Undecided



ジェイドとメルフィ 3

 それでも。

「……ぁっ!」
 突然、ものすごい勢いで指を抜かれ、激しい排泄感にメルフィは呻いた。
 そのまま、ジェイドの腕がメルフィの背中に回され、強く抱きしめられる。
 最初に抱きしめられたのよりもずっと強く。
「お前は、俺が遊びでお前を抱いていると思っているのか…!」
 怒りを含んだ声に、すくみ上がる。
 それでも、メルフィはジェイドの首に回した腕を外さなかった。
「あなたは、英雄です。……僕なんか、好きになるはずがない」
「俺が英雄だからダメなのか…? だからお前は信じてくれないのか。俺が、いくら愛してると言っても。……お前の気持ちが俺にないなら、今夜限りで諦めようと思っていた。それなのに、お前は俺を好きだと言う。……知ってしまったら、諦められない!」
 悲痛な叫びに、メルフィは軽く目を見開く。
 ジェイドの気持ちが流れ込んでくるような気がした。

 もしかして、本当に彼は……。
 でも……そんなことは絶対にない。
 だって彼は英雄で、自分はただの一般兵なんだから…。

 一瞬沸き起こった「もしかして」と思う気持ちを無理やり振り払う。
「それでもやっぱり、信じられません……。――――!!」
 そう呟いた直後、後ろに激痛が走り、メルフィは身体を硬直させた。
 声にならない叫びを上げる。
 先ほど気持ち程度慣らしただけのソコに、ジェイドの昂った熱がねじこまれていた。
 一気に貫かれ、限界まで広がされたそこが裂けて血が滴った。
 メルフィは目を見開き、浅い呼吸を辛うじて繰り返す。
 抱え込まれた足の指は反り返って固まっている。

 今まで感じたことの無い激痛が全身を支配しようとしていた。
 耳の傍では、同じ様にジェイドの浅い呼吸が聞こえる。
「……ッ、好きだと…言え、!」
 そう言って、ジェイドはギチギチに狭いそこを無理やり擦るように、腰を動かし始める。
「ひっぅ! ……ゃ、だ…め、うごか、さな……で」
 少し動くだけでも辛いのに、無理に擦られて、その度に激痛が走り、メルフィは涙と悲鳴を続けざまにもらした。
 きつい締め付けでジェイドも辛いだろうに、それでも動きを激しくさせようとする。
 また、新たに裂けるような痛みがあった。
 だが、それは全身を苛む痛みにのみこまれていく。
「言え…! メルフィ…ッ!」
 激しい痛みに、メルフィの口からは悲鳴しか出てこない。
 それに苛立ったように、ジェイドは萎えたメルフィのものを乱暴に掴んだ。
「つっ…………ああぁ! …いや、……やめっ…いた、い…ぁ!」
 そこから無理やりに快感をおこされるが、痛みと快感の混ざり合う不快感に、それを悦いと感じるはずもなく。
 結局は快感も痛みにのまれてしまう。
 メルフィの尻から、赤い雫が伝い落ち、ぽたぽたとシーツに赤い染みを作っていく。
 ジェイドはメルフィの顔の横に両肘を付いて、懇願するように顔を伏せた。
「頼む……メルフィ……愛してると言ってくれ」
 苦しみの中見上げたジェイドの顔は、苦しげに目を細めていて、ドキリとする。
「ジェイド隊長……愛してます」
 無理に搾り出したような声だったが、ちゃんとジェイドには聞こえていて。
 その瞳が、先ほどの激情が嘘だったかのように、優しいものになっていく。
 愛しむように向けられた視線に戸惑い、メルフィは一瞬身体の痛みも忘れた。
 そのまま口付けられる。
 優しい口付けは、そこから蕩けてしまいそうだった。
 ジェイドの手が、自分の首に回されたメルフィの腕を取り、優しくシーツに縫い付ける。

「メルフィ……痛いか。すまない……」
 突如訪れた甘い空間に、メルフィは戸惑わずにはいられなかった。
 問いかけられれば今更のように結合部から痛みが戻ってきて。
 今では、ただ痛いだけの動きは止まっている。
 そうして、ジェイドはゆっくりと自身を抜き出て行こうとした。
 無意識にメルフィは内部を締め付け、それを拒む。
「ぁ……っ、あの……大丈夫ですから。……だから」
 このまま続けてください。
 その言葉は恥ずかしさにごにょごにょと言葉にはならなかった。
 だがそれを察したジェイドが困惑の眼差しを向ける。
「だが、こうしておいてなんだが、辛いだろう…?」
 さらに出ていこうとするので、メルフィはジェイドの肩を引き寄せて、抱きついた。
 そうすることで出て行こうとする動きを封じる。
「あっ……ふ」
 ジェイドが屈んだ動きにピリと刺激が走るが、それは不思議と不快なものではなかった。
「メルフィ……?」
 ジェイドがメルフィの上に腹ばいになり、こまったような声を上げる。

 メルフィとしては、ここで終わらせて欲しくなかった。
 確かに痛いが、それも我慢しようと思えるくらいジェイドの事が好きなのだ。
 やはりジェイドの言葉は信じられないが。
 信じられないのは、自分に自信がないせい。
 自分みたいなのが英雄の隣に恋人としていてはいけない。
 その気持ちが頑なにジェイドの言葉を否定し続けているのだ。
 だから、これで最後。

「暫く、こうしていてくれませんか?」
 その言葉に、ジェイドは諦めたようにメルフィに体を密着させ、抱き寄せた。
 メルフィも、ジェイドの胸に擦るように額を押し付ける。
 ジェイドはあやす様にメルフィの髪を何度も撫でる。
 そうして中にいるジェイドを感じながら、痛みに慣れていく。
 静かな空間。
 ただ甘い、緩やかな空間だったが、確かに二人の間で熱は冷めず、ジワジワと燻るように少しずつ燃えていく。

 暫くそうしていると、メルフィも痛みに慣れ、内部はゆるゆるとジェイドの熱を締め付けたりしながら伸縮を繰り返していた。
 あの激しかった痛みに代わり、むず痒いようなものが内部から広がり、もじもじと僅かに腰を振る。
「メルフィ…、そろそろッ」
 切羽詰まったようなジェイドの声が頭上から聞こえた。
 それに答えるようにメルフィは小さく頷く。
 メルフィの許しを得て、ジェイドは少しずつ動き始めた。
 先ほどとは違う、快感を得るための動き。
 メルフィも、もう、痛みはほとんど感じなかった。
 裂けた部分も快感に痺れ、痛みは感じない。
「あ……うぁ……あぁ……」
 奥を突かれるたびに、メルフィの口からは甘い吐息がもれる。


 後はもう、上り詰めるだけ。
 お互いのすれ違う心は見当違いの方向を向いているけれど。
 それでも、二人の想いは一緒。
 今は無理でも、いつかきっと……。
 互いに信じあえる瞬間がくる。



....It continues?

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(C)banilla.
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