※現パロ
※めちゃくちゃ特殊な恋愛観を持つ主







「もうやだ…恋人ほしいよー!」

「いいじゃない、友達同士でクリスマスも、どっちかが結婚したりしたらできなくなるんだよ?」

「ハンジ、まさか恋人できたとかじゃないよね?」

「違うよ」

「よかった、また一人非リア充仲間が減っちゃうところだったよ」

「私は毎年、こうやってなまえと酒飲んで鍋囲むの、楽しみだけどね」

「えー、もう私ハンジと結婚する!」

「女同士は結婚できないよー」







クリスマスに友達充からリア充になった







クリスマス。

鍋に酒なんて、まるで女子力の欠片も感じられない組み合わせで、クリスマスだっていうのに女二人で寂しくいる私たち。

聖夜は性夜、なんて馬鹿なことも、もう言われなくなってきたけど、今でもクリスマスは恋人とすごそう、というのが大半の若い女性の考えだと思う。

かといって、全員に恋人がいるわけじゃない。

作らないハンジに対して、作れない私は、恋人がほしくて仕方なかった。

「エルヴィンさん、かっこいいよねえ…」

「エルヴィン?もう結構な年だよ」

「だからいいんでしょ!
あと、ピクシスさんに、ザックレーさんに…」

「ごめん、二人ってもう孫いるんじゃないかな?」

「そうなの!?」

「いや、知らないけど、そういう年でしょ」

「そっかあ…」

「で、結局女の子狙うのはどうしたの。
ガールズオンリーイベントとか、行ってたじゃない」

「どうやってもノンケしか好きにならないからやめた…」

「そういうイベントって、同性か両性愛者の人しか来ないんじゃないの?」

「そんなこともないよ、今一歩踏み出せなくてきっかけ作りに来る子もいたし、ただ単純に、恋愛感情とか抜きに女の子が好き、友達がほしい、って理由で来る子もいたし…。
まあ、場合によるんだと思うけど…」

「でも、同性が好きな子は多いんじゃないの。
なのに、普通に異性が好きな子好きになっちゃうの?」

「そう!」

「そりゃあまあ…前途多難だね」

私は、同年代の男性が苦手なのかもしれない。

好きになる男性は全員年上。…しかも、かなり。

そして、私は女性も愛せて、彼女たちは若くても全く平気だったが、なぜか好きになる人は全員ノンケ。

レズビアンイベントに行っても、なぜかびっくりするほどノンケを引き当てるし、まあ私生活で女の子を好きになってしまったときは、ほぼ間違いなく相手はレズビアンのレの字もないノーマルな女の子。

「だからもう、最近は男性狙いで行こうと思ってるの」

「ふうん…」

鍋をつつきながら、ハンジが興味無さそうに話を聞く。

「じゃあ、出鼻挫くようなこと言って悪いけど、エルヴィンは恋愛する気はないみたいだよ」

「えっ!?何で!」

「さあ?仕事第一なんじゃないの?」

「えー…私、支えるのに…」

「無理だと思うなあ」

「ひどいよ、ハンジ!」

「年上でもせめてリヴァイくらいの年齢狙っておいた方が無難だと思うんだけどね」

「んー、まだ若いよ…」

「わからないなあ…」

はい、とハンジにお酒を渡されて、ありがとうと缶を開ける。

「まあ、恋人作るだけが人生じゃないよ」

「そりゃそうだけど…ハンジはさ、何で恋人作らないの?」

「え?特に理由はないけど、強いて言えば仕事が今は楽しいからかな」

「その考え持ってると、嫁き遅れるよ」

「ありゃ、いつも生き急いでるって言われるんだけど」

「まあ、生き急いでるけど…」

「恋も今しかできないかもしれないけどさ、仕事も、今しかできないから。
私は、それでいいよ。それがいい」

「相変わらず、かっこいいね…」

「そう?」

私と違って、ハンジは考えがしっかりしている。

同じ会社に勤めているとはいえ、研究職の彼女と、平社員の私じゃあ、仕事に対するモチベーションは違うだろう。

けれど、それにしても彼女はちゃんと、考えている。

「なまえって、男はかなり年上がいいんだろ?」

「え?ああ、うん」

「じゃあ、女はどういうのがいいの?」

「えっと、うーん…かっこいい人、かなあ」

「随分ざっくりだね」

「でも、ちゃんと心の底から女の子な人がいいの」

「かっこいい人がいいのに、女の子らしいのがいいの?」

「そうじゃなくて、性自認が完璧に女性の人。
すごく年上で、性自認が男性な女性は、平気だけど」

「ああ…じゃあ逆に、同年代の男性で、性自認が女性なら、平気なわけだ」

「そうみたい。
世の中には、どっちだかわからない人も、きっといるんだろうけど、私にとっては、心の性別って、すごく大事みたい」

「そっか。じゃあさ、」

「…え?」

ハンジの顔がずいっと近づいてくる。

「私はどう?」

「…ハンジ?」

ふふ、と真近くで笑われる。

ハンジは、確かにかっこいい。

男っぽいし、たまにどっちだかわからないこともあるけど、ちゃんと女性。

容姿だけ見ても、彼女が無頓着なせいで髪はぼさぼさべたべただったりするが、目鼻立ちは整っていて、スタイルもいい。

性格だって、研究に夢中になって暴走してしまうところは難ありだけれど、基本的には冷静で、優しくて、頭がいい。

一見、完璧に私の好みなのだけれど、でも、

「ハンジは、ノンケじゃない…」

「最近、そうでもないかもしれないって思ってる。
…って言ったら、どうする?」

「どうするって…、どういうこと?」

「そのままだよ」

「…だったら、ちょっと期待する」

「へえ?」

ハンジがもっと身体を寄せてくる。

鼻がくっついちゃいそう。

「こんなの…、」

「うん?」

「勘違い、するから…」

「…じゃあ、して」

ちゅ、と唇がかする。

ふふ、と笑ってハンジが私から離れた。

「ハンジ…!?」

「あはは、ごめんね」

「ハンジ、あの…っ」

「ん?」

「ハンジは、ノンケだったでしょ…!?」

「うん、だけど、なまえとなら付き合ってみたいなあ、って」

「…えっと」

「私じゃ嫌?」

「…喜んで」

さっきまでと同じように、鍋をつつく。

お酒を飲んで、一口。

ただ、先程までと違うのは、隣にいるのが、友達じゃなくて、恋人ってこと。

「よかったねなまえ、これで晴れてリア充だよ」

「う、うん…」

緊張する。

「私もまさか彼女ができる日がくるとは、思わなかったなあ」

「うん…」

「恋より仕事とは言ったけど、何かの時に支えあえるっていいね」

「う、ん…」

「…何でそんなぎこちないの」

「ご、ごめん…いきなり緊張して…」

「ふうん?」

ハンジが隣でかたかた笑う。

「かわいいね、なまえ」

「ば、ばか」

「恋人になる前から、よく言ってたじゃない」

「だけど…」

「なまえ…」

ハンジが私の頭を撫でる。

「私も、なまえも、彼女ができるのは初めてなんだから、」

「…うん」

「ゆっくり行こう」

「うん。…いや、でもこっちの世界に入るのはハンジのが後なのに、何私リードされてるんだろう」

「いいんじゃない?」

「よくないよ、私が先だったんだから」

「いいよ、お互い好きなら、どうでも」

「…私ハンジと結婚する」

「喜んで」




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