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 ▼べるぜで逃走中!



※ ぶ っ と ん で ま す

※かっこいい姫ちゃんが好きな人は見ない方がいいです。







全てはこの男、姫川竜也の一言から始まった。

石矢魔高校が長期休日に入り、なにもやることがなかった姫川は何気なく普段見ないようなバラエティを見ていた。そこで彼が引かれた一つの特番。一応芸能人でそこそこ給料を貰ってる人たちが、必死に黒スーツの男たちから逃げ回っている。


「蓮井、これはなんだ」
「それは“逃走中”と言う番組でございます竜也様。いわゆる大人版の鬼ごっこで、黒スーツの“ハンター”から逃げ切った逃走者は賞金が貰えると言う番組です」
「ふーん、庶民はここまでして金稼ぐのか。大変だな」


にしても、俊足を持つハンターから逃げ惑う姿は実に滑稽である。これが普段むかついてて仕方ない石矢魔の連中だったら、更に楽しめるだろう。

―――そうだ!


「蓮井、至急やってほしい事がある」


これは暇を持て余した御曹司の遊びの記録である。




***




「どういう事なのこれえええっ!?」


そう情けない悲鳴を上げたのは自称、石矢魔の智将であり、他称、恥将である古市貴之だ。今ではすっかり後者の方が公認されている。


「うっせーな古市。ギャアギャア騒ぐな」
「ダブー」
「騒ぐだろ!!!逆になんでお前はそんな冷静なの男鹿ぁ!?俺また脱糞してケツ拭く前に拉致られたんだけど!!!尊厳再びクラッシュされたんだけど!!!!」
「古市くんって、毎回自爆ってるよねー。言わなきゃみんな気付かないのに」
「それを言うな夏目。てかなんで裸?」
「今回ばかりは古市に同感だな。なんでまた拉致られなきゃいけねーんだ。つーか乳首隠せ夏目それか死ね」
「えー、酷いな神崎くん。縛られてるのにどうやって俺殺してくれるの?」
「勝手に一人で死ねよ!!!つーかなんでそんな嬉しそうな顔なんだよっ!?」
「ぐーがー」
「寝てるんじゃねぇよ東条!!!!」


騒がしい室内にいるのは、男鹿、ベル坊、古市、神崎、夏目、城山、そして寝ている東条の人間六人と魔王一人である。皆動揺に黒い革ベルトで身体を拘束されており、夏目に至っては風呂に入っていたのだろうか、バスタオル一枚で特別に亀甲縛りを施されている。速攻で職質されるレベルだ。
これは以前、聖石矢魔とのバレーボール対決以前に拉致られた時と酷似している。が、その時と違ってメンバーが代わっていた。以前は姫川も巻き込まれていたが、今は姫川は居なくその代わりに城山が居る。新参者の彼は、少し眉をしかめたが、あくまで夏目の半裸に対する不快感からくるものだったらしい。それほどまでに今の夏目の格好はR指定をぶち抜けるほどアレらしい。


これはまたヒルダらへんの仕業かと城山を除く一同が思っていた時、部屋が暗くなりいつの間にか用意した映写機が稼働した。そこに映っていたのは。


『よう、元気か庶民共』


なぜかイケサラモードの姫川だった。横に執事と思われる男も立っている。


「姫川先輩!?」
「おい、さっさと帰らせろよ腐れメガネ」
「ダブダー!(メガネかち割って死ね)」
「そうだそうだフランスパンメガネ」
「そうだよ色メガネ」
『お前ら視力平気か?いま俺メガネ外してんの見えるか?なのにピンポイントでメガネ関連の悪口言うな!!!あと夏目のは微妙にカテゴリが違う!!!てか乳首隠せそれか死ね!!!』


一通りツッコミを入れてからごほん、とお決まりの咳払いをする。だがかっこつけた為喉にへんな風に入り、『ごほっげほぉ!!うぇっ!!おうぇっ!!』と三分くらい噎せた。一同は涙目になった姫川に絶対零度の視線を送る。


『……よう、元気か庶民共。お前らをここに集めたのは他でもない、』
「あ、一人で仕切り直しやがった。これノーカットだってのに」
『うるせぇ!!そんなもん姫川レーベルの力でなんとでもならぁ!!!』


まぁ当然の事ながら実際どうにもなりませんでした。イケメンの恥は世界中の男たちにとって格好の餌なのです。


『お前らをここに集めたのは他でもない……今からお前らには“逃走中”に参加してもらう』
「はぁぁぁぁぁっ!?」
「海に沈んでそのふやけたヘチマ魚の餌にされればいいのに」
『だから今はリーゼントじゃねぇっつってんだろおおお!!!!』


