アクセス制限 ○バ.サ.ラろぐ・2(佐と幸でだてさな) | ナノ

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●佐 助と幸 村(春のだてさな・2)
2010.04.24


「はい、ダーンナ」

一段落つけて鍛練の手を休めたところで、脇からひょい、と差し出された手拭いを、礼を言って受け取った。

「うむ、済まぬな佐 助」
「いいっていいって。それよりもさぁ旦那、早く汗拭いちゃってよね〜。まだまだ寒い日もあるんだからさ、冷えて風邪でも引いたら大変だよ〜?…どうもさ、なんだか天気の方も…今年は色々とおかしいみたいだからね。・・・・それに、」

今日も、すっごく寒いしねぇ―――とまるで冬のさ中のようにどんよりと雲った空を見上げる佐 助につられて、渡された手拭いで滝のように流れる汗を拭き取りながら、幸 村もふ、と天を仰ぐと、今正に、葉桜に変わりつつある桜の姿が目に入る。

「うむ、・・・・そうだな」
「せっかくの春だってーのに、これじゃあさ・・・・コイツも、」

浮かばれないよねぇ、だなんて桜の幹をぽんぽんと叩きながら言う佐 助に、うむ、と幸 村が頷き返すと、「あれれ…なーんかダンナってばさ、妙に真面目な顔しちゃってない?…何か、ヘーンなものでも食べちゃった?」と茶化された。


「佐 助!」
「アッハハハ、ごっめんごめんー・・・・でもさぁ、旦那、」

今年はさ、ホント色々と…おっかしいよねぇ―――とわざとのんびりと響かせたのだろう声で語散るように呟く佐 助に、うむ、と幸 村もまた頷いて、

「大変だよねぇ」

どこかのんびり聞こえる声に、うむ、と重ねて頷きながら、今頃は田畑に精を出しているのだろう城下の民に、幸 村は思いを馳せる。
春の始まりの作物にとっては大事な時期だというのに肝心の天候がこの有り様で、民達と同様に、兄が顔を曇らせているのも、幸 村とて知っている。


「…うむ。とにかくこれ以上は・・・・もうなにもないといいのだがな・・・・」



はらはらと、舞い散る桜吹雪の下、手を差し出すと、手のひらに、薄桃色の小さな花弁が落ちてくる。
…そうして、

「そうだねぇ」

返される相槌に、うむ、と幸 村は頷きながら、『…ま、』

  『残念だが、今回は仕方がねぇ・・・・じゃあな、幸 村?』

see you again―――と幸 村にはよく分からぬ異国の言葉を残して行った、今は遠い空の下に居るだろう御仁に、
…この信 州の、幸 村の故郷の花を、幸 村と共に見たかった、と言った人に、幸 村は、(…できれば、)

(青い、空の下で…政 宗殿にも、これを、お見せしたかった・・・・)


ふ、とひとり―――思いを馳せる。

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