昔から、男の人が苦手だった。

だから、いつだって男性を避けて、なるべく女性だけと関わるようにしてきた。

例外的に関われる男性でもある父親はどちらかといえば高給取りで、私は仕事を選ぶという余裕もあったので、女性の多い職場を選り好みし、そこで働いていた。

そんなふうにある程度わがままが言えたからこそ、私の男性への苦手意識は一向に治らなかった。

私は男性が苦手だったが、とはいえ恋愛対象が女性だったわけじゃない。

だけれど最近、女性かもしれない人を好きになってしまった。

調査兵団分隊長の、ハンジ・ゾエさんである。

彼女とはなんてことない、街ですれ違ったときに私が落としてしまったりんごを拾ってくれたのがきっかけで話すようになった。

便宜上彼女とするが、彼かもしれない。

とにかく、中性的で性別を意識させず、かつこんな私にも優しいあの人を、私はいつしか好きになっていたのだった。

今、私はそんな彼女のお部屋にお呼ばれして、お茶を頂いている。

どきどきしながら、彼女の話を聞いたり、自分の話をしたり、お菓子を食べて、そんなふうに幸せな時間をすごしていた最中、私は突然眠気に襲われた。







薬を飲まされ監禁された上に強姦された







「あっははは!!」

「…っ!?」

何だ、何これ、どういうこと…!?

混乱する、意味がわからない。

私の上に跨がっているハンジさん、そして全裸の私。

ところどころかかっているぬめりとした液体。

独特の匂い。

膣の違和感。

「あれ、起きちゃった?」

「ハンジさん…!?」

意味がわからず、彼女をまっすぐ見る。

…彼女?

「つまらないなあ、もう少し遊びたかったのに」

「何…っ何してるの…!?」

「見てわからない?寝てるなまえを抱いてたの」

「抱い…っ!?」

嘘、嘘、どうしよう、混乱する。

「男の人…?」

「え?…女だと思ってたの?」

「だって…!」

「傷付くな。
たしかに髪伸ばしっぱなしだし、声や話し方もこんなだから、どっちかわからないって言われることも多いけど、まさかなまえが勘違いをしているとは思わなかったよ」

「え…っ!?」

「僕とか俺とか言おうか?…だめだ、我ながら違和感を覚えるよ。
特に俺はないね、妥協して僕だ、でもやっぱり私だね」

「そんなの…、」

どうでもいい。

一人称だってどうでもいい。

この際、ハンジさんの性別だってどうでもいい。

そりゃ、私は男性不信で、正直ハンジさんが女性であってほしいとどこかで願ってはいた。

私は男性が苦手で、かといって女性が恋愛対象になるわけでもなく、あくまで男性がそうだったから、恋だってしたい年頃の私からすれば、この状況はつらかった。

そのなかで、好きになれる"女性"が私にもいたというのは、好きになれる男性ができることよりも、苦難は少なかった。

だから、女性であってくれたら、とは思っていたが、別に男性だって、私はちゃんと好きだった。

性別を感じさせない、中性的で優しいのが好きだったわけで、男性だって、多少態度は変わったかもしれないけど、変わらず好きでいれたはずだった。

それが、今どうしてこんなことになっているんだろう。

どうして私は、こんなひどいことをされているの?

「なまえ、もう一回シていい?」

「えっ!?え、嫌、嫌です、嫌だってばっ!」

「無理〜。我慢なんてできない」

「ひ、ぃや痛いっ!」

ぐぐぐ、と何か、何かが入ってくる。

「えへへ」

覆い被さった彼がそんなふうに可愛く笑っても、今の私には何も響かない(響かせようとしているわけじゃ、ないだろうけど)。

「なまえってさ、妙に私以外の男にびくびくして、の割には私の部屋にはほいほい着いてきちゃうし、そんなに私が特別なのかなー、なんて思ってたりもしたんだけど…。
そっかあ…女だと思ってたのかあ」

「痛い…!痛い、抜いて…っ!」

「やーだ」

「何でぇ…!」

「だってなまえが好きなんだもん。
君、身持ち固そうだからまあ焦らなくても平気だとは思ったけど、でも早く私のものにしたかったんだ」

「痛い…!」

「そんなに痛い?
おかしいなあ、筋肉緩急剤的なのお茶に混ぜておいたんだけど」

「ええっ…?」

「あと、媚薬もね」

「…っ!?」

落ちてきた髪をかきあげながら、にやりと妖艶に笑う彼は、たしかに色っぽいんだと思う。

けれど、今は怖くて仕方がない。

「中出したら妊娠するかな」

「、やだぁっ!」

「えー、何で?私のこと好きでしょう?」

「嫌…っ!」

「…嫌い?」

「嫌い、じゃないけど、嫌…!」

「わがままだなあ」

「ひどい…っ!」

何が何だかわからなくて、ただただ痛くて、涙が流れてくる。

「私が好かれたのが運のつきだね」

「ひ…っ!」

「正攻法で落とそうなんて、まるで考えてなかったよ。
だって、何がなんでも君を私のものにしたかったんだ。
そのためだったら何でもするよ。
まずは確実に君の身体を手に入れるんだ。
もちろん、心も手にいれる。
堕ちて、私だけしか見えないような子にしてやる。
…ふふっ!」

「ハン、ジさん…っ!」

「痛いね?でも大丈夫。
さっきまでこれ入ってたんだから、今回も平気さ」

「うう…っ」

「かわいいね、なまえ?」




それからがひどかった。

私は何も言えないまま何度も犯され、閉じ込められた。

彼の部屋にちょこんと人形のように置かれ、怯えながらすごす生活。

だけれど、彼に与えられる何かしらの薬は、私に何らかの影響を及ぼしていた。

「ハンジ、さ…!」

「ん?なあに、なまえ?」

「ハンジさん…っ、ください…!あれ、あれ欲しい…」

「んー、なら、私にキスしてよ」

「ふぁい…っ」

ハンジさんがくれる"アレ"がほしくて、嫌悪感も丸ごと飲み込んでキスする。

「いいこだね?じゃあ、あげよう」

ハンジさんがアレを口に含んで、私に口移しする。

そのあとすぐに水も口移しされて、飲み込む。

「よかったね、お望みのものがもらえて」

「は、い…」

しばらくして、ふわふわとしてきて、気持ちよくなって、楽しくなってくる。

「ふふっ」

「なまえ、ずいぶん楽しそうだね?」

「ハンジさあん…好きぃ…」

「あはは」

ハンジさんががばっと私に覆い被さってくる。

「ハンジさん…?くれる?」

「え?私のがほしいの?」

「うん…ほしい」

「あはは、相当な男嫌いだったくせに、今や自分からおねだりしちゃうような淫乱かあ〜…うんうん。
感慨深いね!いいよ、あげよう」

「うふふっ」

ハンジさんの首に腕を回してぎゅうっと抱きつく。

ハンジさんが何を言っているのか、もう私にはわからない。

ただ、"あげよう"というその一言が、私に"楽しいこと"をしてくれる合図なのだけはわかって、思わず微笑んだ。




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