リクエスト7.「口説いたり病んだり忙しいハンジさんに苦労する」
私には恋人がいます。
上司で、しかも女性。
そんな彼女が私は大好きで、だからこそ立場をわきまえろとか、同性だとか、非難の的になっても耐えられるのですが彼女はとっても……その、面倒な人です。
「おはよう!今日もかわいいね!!」
はあはあ、と息を荒げて近づいてくる私の上司で恋人のハンジさん。
つらつらと彼女の口から口説き文句が流れています。
かわいいと言ってもらえるのは嬉しいのですが(はあはあしているのは無視しましょう!)、ここは人前ですし、兵団の士気に関わってはいけません。
ここは上手くかわしましょう。
「ハンジさん、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる。
一番普通の反応ですが、変に謙遜したりするよりずっと、周りには淡白な回答に見えるはずです。
「もう、また他人みたいな対応して。
ベッドの上じゃあんなに素直でエロいのに」
「……っ!」
この変態親父!(女性ですが)と叫びたくなりますが、我慢します。
ここは、動揺を外に出してはいけません。
ハンジさんを喜ばせるだけですし、周りにも悪影響です。
「ハンジさん、あまり人前で下品なことは言わないでくださいね」
そうです!肯定もせず、否定もしない。
これで、ハンジさんに対しても"昨夜"を否定せず、みんなに対しても肯定せず、一番丸くおさまるはずです!
そもそもハンジさんがあんな発言さえしなければ良かったのですが!
……しかし、私はどこかで選択を間違えたようです。
「……そんなに、人前で口説かれるのは嫌?
なら、もう私に閉じ込められちゃってよ。
そうしたらもう君も恥ずかしくないし、私も君を独占できる。
そうだ、それがいい…そうしよう!さあ!」
どうしてこうなった!
どこでスイッチを入れてしまったんでしょうか私は!
「い…嫌とかではなく!
ただ、時と場所を考えてほしいだけで」
「だからそれを考えた結果がこれだよ。
監禁しちゃえばいつだって口説き放題!」
だめです、これは完全に病みスイッチが入ってしまいました。
仕方ありません、ここまで来たら奥の手です…。
ハンジさんが私と同じくらい……いいえ、確実に私以上に好きなもの、それがこれです!
「この前の巨人の研究の話なんですけど!」
「えっ!?」
ハンジさんの目が輝きました。
周りにいた人たちがさーっとどこかへ言ってしまいました。
はあ、と私がついたため息を無視して、ハンジさんが話始めました。
「この前の実験では…」
「……」
なんでこんなに苦労するのに、私は彼女と一緒にいるんでしょうか。
それはひとえに彼女を私が愛しているからです。
ただ…、胃薬が手離せないことだけが、不満です…。