余りにもぞんざいな扱いに、さすがの竜也様も泣きそうだ。すかさず横に控えていた蓮井がバトンタッチをする。姫川の敵は蓮井の敵。縛られた一同を見る視線はまるでモンスターペアレントが教師に向けるそれだ。


「黙れ庶民共。竜也様のリーゼントはヘチマなんかではない。みずみずしいズッキーニだ」
「そこどうでも良くね?」
「喜べ。これから貴様たちは“竜也様の暇潰し”のために働いてもらう。光栄に思いながら無様に足掻け愚民共。そして私の靴を舐めろ」
「そこ普通“竜也様の靴を舐めろ”じゃね!?いやどちらにしてもいやだけどっ!!!」
「貴様らには先程竜也様がおっしゃったように“逃走中”に参加してもらう。もちろん企画からプロデュース全てが姫川レーベルによるものだ。安心しろ、貴様ら全員生命保険に加入しておいた」
「たかが暇つぶしに命までかけるのかよふざけんな!!!そこで体育座りしてる社長出しやがれ!!!」


神崎の抗議により姫川が再び画面に向かう。背後で蓮井が『頑張れ竜也様っ!』と応援していた。それに文字通り背中を押されたのか、姫川は堂々と概要を述べていく。ぶっちゃけ話が全然進まないから早くしてほしい。


「お前らにもメリットはある。本家の“逃走中”と同じで逃げ切ればそれなりの賞金はやる」
「賞金っ!?」


賞金、と言う言葉で今まで寝ていた東条が飛び起きた。周りはみんな引いているが、その頭は生活費でいっぱいだ。


「そうだ。制限時間が90分くらいだから一秒300円として……何円だ蓮井?」
「いや、予め計算しとけよ」
「換算すると162万円です竜也様」
「よし、じゃあそれで行くぞ」
「古市、162万円でコロッケいくつ買えるんだ?」
「なんでお前はコロッケ換算なの?頭もカラッと揚がってんの?とりあえず一生コロッケ食べれるんじゃねーの?(知らないけど)」
「い、一生だと…!?」
「162万円あったら夕飯の海苔弁を鮭弁にグレードアップできる…!!」
「いやお前はもうちょっと高望みしろ」


どうやら石矢魔喧嘩大好きコンビはコロッケと鮭弁にテンションが上がりまくったようで、ゲームに乗り気である。夏目もアルバイトをしている身であり、城山も五人兄弟の長男であるためお金は欲しい。しかしそんな四人とは裏腹に、やくざの息子でありそれなりにお金がある神崎と、お金より自分の身の方が大事な古市は乗り気ではない。正直裏がありそうでならないのだ。


「ケッ、俺はんなくだらねーことやってら…」
『いいのか神崎。これは学校対抗のゲーム、つまり…石矢魔の威厳を掛けてるんだぞ?』
「学校対抗…だと…」
『言い忘れていたが今回、ハンター役として他校のやつらに協力して貰っている。お前らが負けたら賞金はやつらに渡すし、なによりたかがゲームとは言え石矢魔が他校のやつらに負ける訳にはいかないだろ…?』
「ぐっ……テメェ、きたねぇぞ…!!!」
『まぁ俺にとっちゃお前一人が尻尾巻いて逃げたって痛くも痒くもねぇけどな。けどそんなことしたら“石矢魔東邦神姫の神崎一(笑)”になっちまうだろうけどな(笑)』
「だぁぁああああぁぁあっ!!!!!おーし、やってやろうじゃねぇーか腐れヘチマァァァァ!!!!」


ここはさすが、姫川である。こと神崎を怒らせることに対しては天才的にうまい。と言うより、神崎の堪忍袋が極端に細くてほぼ年中無休でぶち切れていると言うのもあるが。


「え、ちょっ、神崎先輩まで!?」


しかしこれにより完全アウェイとなったのが古市だ。正直、金も石矢魔の威厳も古市に取ってはどうでもいい。彼が望むのはただ一つ、平穏な日常のみであ――…


「ついでに別室では烈怒帝留のやつらも逃走者として準備してる。これを気に甘酸っぱい青春の扉を開くことも出来るかもな」
「よおぉぉぉおおおしっ!!!!!まってろ俺の青春んんんん!!!!」


…………かくして、様々な欲に溺れた男たちは、これから待ち受けるゲームに無謀にも臨むこととなった。







――――――――――――


姫ちゃんのせいで全く先に進めません。とりあえず書ききれませんでしたが、参加者はこいつらに加えて烈怒帝留のお姉さまたちです。
ハンターの方は六騎聖や悪魔組やらをいっぱい出したいと思っています。予定は未定です。

応援コメント等を頂けると管理人と姫ちゃんが泣いて喜びます(笑)








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