バレンタイン*2015
2月14日。
年に一度の女の子、一世一代の大勝負の日。チョコレートにまみれる街中。女性が男性に想いを告げる、甘い甘い1日だ。
そんな日を迎えるにあたって、アニは約3時間ずっと台所に立っていた。BGMはもちろんパフュームのチョコレイト・ディスコ。
計算してる女の子
期待してる男の子
ときめいてる女の子
気にしないふり男の子ーーー
「そんなものなのかねぇ…」
携帯から流れる音楽を聴きながらアニはため息をつく。
友チョコや義理チョコなら何回も作ったことがあるアニだが、本命チョコを作るのは今回が初めてだった。
それも押しの強い親友たちに叱咤されてしぶしぶ作っているようなもので。昨日のミーナとミカサとの会話が思い出される。
ーーーーーーー
「えっ?!バレンタインなのに何も作らないの?!」
「うん、そういうの面倒だし」
「なによアニ!せっかく片想いしてる人は告白しましょう〜っていう日が設けられてるのに、このチャンスを無駄にするつもり?!」
「そんなの企業に踊らされてるだけだろ…大体そう言うあんたはマルコに渡すのかい」
「もちろん渡すに決まってるわ!このミーナ様、気合い入れちゃうんだからねっ!」
ミーナは力強くガッツポーズをする。
「…アニ、ミーナの言う通り。アルミンには、絶対に渡したほうがいい。だってアルミンはアニの事がーーー」
「っ、わーーーーっ!!!」
なにやら焦った様子のミーナがものすごいスピードでミカサの口を塞いだ。…何、いまの動き。食べ物に食らいつくサシャ並みの速さだったんだけど。
「これは本人達の問題よ!明日アニが告白して、アルミンは絶対にOKを出す。だからミカサから言っちゃダメ!」
「そうだった…私は迂闊だった。ごめんなさい」
なにやらコソコソと話す2人がバッとこちらを向く。
「?」
幸い、今の会話はアニには聞こえていなかった。
「とにかく!絶対に作ってくるんだよ!応援してるからね、アニ!」
「わたしも応援している」
ーーーーーーー
…そんなこんなで、結局作る羽目になってしまったのだ。
告白なんて、そんなのは永遠に無関係だと思っていた。今まで好きな人などできたことがない。アルミンが初恋の人だ。しかも告白するつもりなど1ミリもなかった。
…だって、そんなことしたら今の関係が変わってしまうかもしれない。気まずくなってしまったら、もう話してくれないかも…?そんな事になるのなら友達のままがいい。
それなのに。
「ミーナとミカサには敵わないんだよなぁ…」
ようやく形になってきたお菓子たちを見やる。
「うまくいけばいいんだけど…」
拭いきれない不安を胸に、アニは本日2度目のため息をついた。
ーーーーーーー
お願い想いが届くようにね
とっても心こめた甘いの
お願い想いが届くといいな
対決の日が来たーーー
ーーーーーーー
2月14日。
ついにバレンタインデーが訪れてしまった。…受け取ってくれるだろうか。美味しいと思ってくれるだろうか。告白をOKしてもらえるだろうか。気まずくなったり、しないだろうか。様々な不安がアニに襲いかかる。
…大丈夫。味は昨日ライナーとベルトルトに見てもらったし。何も問題はないはずだ。大丈夫。
心臓の音を抑えようとしてもドキドキが加速して止まらない。アニは深呼吸を一つし、学校へ向かった。
ーーーーーーー
…しかしこのあと。
アニは、この不安が綺麗さっぱり、全て杞憂に終わることを唐突に知ることとなる。
……
………
「やー、ついにアニもリア充の仲間入りかぁ〜!感慨深いね…。というか、まさかアルミンの方から『アニ、バレンタインデーのチョコレートを僕に下さい!』って言ってくるなんてねぇ〜」
「アルミンは、ああ見えてとても男らしい」
「イヤ、男らしいってより図々しいの方が合ってるんじゃないの…あれ…」
「まぁまぁ、いいじゃないの!私もマルコとうまくいったことだし、ミカサもエレンと進展があったみたいだし?」
「これから恋バナがたくさんできる」
そう微笑むミカサがあまりにも幸せそうだったので、アニもつられて頬を緩めた。
***
アルミンよりもミーナとミカサが出張ってる件。この2人はタイプが違うけれど、どちらもアニの親友として上手く付き合っていけるんじゃないかな〜と思ってます(確証はない)そんなこんなでハッピーバレンタイ〜ン!( ´ ▽ ` ) タイトルはもちろんパフュームのあの有名な曲から。
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