調査兵団に憧れて兵士になった。

別に出来がいいわけではない、訓令兵時代も何度もくじけそうになったけれど、それでも自由の翼を背負うために、頑張った。

その訓令兵時代に、仲良くなった子がいる。

アニという名前の子で、強くてクールな彼女が大好きだった。

たぶん、私は女の子が好き。

そしてたぶん、アニに恋していた。

もちろんそんなこと、彼女に伝えられるでもなく、むしろ友達として傍にいられるだけで十分だった。

結局、訓令兵を卒業して、彼女は憲兵団に行ってしまったので、それっきり。

私は私で調査兵団を志望し、配属された。

そこで、私は二度目の恋のようなものを感じてしまった。

ハンジ分隊長。

変な人だけど、かっこよくて、強くて、優しくて、元々調査兵団に憧れていたこともあって、彼女のことは知っていたけれど、実物を見て一気に好きになってしまった。

新兵という立場だけれども、どうにか彼女と接触できるよう努力した。

すると、何がよかったのか、彼女も私を気にかけてくれるようになり、来る第57回壁外調査を控えたある日、彼女にこう伝えられた。

「付き合おう、なまえ」

会って1ヶ月たらず、それでもお互い(特に私は)いつ死ぬかわからぬ身。

なるべく一緒にいようと、地位も違えば異性でもない彼女にそう言われ、叶うはずのない私の恋は実った。





どっちつかずでいたら暴力のち監禁された






第57回壁外調査。

運良く私はほとんど巨人にも会わず、どうにか生き延びていたが、ある話を聞いてしまった。

"女型の巨人"が現れた、と。

私はもちろん驚いて、それ以上に恐ろしかった。

絶対会いたくない、絶対死にたくない。

調査兵団に入った以上、いつ死ぬかわからないの当たり前なのに、私はどうしても死にたくなかった。

しかし、世界は残酷で、私はこの目で女型を見てしまった。

アルミンと、ジャンと、ライナーが何かを追っていて、それが女型だった。

大丈夫、まだ気づかれていない。

私は三人を助けようともせず、そこから逃げ出した。

しかし、そのとき本当に遠目に、ちらりと女型の顔を見てしまった。

「アニ…?」

根拠があったわけじゃない、ただアニだと思った。

私は気づかれない程度のところにまで近づいてみた。

間違いない、アニだ。絶対アニだ。

私は恐ろしくなった。

その後、結局班長の指示で巨大樹の森でひたすら立つということをするようになり、その後帰還となったのだが、私には女型はアニだとしか思えなくて、どうしようもなくなった。

同時に思い出したのは、忘れかけていたアニへの恋心で、どうしたらいいのかわからなくなった。

帰ってから、ハンジさんに呼ばれた。

複雑な心境のまま、でも彼女は恋人以前に上司であり、私は行かざるを得なかった。

「……アニ・レオンハートと、仲良かったの?」

そんなふうに切り出され、私はびくりと震えた。

「、はい。訓令兵のとき」

「……女型をどう思う?君も見ただろう」

「……っ!どうと、言われても」

「あいつがエレンと同じ、巨人になれる人間だって、なまえも聞かなかった?」

"あいつ"?

「っ、違う!アニは違う!」

思わず叫んだ。

そしてやってしまったと思った。

ハンジさんの顔に一気に影が落ちる。

「私は"女型"が巨人になれる人間だって言っただけであって、"アニ"がそうだとは、言っていないけれど」

「違う、ごめんなさい…っ」

「……知ってたの?君は、アニが女型だって、知っていて、私に近づいたの?」

「違う…!知らない、知らなかった。
知らなかったけど、でも……」

「……でも?何?」

「…見たとき、アニだと思ったんです。
でも、アニじゃありません、アニはそんなことしません…!」

「味方が、アニを庇って嘘を言っているようにも、聞こえるね」

「違います!私は、ずっと調査兵団に入りたくて…」

「なら、女型がアニでも、戦えるよね」

「戦う…っ?」

アニと、戦えというのだろうか。

「……失望したよ」

「そんな、私…嘘なんてっ」

「嘘だとしても、嘘じゃなかったとしても裏切りだよ。
嘘なら人類への裏切り、嘘じゃないなら私への裏切り。
君はアニとただならぬ仲だったか、少なくとも君にはアニに対する特別な感情があったんじゃないの?」

「……違っ」

「あいつは女型の巨人なのにね」

「違う!」

「…その必死の否定が、何よりの証拠だよ。
ねえなまえ、そりゃあ、私と君の付き合いはまだまだ全然浅いよ。
でもね、本気で私はなまえのこと好きだったんだ」

「…私、だって」

「……もう、いいよ」

「え?」

「どっちにしろ、壁外調査を経てわかった。
私は君を失いたくない。だから閉じ込めようって」

「……!?」

「しかも、敵と通じている可能性があれば、誰も文句は言わないよ」

「や、め」

「黙れ」

「っっっ!?」

殴られた。頬を、平手で。

がっ、と胸ぐらを捕まれ、もう一度反対を殴られる。

「閉じ込めて、君で実験してあげるよ。
君が巨人じゃないか、どうか」

「嫌っ!」

「口答えする権利なんてなまえにはないんだよ」

胸ぐら掴んでいた手がそのまま私の首に添えられて、絞められる。

「う、ぇ」

「苦しい?ならよかった」

押し倒されて、お腹に乗られて、涙が出るまで首を絞められたかと思ったら、また頬をぶたれる。

「これ、飲んで。なまえのために用意したんだ」

「や、だっ!」

どこから出したのか、錠剤を口元に持ってこられる。

「…君に口答えする権利はないって言っただろ」

ぐいっと錠剤を掴んだ指を喉奥まで突っ込まれ、咳き込む私の口をふさいだ。

息ができなくてどうしようもなくて無意識のまま飲み込んでしまう。

「いいこだね」

「なん、でこんな…」

「…せめてなまえが、アニ・レオンハートを嫌っていれば、もうちょっと優しくできたのに」

「っ、ぇ」

「ずっと好きだったんだよ?
君が訓令兵のときからね、だから君が調査兵団に入ってくれて本当に嬉しかったけど、やっぱりだめだよ。
壁外になんて君を送れない」

「ぅ…」

「眠い?寝てていいよ、私はちょっとお仕事に行かなきゃだけど」

「……」

「おやすみ、なまえ。次会うときは牢屋だね」

意識が落ちた。



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