※目が痛い
「なまえ、新年だよ!姫始めしよう!」
「…言うと思った」
姫始めさせられた
「ねえ、いいでしょ?」
「…断っていいなら、断りますよ」
「だめ」
「知ってます…」
年を越すのって、エネルギーを使うらしい。
今まではよくわからなかったが、また一年が始まるのか、と思うと、今の私にはつらかった。
それでも、別に今の私に自殺ができるわけでもなし、結局、憂鬱な気分を抱えたまま、私はハンジさんのおもちゃでいるしかなかった。
「君には何が見える?敵は何だと思う?…なんてね」
「何ですかそれ…」
「別に?かわいいねえ」
「……」
目隠しに覆われた私の目を、親指の腹で彼女が撫でてくる。
痛いし、怖い。
もう目を潰されてかなりたっているけれど、未だに『見えない』というのは、とても恐怖なのだ。
彼女が今どんな顔をしているのか、声色だけじゃとても判断できない。
「震えてる?」
「……」
「怖いんだ…?」
「…っ」
「いいよ、私への恐怖でいっぱいなんだよね、最ッ高じゃない」
「あ、ぅ…」
頬を撫でられる。震える。怖い。
「うう…」
「怖いよねえ…?もう何にも失いたくないもんね?
腕とか足とか、失いたくないもんね…?」
「ごめん、なさい…」
「ん?なまえは何も悪いことしてないでしょ?」
「……」
ハンジさんは、今どんな表情をしているんだろう。
怖い。怖い。
「かわいいね、なまえ」
頭を撫でられて、びくりとする。
私から全部奪う人。
目を潰されて、足は薬で麻痺させられ、腕は常に手錠で自由を奪われた。
目を潰される前、目の前で家族や友達を奪われた。
ハンジさんにではなく、巨人に。
そのショックで一時声が出なくなり、食事が喉を通らなくなった私を見たハンジさんが、私の目を潰して、私の世界を奪ったのだ。
あれ以上の地獄はないと思ったのに、彼女によってさらに深い地獄に落とされた。
なぜこんなことをするの、そう聞けば、彼女は一言、「これで一生私のことを忘れられないだろ?」そして私以外頼れる人がいなくなる。
それは正解だった。
人生のどん底で、さらにひどい目に合わされて、でも頼れる人はこの人しかいなくて。
「なまえ」
「ん…」
ハンジさんに唇を押し付けられる。
逃げられない。でも受け入れられない。
「ねえ、なまえ…。
私のこと、どれくらい嫌い?恨んでる?」
「…ん、あ」
「愛してるの、反対は?」
「…無関心」
「有名な話だね、正解だ」
ぺろりと頬を舐められる。
「君に、好かれる方法が、見つからなかったんだよね」
ゆっくり押し倒される。
冷たい床に押し付けられる背中が寒い。
「ねえ、どんな気分?
全部奪った、大嫌いな、女に、大嫌いなことされながら、一年が始まるんだよ」
「……っ」
「その心底嫌そうな顔が好きだよ…ふふっ!」
そんな顔、してただろうか。
わからないけど、興奮したらしいハンジさんが、押し倒した私の服を脱がせてくる。
「好きだよ」
「…、」
唇を噛み締める。
虫酸が走る。
ああ、嫌だ。大嫌いなの。
「そう!その顔だよ!
本当に!心から!心底嫌そうなその顔!
私が嫌いなんだね、本当に…!
ああ、でもね、私は愛してるんだよ!!
大っ好きだ!愛してるよ!」
「い、や」
「ん?あはは、そりゃそうだよ!
嫌がることしてるんだから!ふふ!」
「…う」
首筋に噛みつかれる。
シャツのボタンを外され、彼女に身体をまさぐられて、身をよじった。
ろくに抵抗もできないまま、身ぐるみ剥がされて、性器に口付けられた。
「う、ぁっ」
「大嫌いな、この世で一番恨んでるやつに、ここ…舐められるの、どんな気分?ねえ」
「やだあ…」
「ふふ」
じゅる、と吸われる。
涙が溢れそうだ。…溢れないけど。
そのまましばらく舐められて、それから、指を突っ込まれる。
正直、全然気持ちよくない。
けど、私が不快感な表情を噛み締めた唇とともに見せれば、彼女はそのたびに興奮して、より私を不快な気持ちにさせるから、もうどうしたらいいのかわからない。
「なまえ、あと一分だよ」
「は、ぁ」
指を突っ込んだまま、ハンジさんが私に覆い被さって、口付けてくる。
「ん…」
漏れる息が色っぽいのが、妙にむかつく。
「あと、30秒」
「ふ、」
「20秒」
「…っ」
「10秒」
「ぅ、あ」
「5」
「4」
「3」
「2」
「1」
「、やめて!!」
「0。…あけましておめでとう!なまえ?」
「……もう、やだ」
「今年もよろしく」
「やだよお…っ!」
逃げたい。逃げたいよ。
嫌い、嫌い、大嫌い。
もう死んでしまいたい、新たな一年なんか始まらなきゃいいのに。
そう思う私をよそに(むしろ私がそう思っているからこそ)、興奮しきっているらしいハンジさんが、私に口付けてから、私の目隠しに手をかけた。