「今泉くんって背が高いね。」

そう言い、コイツは此方を見上げる。

「そうか?」

確かに互いの顔を見るためには寒咲が見上げ、俺が見下げるようにしないとできないが。

「と!っよ!」

「……何してるんだ?」

いきなりその場でピョコピョコし始めるコイツに呆れながらも聞く。

「なにって背伸びしてるの!っや!」

「それは見てわかる。俺が聞いているのは何でそんなことしてるかって聞いているんだ。」

「あっ?それ?」

きょとんとした表情をしたと思ったらすぐにニッと笑みを作る。

「こうやって背伸びをすれば私からキスできるかなーと思って」

動きを止めて、コイツは笑う。まるで花が咲いたかのように。

「…バーカ」

徐々に早くなる心臓の高鳴りを感じながら、コイツにそう言い放つ。ムッと顔をしかめるコイツがまた動かないように両肩に手を置く。

「そういうのは男に任せておけば良いんだよ。」

その後、コイツは何か言いたげに口を開いたがそれらは全て唇で封じ込めた。



「……ズルい」

「は?」

「ズルいよ!今泉くん!」

離れた唇が最初に告げたのはブーイングだった。思わず拍子抜けした返事をしてしまった。

「だからいつも今泉くんからしてズルいよ!」

(そこかよ!)

それから「うーん、どうすればいいのかなー?」と俺の顔を見て考える。ふと、寒咲の目線に締めているネクタイが入った時、頭に懐中電灯が光ったのが見えるぐらい閃いた顔した。

嫌な予感がして、後退ろうと試みるがその時はもう遅かった。寒咲の手にはネクタイがあり、えいっという掛け声と同時にそれを引っ張られた。
うぐっと奇声を発しそうになるがそれはすぐに柔らかな感触に飲み込まれた。

「…これで私からもできるね。」

ニコッと微笑む頬はうっすら赤く染まっている。恐らく俺にしか知らない彼女の表情。

(あぁあー!!クソッ)

その表情を他の誰にも見せないよう抱き締める。

(ズルいのはどっちだよ!!)

「え?え?今泉くん??」胸元でそんな声が聞こえるがお構い無しに抱き締める腕の力を強くした。


結局、お互い様
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