FW・B


君のためなら!

2009/08/24 06:41


※伊食満もどき
腐れ下ネタです注意してね



「そろそろ、卒業しないとヤバいよなぁ」
 ある晴れた閑かな昼、ハンサム担当で名の知られる善法寺伊作の同窓である、食満留三郎こと用具委員会委員長のペドフィリアは言い放ったのだ。

 僕はごろりと横になり、留三郎の足に頭をのせた。
「留さん、童貞だったの!」
「声がでかいし、俺は食満留三郎が本称であって幼児愛好でもない。そして自分をハンサムとか言うなよ」
 少し頬を染め、常でさえ釣り上がった眼尻を鋭利にさせた。熱血漢とも称される彼は、多少恥じらっているらしかった。

「うわ、照れてる。気持ち悪い。本当に童貞なんだね」
 ぐびり、ぐび。僕は留三郎の持っていた茶で喉を潤した。ぬるくて酷く不味かった。
 不味いと言って、元あった留三郎の手の中に湯飲みを戻す。呆れたように胡坐を組んでいた足を伸ばした彼は、その所為で支えを失い不安定となった頭の元結に触れてきた。
「そういう伊作はいつ捨てたんだ?」
 きゅつと元結を弄る彼の手指はささくれだっていて、そんな指で女の子が扱える分けないだろうにねと、失笑が漏れてしまう。
「留さんとは違って、当の昔にね。町で有名な看板娘の子だったよ。ああ、艶のある黒髪と白い肌、薫立つほどの美しさだったよ」
 羨ましかろうと、僕の脳天を過ぎる右腕を掴んで目の前に持ってくる。爪と指の接合部に誕生している白色の刺を、懐に入れていたピンサで摘みちぎった。
 たった五本分しかないはずの渓谷に十三もの親不孝。冬場でもないのに、さすがに手荒れが酷過ぎはしないか。こんな乱雑な手で、あの柔らかくて柔らかい女の玉肌に触れたいと言い放つのだから笑い者だ。
「そうか、伊作は早熟だったか」
 甘皮を引き剥がされて疼痛を引き起こしているそれを庇うように、左の手で覆い隠す。左の指も同じように荒れ、なおかつ釘やら何やらによっての傷跡が酷く目を引いた。
「早熟というか、君が遅いんじゃあないか。六年で操を守っているのなんて、片手で足りる程度だろうよ」
 まあ、あのギンギンだのフェアリーだのの床事情は知ったことではないけれど。僕が言い捨ててみれば、彼は眉を下げて苦笑いをしていた。

「仙蔵にな、廓への潜入任務を手伝って欲しいと言われたんだ」
 少し歪めた口の端から漏れる様に、事の顛末を語り出した留三郎は僕に左手を差し伸べた。よく分かっているじゃないか。
 再びピンサで除去作業を始める。

「でな、俺は仙蔵扮する美女を店側に売る役を担うんだが、あいつ『食満は女を語るには、生娘臭い』だなんて言いやがってよ。俺は男だと言うに、なあ」
 生娘は酷いと僕も思うね、心の中で留三郎に同情した。だって彼には膜も男を受け入れる器官さえ存在しないのだもの。仙蔵はどのような意味で『生娘』と称したのか。判断に困る問題であった。
「で、童貞を卒業したくなった訳だ?」
「直球過ぎる」
 苦虫を噛み潰したような眉根にピンサを突き立てたくなる衝動をこらえ、彼の血肉朿の除去に集中した。ああ、こんなに大きな肉朿、痛かったろうに。

「そんな留三郎の都合で抱かれる女は可哀想だね」
 愉快愉快と笑い飛ばす様にすれば、彼は俯いてしまった。初だこと!
「どうせ付き合う訳じゃないんだろう。つまり留三郎は、可愛い可愛い女の子にその粗チンぶち込みたいんだろ?すればいいじゃないか」
 ねえ。俯いている彼の表情なんて、下から仰ぎ見ている僕にはバレバレなのに。
「伊作」
 なぁに、留さん。
「俺は我が儘なのかな」
 吊り気味な目尻に朱が差しているのは羞恥なのかはたまた。僕の知る限り、彼の涙腺の堤防は果てしなく脆いということだけで。悲しそうに顔を歪める前に泣いてしまうのだから、彼こそ忍に向いていないじゃないか。一度文次郎あたりに言ってみたら「あの冷血男が泣くわけないだろう」って返されてしまったけどね、ああ思考が飛んでしまう。
「留さん、あのね」
 僕は飛頭蛮よりも自由自在な己の思考をまとめ、彼の頬へ手を伸ばそうとした。
「ごめん、ちょっと顔洗ってくる」
 けれどその手は空を切り、留三郎は僕の頭を畳に下ろし、部屋を後にした。やはり泣きそうだったのか。そして井戸で独り泣くのか、 居もしない空想上の女のために。彼はとても泣き虫なのだ。

「僕は知ってるのにね」
 お茶が温いのは猫舌な僕に合わせてだとか、手荒れは学園の備品を修理する際に油脂がつかない様に、何度も手を洗っているからだとか。他にもどのように彼は泣くのだとか。
「留さんは優しいから」
 そんなに誰かを抱きたいなら僕を使えばいいのにね、喉に引っ掛かる音を細く細く吐き出した。彼はいつ気付くのだろうか。




 後日、彼はめそめそと泣きながら部屋に戻ってきた。僕が慌てて問いただしてみれば、仙蔵を売り渡した後ふらふらと花街を見学していたら、お店のお姉様方にひん剥かれて犯されかかったのだと。そして這う這うの体で逃げて来たらしい。

 彼の卒業はいつになるのやら。


君のためなら!
「女って怖い」
「留さんが僕に処女くれるなら、童貞捨てさせてあげるよ」
「え、」



END
こんな下ネタで長々と引っ張るとは、思いもしなかった^^
今までで最長(笑)
仙蔵・小平太は非童貞臭がするって主張と、泣き虫食満を書きたかっただけなんですorz
伊食満←仙文は何かしらの情熱がほとばしる。



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