「XXX」千夜様より、12345hitキリリクでいただきました。
ありがとうございました。



Sadistic & Lunatic



※現パロ


「快楽ってのはね、なまえ。身体がバネになって緩衝帯になれば、逃げて行くものなんだよ。単純計算で、君が普段享受している快楽はその本来の快楽の五分の一に満たない。君のいう「気持ちいい」はたかだか全体の20パーセントなんだよ。だから、今君はこんな状況に陥っているんだ。わかる?」

ハンジは私を拘束するのが好きだ。それはわかっていたし、その趣味に異論はない。

少なくともそういう趣味に対して汚らわしいと糾弾するつもりもなければ異常者だと罵るつもりもない。

今までにも手を縛られたり、目隠しをされたり、そんなことはままあった。だが、これは。少し異常なのではないか。

今私は、身じろぎの一つができないほど完全に彼女に拘束されている。

「ハンジ、…ここ、どこ」
「何の変哲もない都内のSMホテルだよ。何年か前には有名なゴシック系のミュージシャンがここでPVをとったんだって」
「来た記憶、無い」
「なまえが酔いつぶれたのが何時間か前だね」

SMホテルな時点で何の変哲もないという言葉は当てはまらないはず、なのだが。ともあれ私は物の見事に首から上以外を動かせない状況に陥っていた。

私が座っているのは、なんというか玉座のような物だ。目の前には三面鏡があって、はっきりと写っているからわかる。私の前に立っているのはハンジ。一応、というかしっかり私の恋人だ。

両肩、腰、肘、手首、両膝が頑丈な鎖のような物で椅子に縛り付けられている。ハンジがいまくるくると回している鍵が、おそらくこの鎖を解ける唯一の物だろう。

動くのは開くように縛りつけられた膝から下、そして首から上のみ。

「いやあ、最近のホテルって凄いね。私がこっちの世界に入りたての頃、やっぱり来たんだよ、行きずりのおねーさんに誘われて。そしたらさあ、畳の上にベッドが置いてあって天井に鏡。萎えたなんてもんじゃない、ホテルなんて二度と使うかって思ったけどとんでもない。時代って変わるなあ」
「ねえ、やだ。これ、…離して」
「ん? 私の話聞いてなかった? 君はいまからいつもの五倍気持ちいいことをしてもらえるんだよ?」

よかったね、と言わんばかりの笑みに私は首を振った。

「え、気持ちいいの、嫌い?」
「嫌いじゃない、けど! こんなのって…!」
「まあまあ、物は試しだ。ほら、さすが高いホテル。いろいろ設備は整ってるよ。大人の玩具から違法すれすれの拷問器具まで」

私の目の前の鏡に寄りかかっていたハンジがゆるりと身体を起こして私に近づいた。座っている私よりもずっと背が高くて、そのまま上から覆いかぶさるように背もたれに手を着く。

