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月詠生誕祭*2015


 その日、月詠はとても不機嫌だった。年に一度の誕生日なのに、だ。

 もちろん日輪と晴太には朝から盛大に祝ってもらったし、百華の部下達はこの日のために月詠の顔の半分以上もあるケーキを作ってくれた(1人ではとても食べ切ることができないので結局はみんなで食べたのだが)

 自分の大切な人々から誕生日を祝ってもらうのはとても嬉しいことで、ハッピーバースデーの歌を歌ってくれる大きな声や「産まれてきてくれてありがとうございます」という言葉を耳にする度に涙で目が滲んでしまったものだ。

 幼い頃に吉原に売られ親の顔もわからない。誕生日だってもしかしたら今日じゃないのかもしれない。自分の生まれた意味とはなんなのだろうと考えた日も沢山あった。
 それでもこうやって自分を必要としてくれる人達がいる。支えてくれる人達がいる。
 月詠はそれだけで幸せだった。

ーーーだが。

肝心な人が、一向に姿を現さない。

「銀時の奴…」

月詠は恨みがましく呟く。

 一度女を捨てた身ではあるが、次々に溢れ出る乙女心を押し殺せるほど月詠は器用ではない。
 そんな自分にも心底嫌気がさして、さっきまでの高揚した気分が綺麗さっぱり何処かへ吹き飛んでしまった。

「なんでわっちがあんな奴に振り回されなきゃならんのじゃ。日輪も晴太も可愛い部下達も盛大に祝ってくれたというのに…どうして…」

 少し期待していた自分がいけなかったのかもしれない。

 自分は銀時のことが好きだ。そして、銀時も自分のことを好きだと言ってくれた。…それがつい先週の事。
 …でも、それだけだ。

 恋愛としての「好き」なのか、仲間としての「好き」なのかを確かめる前に彼は逃げるように去ってしまった。
 そして、それ以来会っていない。

「よくわからない男じゃな…」

 月詠は煙管を吸いながら夜空を見上げる。…今夜は綺麗な満月だった。

「もうあんな奴は知らぬ」

 期待していた自分がものすごく惨めに思えてくる。今頃はきっと、間抜け顔で腹をボリボリ掻きながら爆睡しているのだろう。

 月詠は時計を見やった。もうすぐ日付が変わり、誕生日が終わろうとしていた。

 明日も朝から仕事があるし、これ以上考えるのは時間の無駄。もう寝よう…

そう布団に入りかけた時ーーー。

…ふと、スッと襖を開く音がした。

「おい、まだ寝るなよ」
「っ…銀時…?!」

 なんでこんな時間に来るのか。あまりにも遅くないか。今日は一体何をしてたのか。
 …わっちがこの一週間どんな気持ちでいたのか、主はわかっておるのかーーー。
 言いたい事が沢山あるのに、驚きのあまり全く出て来ない。…酷くもどかしい。

「悪りぃ…その、遅くなって」
「…こんな夜中に何の用じゃ。夜這いでもしに来たのか?」

 うーん、半分正解かも?そうふざけて言う銀時は、なにやら袖の袂から取り出した。

「お前、今日誕生日だろ。これやるよ。…おっと、あと2分で終わっちまうな」

 渡されたのは小さな箱。
中にはーーー、綺麗な菫色の石がはめ込まれた耳飾りが入っていた。

「な…なんで…、てっきり忘れていたのだと…」
「そんなことあるか。ホラ、誰だって誕生日の最初は誰かに祝ってもらえるもんだろ?よく日付が変わった瞬間におめでとーとか祝われたりすんじゃん。だから俺はお前の誕生日の一番最後に祝う奴になろうと思ってさ」

なんか特別感増す感じしない?

そう得意げな様子の銀時を思わず睨む。

「あれ、お気に召さなかった?」
「そ、そんな事は…。でも、本当に忘れられたかと思ったんじゃ…それに…一週間ずっと音沙汰なかったから…わっちにはもう興味がないのかと…」

途端に銀時が焦り出す。

「あ〜〜先週のはその〜〜」
「…」
「銀さんちょーかっこ悪かったよね!ごめん!あれはーーー」
「あの告白を、わっちの都合よく解釈してもよいか?」
「…?」
「わっちは主が好きでありんす」
「………へ?」
「だから…だから主は、わっちのことを恋愛として好きなのかをちゃんと教えてくれ」

 言った。勇気を出して言ったぞ。恐る恐る前を見ると、銀時の最大級の間抜け面があった。…相変わらずの可笑しな顔だが、今はこの顔を見るだけで胸が温かく、幸せな気分になる。…もう自分は既に重症なのだろう。

思わずクスクス笑うと、今度は逆に睨まれる。

「…これ、付けてやる」

 そう言って耳飾りを付ける銀時の手つきはひどく優しい。

そして顔を寄せられーーー。

「俺も同じ気持ちだよ」

 囁かれた言葉は酷く甘く響いて、月詠の心に染み込んでいった。

−−−−−−−

(おまけ)

「これは新八からでしょー、これは神楽からでしょー、これはよくわからねぇが定春から。他にも預かってきたもんがいっぱいあるぞ」
「こんなにたくさん…後でしっかりとお礼をせんといかんな」
「ねぇ、俺には?俺にはお礼くれないの?」
「?何かして欲しいことがあるのか?」
「そりゃもうせっかく両想いになったんだし、ヤる事と言えばあれしかないじゃん。しかも今日は満月だから性欲がーーー」

………

「…このっ!変態がーーーーっ!」


***

月詠、誕生日おめでとう!!!!大好き!!(ちょっとだけ遅刻した…ごめんねつっきー…)アニメ4期のハニーとダーリン呼びがめちゃくちゃ楽しみです。つっきー可愛い本当可愛い。しょうもないおまけ付きですが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました!(笑)

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