ザキ | ナノ

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月曜日の放課後。先生は決まって保健室のベッドに寝転んでジャンプを読んでいる


「せんせ」


私の存在に気付いているはずなのに、先生はジャンプに夢中で返事をくれない


「ねー先生ってば」


頬をツンツンとつつくと、ため息も一緒に視線をくれた


「…どこのカワイ子ちゃんかと思えばお前さんか」


「カワイ子ちゃん?先生って本当にB専だったんだ」


アハハ、と笑えば上向きにするため鼻に施したテープがペロンと取れてしまった


「あ…」


テープを貼り直そうとすると、先生は面倒くさそうにジャンプを置いて、細目にするため貼った目尻のテープを剥がした


「パッチリおめめが台無しだ」


せっかく先生好みの別嬪さん施術をしてきたのに、変顔テープを全部取られてしまった
ひとまとめにしたテープを鼻糞みたいにして丸めてゴミ箱に飛ばすと、「あっちへ行け」とジェスチャー付きで追い払われた


「あーあ、先生好みに整形しちゃおっかな」


「止めとけ。男子にモテなくなるぞ」


「先生にだけモテればいいもん」


全く相手にしてくれない先生は、再び仰向けになってジャンプを読み始めた
枕元に手を置いて上から顔を覗き込むと、そーっとジャンプを下げ隙間から私を睨んだ


「何してる」


「先生を襲おうとしてます」


「処女のくせに男を襲うなんざ、さすが十代の性欲はすげーな」


「えへっ、じゃあ…」


「ちょ!やめやめやめ!」


ベッドに膝をついて上がろうとすると、先生はジャンプを放り投げて慌てて私を止めた


「あれ?」


「あれ?じゃねーよ。お前さん何考えてんだよ!俺は教師!お前さんは教え子!ここは学校!保健室!」


「絶好の場所じゃないですか」


「どこがだ!ほら、とっとと帰れ!」


保健室のドアを指差す先生を無視して、四つん這いで近寄れば「ダメだ、近づくな」と両手で阻まれた


「酷い。私、先生のこと本気なのに」


「…あのなー、お前さんはまだ若い。そのくらいの年頃の娘は自分より大人の男に憧れを抱きやすいんだよ。目を覚ませ、どうせすぐに飽きちまうよ」


先生の必死の説得をベッドの上で正座して聞いてたけれど、憧れなんかじゃないし飽きたりしない


「…おい、何目瞑ってる。俺の話聞いてなかっただろ」


「ちゅーしてくれたら今日は諦めます」


「俺は好きな奴としかしねー」


「じゃあえっちして下さい」


「俺は結婚するまでしねー」


「嘘つき!もういい」


「おーその調子だ、帰れ帰れ」


「ヤダ!やっぱ、帰んない」


「あーったく!これだからうるさいガキは嫌いなんだよ」


「じゃあ黙ってる」


「「・・・・・・・」」


床に散らばったジャンプを拾いに行き、先生は隣のベッドに胡座をかいて読み始めた


「ねー先生」


やっぱり無視を決め込む先生。後ろから近付き、背中合わせにベッドに腰掛ける


「どーして私のこと好きになってくれないの?」


「タイプじゃないから」


ハッキリ言われても別に傷付かない。だって分かってたことだもん


ベッドから降り、養護教諭の机の上にあるテープを拝借。鏡を手にし再び先生好みの不細工顔に変身すると


「懲りない奴だな」


びっくりして後ろを振り返れば小脇にジャンプを抱えた先生が呆れた顔して立っていた


「えへへ。どうですか?」


「せっかくの別嬪さんが台無しだ」


そう言ってまたまた施したテープをビリッと剥がされた


「だーかーらー、先生に…」
「シャツのボタンをちゃんと締めろ。スカートも短すぎんぞ、ガキくせーパンツが見えそうだ。化粧も香水もお前さんにはまだ早い。分かったか、みょうじ」
「…先生だってまだジャンプ読んで子どもじゃん…」


先生は何故かジャンプを私に押し付け「うるせー」と言って保健室を出て行ってしまった



あーあ、B専教師はなかなか手強いなぁ



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