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●とある絶望のおはなし1(人外帝人と年下シズちゃん)2012.10.08(初出:2011.11.06)
ばけもの、とそう呼ばれることにも、そう呼ばれて怖れられ罵られることにも、もう慣れた。
と言うかあまりにも慣れすぎて、とうの昔にそんな言葉程度では何とも思わなくなってしまった。
(…ホント、無感動になっちゃったよなあ……)
この変化が自分にとって歓迎すべきことだったのかそうでなかったのかは、正直帝人には分からない。
けれど、そう思うようになってから(思えるように、かも知れないが)は確実に、ずい分と生き易くなったように帝人は思う。
だから、変化は帝人にとって、たぶん悪いことではなかったのだ。
だから帝人がその子供に声を掛けてみる気になったのは、丸っきりの気まぐれだった。
その日もぼんやりとふらふらしていた帝人の視線の先で、学校帰りなのだろうか、とぼとぼと(というふうに帝人には見えた)一人で歩く子供を追い抜き際に、やはり同じ年頃の子供が投げた「化け物」と言う言葉に、どうも子供は切れたらしい。
感情の昂りのままにそのいじめっ子(…というやつなのかもしれなかったが、彼は今割に合わない程の報いを受けさせられているようだ)をむんずっと引っ捕まえて、そのままブンブンと振り回している、
(あ……今骨折れたっぽい)
ひどく傷ついた目をした、一人の子供。
ずい分と寂しげな、人恋しげなカオをしている、独りの子供。
(別に……気にすることないと思うんだけどなあ……)
だなんて子供のヤンチャを眺めながら帝人は呑気に思うのだけれど、でもまああの子供からしたら、それは大した問題なのかもしれないし。
と帝人は、とりあえず子供が満足するまで、放っておくことにした。
…因みに引っ捕まえられている方の子供については、あっさりさっくりスルーである。
(まあ……自業自得だしねえ……)
(あ、漸く終わった……かな?)
ひととおり暴れ倒してやっと電池が切れたのか、子供はその場に膝をついて、ぜえぜえと荒い息を漏らしている。成長途中の身体が子供の感情に追いつかないのか、子供は骨も折っていたことだし、もしかしたら漸く痛みを思い出したのかも知れない。
(でも……ま、骨折程度じゃ別に死ぬってわけでもないしね)
どうせそのうち子供の親が気づいてどうにかするのだろうし、とそれにはあっさりスルーを決めて、スタスタと帝人は子供に近づいた。