静かな空間の中、視界が黒に染まる。頬に当たる柔らかな綿の感触に目を細めると、優しい手つきで頭を撫でられる。ふと顔を上げると、黄金色の瞳と目が合う。綺麗…、ぼんやり見ているとゆっくり、ゆっくりと金色のそれが近付き、綿とは違う柔らかいものが頬に当たる。それが唇だと気がついた時は次に額、目元、そして唇に触れる。何度か軽く触れあった後、首筋にキスを落とす。慣れない感覚に肩を震わすと顔が首元から離れ、背中に回る大きな手が上下に撫でる。何回も小さな背中往復する手は大丈夫、大丈夫と言っているような気がして彼の両頬に手を添える。目を丸くする彼に微笑み、ありがとうございます、大丈夫です。とコクンと首を縦に振る。それが伝わったのか添える手の上に自分とは違う体温が重なる。いつも表情をあまり変えない彼の笑みは綺麗で、思わず見入ってしまった。その間に再度唇が重なる。先刻までしていた口付けより長く、深く、甘いキスに頭がクラクラする。静かな空間によく響くリップ音と二人の息遣いはこの場の雰囲気を少しずつ変える。服の下に隠れる白い肌に吸い付き、春歌は自分のものだと印をつける。思わず声を上げそうになるのを堪えるとまた唇で塞がれる。キスの角度を変える度に聞こえる布が擦れる音がやけに大きく感じた。

「春歌」

耳元で囁く自分の名前はとても甘美なもので、愛していると言われている気分がした。綺羅くん、と返すと襟についているウサギと同じ色の瞳が細まった。

silent time
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