「すっげえかわいくてさ!
一目惚れしちゃって、どうしても忘れられなかったから拐ってきちゃったよ!」
「すまない、ハンジ。
話が見えない」
「全くだ、きちんと説明しやがれ。
このクソ眼鏡」
2.5.上司に報告する
「うん、だからなまえがかわいくてさ」
「それはさきほど聞いたよ。
そうではなくて、私は君に誘拐の疑惑がかかっていることを気にしているんだ
「うん、拐った!」
「…エルヴィン、だめだ。
どうやらこいつ、本当にやりやがったらしいぞ」
「ああ…そうみたいだな、リヴァイ」
「大丈夫だって。
まさか憲兵に捕まったり、ましてや調査兵団に迷惑かけるなんてことは、しないからさ」
「まあ…そのことは、きちんと君自身が根回ししてくれたようだから、それはいいんだ」
「いいのか、エルヴィン」
「ああ、いいんだよリヴァイ。
まったく、どんな手を使ったのやら…」
「んー?
別に、ちょっとお金に物を言わせただけだよ。
あとは、なにかしらの情報、とかね」
「ハンジ、お前のどこにそんな金があるんだ。
有り金全部研究に使いやがって」
「それはたとえリヴァイであっても秘密さ。
もちろん、エルヴィンにもね」
「はは、ぜひ教えてもらいたかったのだけれどね」
「…おい、お前らふざけているのか。
別に、俺はお前が何をしようと、どうだっていいがな、ハンジ。
お前は調査兵団で欠けてはいけない存在だろうが。
それが、隠れてならともかく人前で、没落した貴族とはいえ、その娘を誘拐するなんて、少し自覚が足りないんじゃないのか。
もし憲兵団あたりが横槍いれてきたらどうする…」
「はは、リヴァイってば私のことそんなに大事に思ってくれてたのー?
うれしいなー」
「おい!ふざけるな、俺は本気で」
「わかってるよ、リヴァイ。
あれはうかつだった、思わず本物に出会えて、テンション上がっちゃってさ、ごめんよ。
でも大丈夫、私が責任持って噂は打ち消すよ」
「噂、というよりは真実なんだけどね」
「言うね、エルヴィン」
「はは。まあ、今回の件は、ハンジが自分でどうにかできるというなら、構わない」
「……人一人拐われているんだぞ。
それでいいのか」
「ハンジ、君は最近ずっと上の空だったね」
「…そうだったかな、意識はしてなかったけど」
「ああ、モブリットがいつも以上に危なっかしいと、心配していたよ」
「あはは、彼には心配ばかりかけているなあ」
「その原因は、きっとそのなまえという少女だったのだろう。
君が彼女を傍においておくことで、君がこれまでのように人類のために心臓を捧げることができるというなら、構わない。
ハンジ、君は人類にとって必要不可欠な存在であり、かたや彼女は形ばかりの地位だけが残された没落貴族の娘だ。
比べるまでもない」
「……エルヴィン、俺は理解しかねるが。
お前が言うのなら、そうなんだろうな」
「よっしゃあ!!」
「ハンジ、夜だから大きな声を出すのはやめなさい」
「あはは、ごめんよ。
ところでエルヴィン、なまえだけど、私の部屋で飼うことにするよ。
部屋からは一歩も出させるつもりはないけど…、何かあったときは頼むよ!
ね、リヴァイもさ!」
「断る。お前がちゃんと首輪を繋いどきゃ、問題ねえじゃねえか」
「ああ、首輪ね!
それはいい考えだ!
よし、じゃあさっそく私は頑丈な首輪を作る作業にとりかかるよ!
実はもうなまえ専用の手錠と足枷は作ってあるんだよね!
帰ったらつけてあげないと…!」
「夜はちゃんと寝るんだよ」
「わかってるよ、エルヴィン!」
「…問題起こすんじゃねえぞ」
「ああ、大丈夫だよ、リヴァイ!
心配しないで。
それじゃあ、私なまえのところに戻るから!
じゃあね、おやすみ!」
「ああ、おやすみ」
「…チッ」