瑛一さんが噛ませ
でしゃばってる瑛一さん
書いた自分でさえ瑛一さんが何考えているのかよくわからない←







ガヤガヤと人々が賑わう中、私はロケを行っているST☆RSHの皆さんとお参りするため神社の前で待っている。ふと身につけている腕時計を見ると、長針は前々から言われていた待ち合わせである時刻を過ぎていた。

(……少しロケが長引いているのでしょうか?)
そう思いながら、キョロキョロと辺りを見回す。見る限りでは待ち合わせしている顔ぶれは見当たらない。

うた☆プリアワードを受賞してから、ST☆RISHは勿論、作曲をした私も仕事が増え、忙しい日々を送っていた。作曲家である私は年末は普段よりゆっくりと出来るが、人気アイドルである彼らは新年の特番に引っ張りだこ状態だ。それ分かった上でダメ元で誘った私だが、彼らは笑顔で了承してくれた。

残念ながら直接見ることが出来ないが、きっと彼らはカメラの前で笑顔を振りまいているはずだ。(勿論録画はバッチリだ。)
そんな彼らを頭で思い描いていると当然ドンッと肩に大きな衝撃が走る。きゃ!と小さな悲鳴を上げると、す…すみません。とボソボソとした声が頭上から聞こえる。

(この声………)

カバッと見上げるとまず目に入ったのは金色のウサギさんと目元まで深く被さった帽子、そこからは所々黒髪が覗いている。もしやと思い、反射的にその人服の裾を引っ張る。

「皇さん?」

極力小さな声でそう言うと、ぴくっと反応が返り帽子のツバを少し上げる。帽子から金色の瞳が私を見る。少し呆けたような表情をしながら口を動かす。

「……なんでこんなところに…」

「そういう皇さんこそ……」

「……………」

そう聞くと、皇さんは黙ったまま俯く。その様子が気になり、俯く皇さんを覗き込む。

「もしかして、何か合ったんですか?」

そう尋ねると私と目を合わせ、頷く。

「……ナギと瑛一を見失った。」

「えっと…つまりはぐれちゃったんですか?」

コクリと再度頭を縦に振る。金色の瞳は不安げに揺らいでいる。八の字に下げる眉によし!と決意する。

「皇さん、私も探すの手伝います。」

「!……助かる。」

相変わらず無表情な皇さんの表情が少し明るくなった気がした。

「あっちょっと待ってください。」

「??」

慌てて携帯画面を操作し、七人に『少し用が出来ました。すみません、待っててもらいますか?』とメールする。送信完了という文字が表示された後、改めて皇さんの方に向き直る。

「お待たせしました。じゃあ行きましょうか。」

「ああ…、有り難う」

いつもより柔らかい表情に私も目を細めて笑い、肩を並べて歩く。

「皇さんと会うのは1週間ぶりですね。」

「あぁ、…あの時は瑛一がすまなかった。」

「あっ……いえ。」

うた☆プリアワードではライバルだったHE★VENSとは音楽番組、トーク番組辺りで会う事が多くなった。この前会ったバラエティー番組名が『年末の全力バトル!ST☆RISH VS HE★VENS』というもので、ST☆RISHチーム、HE★VENSチームと分かれ、数々のゲームを行い、勝敗を決めるというごく普通のバラエティー番組だった。スケジュールに余裕が有り、撮影の様子を影で見守っていた私の元に鳳さんが。そしてガシッと私の両肩を掴み、こう言い放つ。

『七海春歌!この番組で俺らHE★VENSが勝ったら俺たちの作曲家になれ!』

『えぇえええ!!?』

唐突な宣言に固まっていると、ST☆RISHの皆さんが助けてくれた。

『おい!勝手な事言うなよ!!』

『そもそも作曲家の話はうた☆プリアワードで決着が着いたじゃありませんか。』

『そうですよ!春歌はワタシ達の作曲家ですっ』

いつの間にか鳳さんから引き離され、顔をしからめ鳳さんを見る。それを見た鳳さんはふっと鼻で笑う。

『…そんなに彼女を思っているのだったらこんな番組容易勝てるな?』

『!』

『彼女が大事なんだろう?だったらこの番組で勝ってみろ!因みに拒否権は無いからな!』

それだけ言うと、鳳さんは私たちに背を向けてさっさと何処かへ行ってしまった。暫し続いた沈黙を一番最初に破ったのは私だった。

『あのっすみません!私が注意していればこんな事には……』

『そんな!七海のせいじゃないよ!』

『音也くんの言う通り、春ちゃんのせいじゃないですよ!』

『まぁ、要に勝てばいいからね。』

『私達の方が人数が多いことですし、大丈夫ですよ。』

(皆さん………)

