6.「家庭教師なハンジさん」



「さて、今日は何から始めようか。生物?」

「生物は先週死ぬほどやりました…」

「じゃあ、保健体育の実技だね!」

「ねえ、ハンジ先生女の人でしょ?
なんでそういう親父みたいなことばっかりするんですか!」

「てへぺろ」

「訴えますよ!」

「ごめんなさーい!」

このふざけてるハンジ先生は、半年くらい前から私についてくれている家庭教師の先生だ。

最初来たときはどんな変な先生が来たかと思ってびっくりしたが、何だかんだ優しいし、気も合うし、成績も伸びた。

まあ、変なのは実際確かなのだが…。

「じゃあ、今日は現代文ね」

「…はい」

授業モードに入れば、彼女は休憩時間までしっかり先生をしてくれる。

この真剣な表情を見て、どきっとしてしまってから、私はずっとおかしい。

…この人が、…なんて。

「…っと、だからここの答えは……。
……聞いてる?」

「っえ?」

「聞いてないね、疲れた?」

「ごめんなさい…」

「いいよ、どっちにしろ時間だし休憩しよう」

そういって、慣れたように私の部屋にお母さんが置いておいてくれたティーセット(といってもティーバッグだが)でお茶を淹れてくれる。

「最近、ぼーっとしてること多いよね。
何か悩み事?」

「……先生、私」

私、変だ。

今日は特に……いつもなら、もっと自制できるのに。

「うん?言えることなら、言ってみなって」

「……先生、好き」

「……っ」

ハンジ先生が目を見開いた。

「、ごめんなさい」

「…いや、私もびっくりした。
何、君って薄々そうかなって思ってたけどツンデレなの?
さっき訴えるとか言ってたくせに」

「…別に。
わかんない、言いたくなっちゃったんです」

「……ふーん?」

「いいんです、無視してください。
今日はたぶん、熱でもあるんですよ、だから、こんな……」

そう言ったら、本当にふらっとしてきた。

苦しい言い訳のつもりだったが、病は口より入りと言うし……、あれ、意味違う。

「様子が変な気はしていたんだけど、まさか本当にそうなんじゃないだろうね」

ハンジ先生が私の額に手を当てる。

「……あらら、もしかしたら本当かもよ」

「…せんせ」

「今日は、中断しよう」

「平気です」

「無理は禁物だから。
誰か呼んできてあげるから、横になってるんだよ」

そういって、ハンジ先生が出ていってしまいそうになる。

なんとなく逃げられていた気分で悔しくて膨れる。

すると、ふと振り返った彼女が、こんなことを言ったから、私の心臓は完全に彼女に奪われてしまった。

「そうそう、今度補習してあげるから、そしたら…」

今度は熱だしてないときに、告白してよ。



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