○バ.サ.ラろぐ・5(佐助とちっちゃい弁丸様) | ナノ
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●佐 助とちっちゃい弁 丸 様2010.08.21
「わっ!」
転びかけた腕を引っ張って、手を繋ぎ直してやった。
「あーあー…もう・・・・大丈夫、弁 丸 様?」
気をつけてよね、と眉をひそめると、うむ! という元気のいい返事が返ってくる。
「もうっ・・・、」
返事だけは上等だ。
だがこの元気の(少しばかり)よすぎるきらいのある子どもが、どうせまた同じことを繰り返すのは、正直言って目に見えている。
「・・・・ハァ、」
佐 助はひとつため息を吐いてから、子どもの手を握る力を強めてやった。
ら、なにが嬉しいのか子どもの顔が途端にパァァッと輝く。
「! さしゅけ!」
「ん〜?」
「さしゅけ!」
「ん〜…なあに、弁 丸 様?」
―――今日は、少し遠出をした。
とは言っても所詮は弁 丸の足に合わせた距離なので、たかが知れていると言えばそうなのであるが、
「さしゅけ!」
だが朝から弁 丸はご機嫌で、今もって弁 丸はご機嫌だ。
「ん〜? だから何よ、弁 丸 様?」
佐 助と繋いだ方の手をぶんぶん振りながら、飛び跳ねるように歩いている。
「さしゅけ!」
「あーハイハイ。わかったから弁 丸 様…」
ちゃんと歩いてよ、とぐらりとよろめいた肩を、慌てて佐 助は支えてやる。
「わあっ!?」
「あー…ホラホラ。言わんこっちゃない」
「うむ! しゅまぬなさしゅけ!」
「いいえぇ」
どういたしまして、と片目を眇て笑ってやれば、ぐりん、と佐 助を見上げた顔が、尚いっそう輝いて、(―――まるで、)
「…もうっ、ホント弁 丸 様ってば・・・返事だけはいいんだから・・・・」
―――太陽のようだ、と佐 助は思った。