一つ一つの台詞がジーンと心に響く。こういう時いつも彼らの言葉に励まされていると改めて思う。

『ST☆RISHさんスタンバイお願いします!』

スタッフの言葉に七人が一勢に返事する。どうやら本番の収録が始まるようだ。

『じゃあ七海!俺たちは行くね!』

『はい!頑張って下さい!!』





「確かに大変でしたね。」

「……………」

ことを一通り思い出し、ポロリ一言漏らす。それに皇さんはいつもの表情で此方を見つめる。やけに周辺の物音がクリアに聞こえる。

「でも過ぎたことですし、もう気にしてませんよ。」

「………そっちが勝ったしな。」

彼が言った通り勝敗はST☆RISHに上がった。彼らを信じていたものの、番組後は彼らに思わず飛び上がってしまった。脳裏にその光景を思い浮かび、ふふっと笑みが溢れる。

「…それより二人供居ませんね。」

「あぁ…」

喋りながら周りを歩いてみたものの、何処にも居ない。

(早くしないと皆さんを待たせてしまう……!)

焦りを感じながらも、屋台を曲がろうとしたところ―――……


グイッ

「!!!」

突然強い力で腕を引っ張られる。その行動にびっくりしているうちに、何処かで聞いたことのある声が頭上から耳に入る。

「おいっ!探したぞ綺羅!」

「も〜、いつもどっかいっちゃうんだからー!」
「すまん………」

(この声は!!)

咄嗟に上を向くと、案の定鳳さんの姿が。

「2週間ぶり、だな。七海春歌」

「おっ、鳳さっ…ん!」

掴まれている腕にギュッと力が入ったかと思ったら、口が手で封される。

「あまり騒がないでもらおうか。目立ってしまうからな」

「……………」

聞きたいことはあったが、確かにそうだと思い黙ってそれに従う。

「ちょっとぉー!ぼくの事は無視ぃー!?」

「っ!」

黙っていると鳳さんの横からひょっこと帝さんが現れる。

「久しぶりだね、お姉さん。」

ふふん!と笑う帝さんにコクコクと首を縦に振る。

「………瑛一、もうそろそろいいんじゃないか。」

「ん?まぁ、そうだな。」

皇さんの言葉でやっと口を塞いでいた大きな手が退かされた。思わず安堵で短い息を漏らす。

「じゃあ、行くか。」

「そうだよ!時間が無くなっちゃう!」

と思いきや右に鳳さん、左に帝さんと両腕をとられ、連行されるように歩かされる。状況についていけてない私は慌てて口を開く。

「えっ?え?あの…何処へ?」

「折角会ったんだから一緒に回ろうよ!」

「俺たちはお前に興味があるんだ。いいから俺様についてこい。」

(ええええ!!?そんな勝手な!?)

流されるまま歩かされる私は慌てて声を張る。

「ちょっ、ちょっと待ってください!!」

「瑛一…ナギ……!」

私が制止の声を出すのと同時に皇さんが二人の名前を呼ぶ。その声に二人はピタッと止まり、後ろに立っている皇さんを見つめる。

「………。」

皇さんは黙ったまま私を見つめながら顎をクイックイッと上げる。それに鳳さんと帝さんは慌てて視線を私に移す。このまま流されるまま連れてかれるのを防いでくれたのかと理解した私は心中で皇さんに感謝し、口を開く。

