の日



前戯を終えていざ挿入しようとした、その時だった。

「今日は……俺が自分で動く、から……!」
「旭……?」
「んっ……」

息子の旭はそう言って私の体を仰向けに押し倒すと、上にまたがり、私のモノを自身に挿入しながらゆっくりと腰を落とした。

「あんんっ……んっ!」
「はっ……旭っ……!」
「お父さん、名前っ……俺の名前、いっぱい呼んで……!」
「ぁっ、旭っ……旭っ……!」

私に名前を呼ばれるたび、頬を赤く染めてゾクゾクと震える旭の体。
うっとりとした顔を覗かせながら全身を使って嬉しがるその姿に、私の股間がジンと熱くなる。

「旭っ……!」
「んんっ……お父さんっ、キスしてい……? ぁんぅっ、ちゅーしたい、お父さんっ……!」
「ああ、いいよ……。旭、どうしたの? いつも可愛いけど、今日の旭はまた一段と可愛いね……」
「やんっ……うれしい……」

目を細めて満足げに笑う旭は、とても艶やかで色っぽい。

見事志望校に合格を果たし、晴れて大学生となった旭。
もう『子供』という一言で片付けていい年齢ではなくなり、高校生の時よりも大人の色気が増してきたように思う。

最近はバイトも始めたらしい。正直反対だったが、大人になった旭をそこまで束縛しようとは思わない。
こちらには家事などで時間を奪ってしまっていた引け目がある。旭にはもっと自由に時間を使ってもらいたかった。

しかし、バイトを始めた今でも旭は家事を完璧にこなしている。しかも本人はそれを苦に思っていないというのだ。本当に非の打ち所がない。

「……んっ、ちゅっ、んんっ」

私にまたがった旭が上半身を倒して私の体にピッタリと重なる。それから、宣言通りに私へとキスを降らせた。

「ふぁっ、んっ……はぁっ、お父さん、好き……お父さん大好き──んっ、好き、好き……!」
「そんなに言われたら私も……ふふっ、さすがに照れるな」

一途で健気で愛らしい息子の姿に思わず照れ笑いを浮かべてしまう。
私の恋人はどうしてこんなにも可愛いのだろう。愛しくて仕方がない。

「あんっ、お父さんぎゅうってして……お願いっ……」
「抱きしめてほしいの?」
「うんっ……! お父さんにぎゅうって抱きしめてほしいの……!」
「いいよ」

そのいじらしいおねだりを聞いて、私は上に乗って体を倒したままの旭を両腕で包み込んだ。
瞬間、はぁっ……と熱を含んだ震えるような吐息が私の顔にかかる。同時に、私のモノを咥え込んでいる旭の尻穴もきゅうっと満足げに締まった。

その締めつけがあまりにも刺激的だったものだから、つい私は我慢ならずに腰を振って下から旭を突き上げてしまった。

「──ッ! ひゃぁんっ……!!」
「ふっ……旭のお尻の穴もきゅうきゅう締めつけてきて、旭はどこもかしこも本当に甘えん坊だね」
「やっ、やあぁんっ……お父さんだめぇっ、動いちゃ、だめっ……!」
「どうして?」
「今日は俺がっ……俺がお父さんを気持ちよくしたいのにぃ……!」
「私はもう十分気持ちいいよ……。お願いだ、気持ちいい旭のお尻の中をもっと可愛がらせてくれ……」
「ふぁっ……お父さぁんっ……」

少しだけ恨むような視線を向けてくる旭だったが、それはすぐに快感に蕩けたものに変わる。
中を突き上げられるごとに私の胸の上でピクピクと小刻みに跳ねる旭の体。抱きしめた腕から、息子の動き一つ一つが細かく伝わってくる。

「あぁっ、お父さんキモチいいっ……! ひゃぅっ……お父さんっ、お尻気持ちいい……!」
「そうか……私もすごく、気持ちいい……!」
「やっ、あぁんっ、うれしい……!」

はぁはぁとこもった息を漏らしながら、旭は私の首筋に頭を擦りつけて猫のように甘えてくる。
恍惚としたその艶かしい瞳に胸を射られてしまう。

「旭ッ……!」
「ふぁっ、ぁんッ、あんっ……!」
「旭、可愛い……!」
「──あぁぁんっ!」

途切れることのない旭の気持ち良さそうな喘ぎ。鼻にかかった甘ったるい声がたまらない。

「ひっ、ゃんっ、お父さぁんっ……! お父さんのちんちん気持ちよくてッ……勝手に腰が浮いちゃうっ……」
「知ってるよ。さっきから腰ゆらゆらさせて気持ちよさそうにしていただろう……? もしかして今まで気づいてなかったのかな」
「や……言わないで……」
「ふふ、素直で可愛いって言いたかったんだよ。旭は本当に可愛くって、褒める言葉が追いつかないくらいだ」
「もう……んっ、ふふ……親ばかだなぁ……」
「旭は自慢の息子だよ」