「や、やだよ…っ、」
「うん?」

ゆっくりとハンジの唇が動けない私の耳に近づいて、熱のこもった吐息が吹き込まれた。

「折角なんだからさあ、……楽しもうよ」

完全に堕ちた。



はじめにハンジは私の靴を脱がせ、かなり乱暴にストッキングを破いた。あとで弁償しろといえば笑顔で応じるのだから張り合いがない。

ゆっくりと、むき出しになった足先を、ハンジの指が滑っていく。そのまま彼女は私の前に跪いて、ちゅぷりと音を立てて足の指に吸い付いた。

「ん、…!! やだっ、」
「くすぐったい?」
「そう、じゃな……っ、けど、」

訴えてもハンジは笑うだけで、私は身をよじることもできない。びくりと身体が震えているのにそれが押さえつけられているのが嫌なほどわかった。

「……豪勢な玉座に縛り付けられてさ、足を舐められるってどんな気分?」
「へんなかんじっ…」
「あは、君は女王様には向かないなあ」

足の親指からそっと唇が離れて、彼女はふくらはぎから太ももにかけてをぬるぬると舐め上げていった。

ゆっくりと伸びてきた手が胸に触れた。柔らかく服の上からもむ。揉む事で快楽は生まれなくても、羞恥を煽るには十分だった。

「あっ、…やだぁ…」
「ふふ、急かさなくても直ぐに脱がせてあげるからね」

器用にブラウスのボタンが外されていって、あっという間に下着を取られて、剥き出しになった胸を包む様にハンジの手が触れた。

拘束具のせいで照れ隠しの反抗もできないから余計に恥ずかしい。

「なまえさ、乳首勃ってるよ」
「っ……」
「あっはは、かわいいの」

唇に口付ける様に、ハンジの唇がいただきに触れた。甘く声が上がる。唾液をたっぷりとつけて、甘やかす様に、責める。

「っん、…やだっあ…」
「何? こんなんじゃあ手ぬるいって?」
「あっ、ひ!」

どうしよう変なスイッチいれちゃった。

優しく舌と唇ではんでいたそれに、ハンジはいきなり歯を立てた。潰すように噛まれて、やはり身体は反応する。動かないから、ダイレクトに官能を刺激されて、たまらない。

「あっひゃ…んん」
「良さそうな顔しちゃって」
「んあっ…!」
「噛まれたあとさ、舐められるのが好きなんだっけ。沁みて痛くて気持ちいいんだよね?」

そんな事いってない。

とは、言えなかった。


「ね、こっち。触っていいよね」

彼女の問いかけは問いかけの意味を持たないのだ。確定事項の伝達。よくわかっている。

「せ、せめて慣らして…」
「は、私が慣らさずいれるなんてした事ある?」

ハンジの指が下着越しにそこを押した。

「っ…」

いつものように腰を引けない。動けない。つまりは、私は逃げられない。追い詰められて、いる。

「ねぇ、どんな気分?」
「やっ……あ、」
「指が嫌なの? じゃあこんなのどう?」

すっと、ハンジが立ち上がって離れた。突然不安になって見渡すと、ハンジか隣の部屋に入っていく。

まって。

先述の「違法すれすれの拷問器具」とか持って来ませんよね。私そんなの死んじゃいますよ。

「はは、不安そうな顔しちゃって。はい」
「え……」

ハンジが持って来たのは、その、丸くてピンク色でスイッチがついていて、いわゆる大人の玩具というやつだ。

本物を始めてみた私は目を白黒させる。

「え、あの、これ」
「ローター」
「いやわかるけど…っ」

わかんない。嘘でしょ、これ使うの。なんで、指じゃダメなの。

わたしの疑問を汲んだかのようにハンジは言った。

「あのね、君ってセックスでタチになったことある?」
「な、い」
「そう、だからわかんないんだよ。指いれるだけで何が気持ちいいんだって思うだろ? とんでもない。すげぇきもちいいし、余裕もなくなるんだよ。で、今日は私は余裕綽々に君がよがってるところを見ることにした」
「え、まってまって…っ、やだ!」
「異論は認めないよ」

ハンジがごくあっさりと、手に持ったそれを下着の上から私の秘部に押し付けた。逃げられない。

よいしょ、と色のない声を出して彼女の親指が動き、そして。

「っ、ひゃ…ぁああっ!ん、」
「うっわ、声エロい。やべぇ」
「やっだん、っ…やめてっええ…んん!」
「やめるわけない」

ハンジが手の中に包む様に持ったそれがぶるぶると震えている。その単調な刺激が、わたしの性感帯を刺激していて。

今更、目覚めて直後の彼女の言葉を思い出した。快楽は逃げる。だから縛り付けて逃がさない、と。

確かに逃げられなかった。腰の一つ引けない。足先が快楽を受けてぎゅっとしまって丸まる。鳥肌が立って、身体は驚くほど敏感になる。

「ね、なまえ。まだ平気でしょ」
「んんっ、ああぁ…! やら、やらっ…あ」
「ほら、」
「んんっ!」
「……えっろ、」
「…はうっ、ああ、っ、あ、…! っ、はんじ、はんじ…ぃ、っ、きす、きすしてぇっ…」
「ふふ、仰せのままに、おひいさま」

もちろん攻める手はそのままに、甘いキスが降ってきた。瞼に鼻に唇に、動けない私の代わりに綺麗に動いて私を愛でる。

「や、やだやだっ、やあああっ、いく、いっちゃう、からぁ…んん!」
「……だあーめ」

散々私を責め苛んでいた玩具はいとも簡単に秘部から離れ、ハンジはそれをぽいと放り投げた。

「やっぱ、これじゃセックスした気にならないね」
「はん、じ…」
「待って」

ハンジがゆっくりとした動作でポケットから鍵を取り出した。椅子に縛られた私の手をあっさりと解いてくれて、私は安堵に息を吐いた。

「ねえ、欲しい?」
「……」
「私と、セックスしたい?」
「ーー……したい」
「いい子」

私がハンジの首に自由になった腕を回すのが合図だった。

ハンジが綺麗に揃えた二本の指を遠慮なく、ずらした下着の隙間から私の中に進入させる。

「なまえ、ここさ、ナカ。すげぇ熱い。とろとろしてて、絡みついてくる」
「あ、あ…っ、いいか、らぁ…んん!」
「いやらしい顔、しちゃってさあ」

好きで、好きで、気持ちよくて。自由にならない下半身を置いてけぼりに動く腕を使って必死で抱きつく。

ぐちゅりと卑猥な音を立てながらハンジが私の中を擦り、内壁がぎゅっと縮まって絶頂が近いのを知らせる。

「なまえ、好き、だよ、」
「んん、っ…あああっ…!」

普段の私から想像できないほど強く抱きついて、私は不自由な身体のまま、思い切り達した。

「っは、…はぁ、は…」
「お疲れ様」

手早く私の拘束を解きながらハンジが微笑んだ。

「やっぱ少し痕になっちゃったね。赤い」
「ハンジのせいでしょ…」
「でもよかったろ?」
「……ばか」

私をひょいと抱き上げると「ベッド行く?」と軽く問う。私が頷くと隣の部屋に連れて行ってくれた。

「なまえ」
「ん…」
「やっぱSMホテルダメだ」
「なんで?……あ」

目に入ったベッドがひどかった。なんだこれ、檻? 檻だよね?

「ここで寝たい?」
「ハンジが一緒なら、」
「まあ郷に入っては郷に従え、か」

檻の中のふかふかのマットレスに二人で横たわる。嫌に狭い。

ぴったりと体をくっつけて、私たちは眠った。


寝覚めは悪かった。


fin

千夜様、ありがとうございました。
色々言いたいことがあるので、一言で感想を表すならば。
なぜ私のSM好きがバレたのか。

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