私の顔を見たとたんにホッとしたようないつもの地味な顔に


「誰か待ってんの?」


「え、いや?別に待ってないけど」


なんだ今の。少しだけ言葉に詰まった山崎がわざとらしく手を振り応えた


「…もしかして、好きな子でもできた?ストーカーみたいなことしてんの?」


「ばっ…ちげーし!するわけないだろ、そんなこと」


今、ばかって言いかけた。なんかムカつくなー山崎のくせに


「みんな言ってたよ。こんな寒い中外で突っ立って待ってるなんて、山崎に好きな子が出来たに違いないって」


言ってたよ、近藤君が。さっき私に「山崎の好きな子って誰だ」って聞いてたもん


山崎は「違う、違う」なんて否定ばかりだけど、本当に違うのかな?あんまりしつこく聞いちゃうと、変に思われちゃうかもしれないし、怒らせちゃうかもしれないし


「…好きな子出来たなら教えてよー」


「だから違うって!ほら、とっとと帰んなよ、みょうじ」


山崎は私を追い払うようにするので「じゃあ誰を待ってるの?」が聞けず、仕方がないので校門に背を向けた


そこまで否定するなら、山崎を信じてやるか


私は背中を押した山崎の元へ、回れ右をして歩み寄った



「なんだよ、しつこいなー」


戻ってきた私の顔を見て、山崎は「はぁ」と溜め息を零した

もう、そんなに呆れた顔しなくたっていいじゃん!山崎のバカ!



「はい、風邪引かないようにね」



いつか渡せたらいいなって忍ばせていた未開封のカイロ
カバンから取り出し、少し乱暴に渡せば、意外だったようで山崎は差し出したカイロをしばらく見ていた


「…あ、ありがとう。みょうじ」



返事をするのがちょっぴり照れくさくて、鼻先が赤いままの山崎を見てなにも言わずに走ってその場を後にした



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