親馬鹿な自覚はある。それがいきすぎて、私は息子に恋愛感情すら抱いてしまったのだから。
そして、こんな風に体を繋げるまでになってしまった。

「……好きだよ、旭」

未だ旭の体を抱きしめたまま、私はしっかりと目を合わせて言い聞かせるように愛を囁く。すると、旭もぎゅうと私にしがみついて。

「うん……俺もファザコンだから──」

笑う。

「お父さんが世界で一番、好き……」

その曇り一つない笑顔。生涯、側で見守っていきたい。




「──父さん、気持ちよかった?」

仰向けになった私の上に旭が覆いかぶさる。行為を終えた後は、裸のままベッドに寝転がって睦み合うのが私たちのお決まりだった。

「ああ、旭とのセックスは最高に気持ちいいよ。私には旭さえいてくれればそれでいい」
「ふふっ」

私の言葉を聞いた旭はにっこりと微笑む。それから、なぜか少しだけ体をずらしてベッド下へと手を突っ込んだ。

「あのね、父さん……今年もちゃんとプレゼントあるんだ。もらってね」
「え?」

ベッド下から、前もって隠しておいたのだろう小さな正方形の包みを取り出す旭。

「これ、プレゼント。父さんにはどれが似合うかなっていっぱい迷ったんだ。喜んでもらえると嬉しい」
「旭……?」

急にプレゼントとは……今日はなにか特別な日だっただろうか?

「父さん、いつもありがとう。大好き」
「どうした? そんな改まって……」
「今日、なんの日か忘れちゃった?」

そう言われて、私は日付けを思い返してみる。
ああ、そういえば今日は──。

「父の日か」

今やっとそのことに気づいて、私は息子と目線を合わせて微笑む。

「だから、『今日は自分から動く』なんて言い出したんだね」
「うん……。でも結局俺の方が父さんに気持ちよくしてもらっちゃった」
「そんなことないよ。……仮にそうだったとしても、それでいいじゃないか。一緒に気持ちよくなれたほうが楽しいだろう?」
「そっか……うん、そうだね」

そうして、また私の上に乗って寝転がる旭。私の手に指を絡ませて、ぎゅっと何度も握りこんでくる。
なんて可愛らしい甘え方だろうか。

「ありがとう。その気持ちだけでも飛び上がるくらい幸せだよ」

私は、旭に握られた手を口元まで持ってゆき、愛しい彼の手の甲に口付けをした。

「プレゼントも本当に嬉しい。旭は毎年父の日にはプレゼントをくれてたね」
「結構昔にあげたネクタイ、まだ使ってくれてるよね。俺、父さんがそのネクタイつけてくれる日は嬉しくって一日中頭の中がふわふわしてた」
「旭に貰ったものは勿体なくてなかなか使えなかったんだ。私が今使ってる自宅用のキーケースも旭がくれたものだよね」
「うん。大事に使ってくれてるんだーって分かって……嬉しい」

私はそんな昔から旭に愛されていたのだと知って、胸に熱いものが込み上げてくる。
この溜まりに溜まった愛おしさを発散するために旭の体を抱いても、その都度更に愛が深まってしまってどうしようもない。

「ねえ旭、プレゼント開けてみてもいいかな」
「うん、いいよ」

照れたような、けれどもどこか得意げな旭の表情。包装紙を丁寧に剥がしてゆくと、シンプルな小箱が一つ。その中にまた、シックなケース。

「これは……」
「これなら父さんの仕事の邪魔にもならないし、気に入ってくれたらいつでもつけてもらえるでしょ」
「ああ……嬉しいよ、旭。ありがとう」

ケースの中に入っていたのは、シルバーの輝きを放つ品のいい腕時計。このシンプルで美しいデザインは、きっとどんな仕事着にも似合うだろう。

「旭は本当にセンスがいいね。明日からはこの時計を使わせてもらうよ」
「本当? 無理してない?」
「無理なんてあるものか。──ああそうだ、私の使い古したものでよければ前の時計を旭にあげようか」
「も、もらえないよっ……。だって父さんのしてる時計めちゃくちゃ高いやつじゃんっ! 正直俺の時計なんてそれに比べたら安っぽいものだし……本当に時計でいいのかなってギリギリまで悩んでたんだから……」
「遠慮しないでいい。私には値段なんかよりももっと価値のある旭の時計があるんだから」
「父さん……」

明日、旭に貰った腕時計を身につけた私の姿を見てもらおう。そして、ちょっとわざとらしい素振りで『似合うかな?』って聞いてみよう。
そうしたらきっと、旭は照れて顔を赤くしながらも私を褒めてくれるに違いない。

恋人と毎日を共にできる日々は、幸せで満ち足りている。

──旭が成人したその日には、指輪をプレゼントするつもりだ。


 了
(2012.06.17)


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