Undecided



ジェイドとメルフィ 2

 そのままメルフィから唇をふさぐ。
 舌をおずおずと唇のあわせめに這わせると、一気に口内に誘い込まれる。
 そのまま舌を甘噛みされ、腰にピリと刺激が走った。
「ン! ……ふ、ぁ!」
 キスをしたまま、ジェイドの掌がメルフィの体を這いまわる。
 わき腹をなで上げられて、甘い声が漏れた。

 ふと、メルフィは違和感を感じた。
 遊ぶ相手には困らないだろうジェイドの手腕に、迷いがあるような気がしたのだ。
 そろりとメルフィの肌を這い、メルフィがピクリと反応し甘い声を上げると、安心したように吐息をもらす。
 もっとも、初めて経験するセックスの事なので、メルフィには分からない。

 ふとそんな事を考えていると、強い刺激が体中を駆け抜けて、ピクリと震えた。
「あぁっ…!」
 その拍子に唇も外れてしまい、大きな声がもれる。
 慌てて口を覆ったが、手遅れだった。
 ジェイドはメルフィの緩く立ち上がった熱を掴んで、上下にこすっていた。
「だめ……! あ……、やぁ」
 与えられる強い刺激に、甘い声を抑える事ができない。
「気持ちいいか」
 問に視線を上げると、ジェイドの熱のこもった瞳が、じっとメルフィを見ていた。
 とたんに羞恥にかられ、フイと顔を逸らす。
「や……見ないで、くださ……ぁん!」
「なぜだ」
「あ、変な顔、してるから……あぁっ、恥ずかしいです……」
 快楽に歪ませた顔を見られたくない。
 だが無情にも、ジェイドの指が顎を捕らえ、視線を合わされてしまう。
「見せてくれ……」
 その言葉一つで金縛りにあったかのように逆らえない。

 じっとジェイドが見ている。
 メルフィが乱れていく様を。
 それだけでどうにかなってしまいそうだった。

 ふと、シャラ…と音がして、そちらに視線を向ける。
 音をたてたのはジェイドの軍服の胸元で揺れる、その功績を称えたいくつもの勲章だった。
 メルフィの視線に気付いてジェイドが荒々しく服を脱ぎ捨てる。
 怒ったのかとメルフィがビクリと肩を揺らすと、ジェイドが苦々しげに吐き捨てた。
「こんなもの、人を殺して与えられたものだ」
 世間で英雄として称えられる裏で、密かに苦しんでいたのか。
 そう思うと、メルフィの胸の中に愛しさが湧き上がってきた。
 この人を守りたい、そう思った。
 だがそれを言葉にする事はなく、惜しげもなく晒された逞しい筋肉の乗った肌に手を這わせた。

 ジェイドも愛撫を再開する。
「あぁ! ……ッ!」
 メルフィの熱がジェイドの口に含まれて、熱い粘膜に擦られ強い刺激が駆け抜けた。
 思わず腰がはねて、ジェイドに押し付けるようにしてしまう。
 裏筋を舐めあげられて、達しそうになるのを堪える。
「あっ…ん、…あぁ」
 いつの間にか、メルフィはジェイドの髪を両手で掴み、自分から強請るように緩く腰を振っていた。
 膝を立てた足の踵が、何度もシーツを蹴る。
 ぼやけた頭では自分が何をしているのかよく分からなかった。
「…ッ」
 そのメルフィの痴態に、ジェイドは小さく息を詰める。

 ズルリ、と口からメルフィの熱を出し、先端を舌先でこじった。
「……ああぁぁあ!」
 その刺激にあっけなくメルフィは吐精してしまい、ぐったりとシーツに身を沈め荒い息を吐き出す。
 弛緩した身体に、あらぬ場所に感触を感じ、ビクリと跳ね起きる。
 後ろの穴に、ジェイドが指を差し入れようとしていた。
「やっ……、なに……、ひうっ」
 先ほど吐き出したメルフィの白濁を纏った指が、はいってくる。
 激しい異物感に吐き気すら覚え、メルフィの瞳からは涙が溢れた。
「慣らさないと辛いだろう……」
 熱のこもった、かすれた低音が耳の傍で聞こえて、メルフィはそれにすらビクリと身体を震わせた。

 そこに、ジェイドが入ってくるのだ。
 そう思うと、心臓がキュウと締め付けられるような心地がした。
 好きな人と一つになれる。
 相手がこの行為をただの遊びだと思っていようと、メルフィにとっては最初で最後の交わり。
 大切な行為。
 これが終わった後、またいつものような毎日になって、ジェイドに忘れられようとも、自分は忘れない。
 今このときに、彼の口から囁かれる愛の睦言が嘘だとしても。
 絶対に忘れない。

 メルフィは、意識して深呼吸を繰り返し、身体の力を抜いた。
 瞳からは先ほどの異物感から流した涙とは違う、新しい涙がポロポロとこぼれ続けている。
「泣くな」
 ジェイドはそう言って、メルフィの涙を唇で何度も吸う。
「ジェイド隊長……好きです。これが、あなたにとってただの遊びでも、僕は、本気ですから」
 嗚咽交じりの声で必死に伝えて、ギュっとジェイドの首にすがりつく。
 ジェイドは何も反応を見せない。中に入った指も、動きを止めていた。
 ジェイドを困らせてしまった……。
 それでも、メルフィには後悔はなかった。
 これが原因で隊を降ろされるかもしれない。

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(C)banilla.
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