「あの……実は今ST☆RISHの皆さんと待ち合わせしていて……その…」

人を断ることに慣れてないので、いつもより慎重に言葉を選ぶ。

「待った。」

言葉を繋げようとした時、鳳さんが制止の声を上げる。

「お前の言いたいことは分かった。」

「えぇ!?いいの?瑛一!?」

あっさり了承した鳳さんに帝さんは不満の声を上げる。

「待て、ナギ。話は終わっていないぞ。」

「え?」

「え?」

「………?」

鳳さんの発言に私だけでなく帝さんや皇さんまで首を傾げる。

「こんな事をお前に言うのも何だが、もう少しだけ時間をくれないか?…せめて参拝だけでも……頼む!」

「ええぇえ!!?」

一方的に要求を言ったと思ったらガバッと頭を下げた。流石芸能人と言ったところか、お辞儀がしっかり90度である。

「あっあの!取り敢えず頭を上げてください!!」

「そうだよ!どうしちゃったの!?」

「いつものあんたらしくない」

鳳さんの行動に私たちは慌てて声をかけるが、中々頭を上げずに頼む…とぶつぶつ何か呟いている。

「そもそも!何で私がついていく必要が有るんですか!?」

やけになりそう言うといきなり顔を上げ真面目な顔でこう言う。

「理由はない。ただお前と参拝したかった、それだけだ。」

「え?」

「…こうして3人で来てるが瑛一はあんたと行きたがっていたんだ。」

「そんなこと……」

知らなかった。今知った事実なのだから当たり前だが、出会った最中から怖かった彼だが

「…何で言ってくれなかったんですか?」

言ってくれたら皆さんと一緒に行けたのに。と言おうとした途端。

「おい!七海!!」

「七海!!居る!?」

「!?」

すぐ傍から一十木くんと翔くんの声が聞こえる。直ぐ様声がした方を向くと駆け寄ってきた二人が私を腕を引っ張り、走り出す。

「え!?二人共なんで!?」

「話は後だ」

「今は皆の元に行こっ」

「は………はい。」「…いいの?彼女、行っちゃったよ?」

「………。」

彼女が去った後二人は心配そうな顔でこちらを見る。……そんな顔で見るな。仕方ないじゃねぇか。

「大丈夫だ。天下のHE★VENSがそんな顔をするな!」

「…天下、ね」

綺羅コイツ!久々に喋ったと思ったら傷つくような事ポロッと言いやがって。…まぁいい、俺はいつもの笑みを浮かべながら呟く。

「次の機会、だ。次は必ずアイツを手に入れる!!」

それは何処かの悪者が言うようなどうしようもない捨て台詞だったらしい……。






二人に連れられたのは今回神社に来たメインの目的となる参拝できる場所だった。向かうとすぐ傍に居た他の5人がそれぞれ私の事を呼び、集まってきた。

「中々来なかったから心配しました!」

「大丈夫ですか?怪我とかしてませんか?」

「だっ大丈夫です、本当にごめんなさい。」

チラッと腕時計を見ると、待ち合わせしていた時間から一時間ほど経っていた。

(こんなに時間たっていたのぉぉぉ!?)

「すみません!本当にすみません!こんなに待たせてしまってすみません!」

「いいよいいよ。それより用って何してたの?」

「あっそうだよ!何でHE★VENSと居たの?」

『HE★VENS』。その言葉を聞くたび、皆さんの眉間に皺が寄る。

「HE★VENS?」

「どういう事?レディ?」

「あ、あの。話すと長くなるんですけど……」

私は今までに起きた出来事を手短に話した。

「事情は分かったけど……」

「…なんか気にくわないなぁ」

何かぶつぶつ小言を言っているが声が小さいのでよく聞こえない。その時ジャラジャラと鈴の音が耳に入る。

「あっあの、折角近くに有りますのでお賽銭しませんか?」

「うん。まあそうだね。」

「神社に来た一番の目的だしな!」

異論が無いのか皆コクコクと頷く。互いに顔を見合わせると階段を登り、お賽銭箱の前に七人が立つ。お財布から五円玉を取りだし、お賽銭箱に入れる。真ん中にいる翔くんが鈴の音を鳴らすのを聞いて、拝礼をする。ちゃんと再拝二回と拍手一回忘れずに出来た。

「ねぇねぇ、何お願いした??」

「ん?オレか?オレは……」
「おチビさんの事だから『身長高くなりますように』だよ」

「レ〜〜〜ン〜〜〜!!そんな事願ってねぇよ!そういうお前は何願ったんだよ。」

「ん?俺かい?……秘密だよ。」

「……自分から振っといて自分は答えないのか。神宮寺らしいな。」

「でもこういうのって話したら叶わなくなっちゃうんだっけ?」

「へぇーそうなんですか。ワタシ初めて知りました。」

「…七海さん。」

「七海さん!」

「っは!」

ガヤガヤと話す中、いつの間にかボンヤリとしていた。慌てて一ノ瀬さんに向き直る。

「すっすみません!ボーッとしてました!」

「それは見てれば分かります。」

「はい…………」

「…………貴方は何をお願いしたんです?」

「え?」

「…ハァ…貴方は一回で話を聞けないんですか?」

「えっ……あの……秘密です……」



はつもうで


(皆さんのために素敵な曲が書けますように)

(……後あの三人とも仲良くなれますように)

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