ディシプリン。
脱獄不可能、ガスマスクの女性看守、レズビアンの性的虐待が横行する女性刑務所。
世も末、法もなにもなくなったこの世界で、私は冤罪によって今日、ここに収容される。
「出してください」
「それは無理だよ。だって君、罪を犯したんだろう」
「犯してません!冤罪です!」
「だとしても、裁判所がそう判断したなら、それが真実だとするしかないんだよね」
「そんな…!」
珍しく(むしろ所長を除いて唯一かもしれない)、ガスマスクをしていない看守のお姉さん。
白衣を羽織っているということは、きっと実験かなにかを、しているのだろう。
「外界で付着したあらゆる罪悪を払い流す、聖なるみそぎの場所。
よく言ったものだよ、その看守たちが淫行に手を染めてどうするんだ」
「……」
「まあ、私もその一人だけどね」
かつかつと靴を鳴らして彼女が近づいてくる。
逃げられない。
だって、そういう状況なのだから。
「こんなところに配属されて、私も不幸なものだと思っていたけれど、君みたいな子に手を出しても怒られないなら、これもいいかもね?」
「……っ!」
「君の仕事が決まったよ。
配属はここ、私の研究室だ。
つまり、私の実験体になることが、君の仕事だ」
「実験…!?」
「まあ多少つらいかもしれないけど、大丈夫。
研究室配属は一人なんだけど、その子には破格の待遇をするように言ってある。
だから、君に手を出そうとする看守は中々いないだろうし、設備も整った部屋に入れる。
虫もいないし、シャワーだってある。
その代わり、独房だけどね」
「一人…」
「平気だよ、私が傍にいる。
"おひとりさま"行きになるようなことさえしなければ、君は一人のようで一人じゃないさ」
「……」
「はは、まあいい、これからよろしく。
仲良くやっていこう」
手を差し出される。
それを握ることはできない。
私の腕は、拘束されているから。
逃げられない。
逃げられない。
私はどうしたって逃げられない。
この絶望的な状況で、私はどう生きればいいのだろう。
「ちゃんと総括できたかな」
※『ディシプリン*帝国の誕生』より一部設定をお借りして