【寂しがりの蛇】








・・・・ああいうやつにはな、興味を無いふりをしておけばいいんだ。
メタルがそう言ったことに、シャドーは首をかしげた。
格別に高濃度なロボット用アルコール飲料「ロボ酒」を、ぐいと口に含むと、メタルは笑った。

「つまり、貴様はスネークの尻を追いすぎなんだよ」

「スネーク殿の尻は薄くて絶品でござるからなあ」

「いや、そういう意味ではなくて、貴様はしつこくスネークを追い回し過ぎているということだ」

「メタル殿に言われたくないでござる。メタル殿もクイック殿をしつこく追い回しているでござる」

「あれは・・・・・・いいんだ。Mだから」

メタルの杯が空になったのを見て、シャドーはとっくりを傾け並々と酒を注いでやる。
酔いたい気分だったのか、メタルはそれを一気に飲み干した。
もしかしたら、またクイックに酷いことでもして嫌われたか何かしたのかもしれない。あるいはまた、クイックの記憶データでも消去して罪悪感に苛まれているか。
まあ、そんなところであろう。
このロボットは、恋愛に関して不器用・・・というか素直でないところがある。
そんなメタルに恋愛相談などしている自分もどうかと思いながら、シャドーは苦笑いをしつつ、また酒を注いでやった。

「しかし、スネーク殿を追い回すのをやめたら何も進展せぬでござろう」

「追い回すと逃げる質のヤツがいるだろう。それがスネークだ。たまには冷たくしてみろ、態度が変わると思うぞ」

「うむむ・・・そういうもんでござるか・・・人間の言う恋愛とは難しいモノでござる」

「人間の書いた本の受け売りだ」

メタルの杯が、また空になっていた。

「俺もわからんよ、恋愛というやつは・・・・・全くわからん」

溜息をつくメタルを見た。
顔の人工皮膚は真っ赤になっており、その赤い瞳が切なげに瞬いた。





※※※※※





メタルの助言を完全に信用しきった訳ではないが(一番の恋愛不器用はメタルだからだ)、シャドーは心持ちスネークから距離を置くことにしてみた。
今まで姿を見れば飛びついたり、口説いたり、尻を触ったり、その他セクハラetxを行っていたが、そこは忍法・我慢。
スネークはシャドーを見た途端、何かされると構えたが、当のシャドーはスネークから目を逸らした。

「・・・・・・?」

スネークは不思議そうな顔をして首をかしげたが、「今日はねえのか」と呟いて何処かへ行ってしまった。

(こんなことで本当にスネーク殿がふりむくのかどうか)

半信半疑だったが、まあやらないよりはマシだろう。
スネークとは何か用がある時以外は会話せず、会っても素知らぬふりをしていた。その度にきょとんとして何か言おうとし、しかし口を閉じるスネークを見て「これは成功するかもしれない」とシャドーは微かに笑った。
そんなことを繰り返していたある日、ついに

「シャドー、お前なんかあったのか」

スネークが口を開いた。

「何故か」

「いや・・・・なんか、変だし」

「別に、いつもと変わらぬ」

いつもとは違った鋭い瞳で、シャドーはスネークを見た。
驚きからか、恐怖からなのか、スネークの肩がぴくりと動いた。

「俺、なんかしたっけ?」

「いや、何も。用が無いなら去らせて頂きたいが、よろしいでござろうか」

「・・・・・・・」

冷たく言い放ってやると、スネークは怒ったような顔をした。
細い機体が、少し震えているような気がする。スネークの、赤い瞳が蛇のような陰湿さを持ってぎらりと光った。

「俺には用がある」

「な?」

「ちょっと俺の部屋に来い。聞きたいことがある」

「な、な、な?」

スネークは、シャドーの腕を半ば強引に取ると、大股に歩いていく。
どういうことか、シャドーには全くわからなかったが、とりあえずスネークの部屋に初めて行けるという感動で震える思いがした。
今まで「くんな」「近寄るな」「ストーカーが」・・・・・・そう言われ続けたシャドーにしてみればたいした進展である。

「お前さあ・・・・・」

部屋に入るなり、スネークはずずいとシャドーに詰め寄る。
相も変わらずスネーク殿は別嬪でござるなあちゅっちゅしたいでござる、と言う気持ちを表面には出さず、シャドーは彼を見つめた。

「なんなの?」

「なんなの、とは?」

「俺のこと好きだったんじゃねえの?」

スネークは言うと、ベットに座った。その赤い瞳を細めながら、シャドーを見る。
細い脚を投げ出し、ゆっくりと組む。
長く、やけに真っ赤な舌で自身の唇をぺろりと舐める仕草は、誘っているようにしか思えない。

(無理でござる)

瞬間、理性回路が音を立てて壊れた。
気付けばシャドーは、スネークを組み敷いていた。にやりと笑うスネークの顔が視覚サーチに映る。

「なんだよ、結局そうなんの?つまんねえな・・・・・」

スネークはシャドーの頬を細い指で撫でた。

「スネーク殿・・・・拙者は」

シャドーの排気が荒い。
自分でも興奮しているなと思いながら、彼はスネークの赤い唇に自身の唇を重ねた。
人間とさして変わらないであろう柔らかな唇に舌を這わせ、中に入り込む。直ぐにスネークの長い舌が絡まってきた。
幾度となく舌同士を絡ませ、互いの潤滑油を交換する。
ちゅ・・・と湿った音が部屋に響いていた。その音にすら、興奮する。
シャドーは、スネークの下半身に触れた。
人間と違って、そこに性器がある訳では無い。単なる雰囲気だ。
ただそこには神経回路が集中しているから、気持ちいいのだろう。スネークは身をよじらせ呻いた。
シャドーが、唇を離す。透明な糸が伸びて二人を繋いでいた。
スネークは指でその糸をぷつんと切ると、赤い顔でニヤと笑った。

「俺と、ヤりてえんだろ、シャドー」

「応。拙者は、スネーク殿と、ひとつに・・・・」

それを聞いて、スネークは唇の端を歪ませ笑った。
心底おかしそうに、またはシャドーをからかっているように「クックッ」と笑う。

「残念だけど」

「え!?」

突然、組み敷いていたスネークが、脚を振り上げた。
その脚はもろにシャドーの下腹部にあたり、金属がひしゃげた音を立てる。
半ば信じられないような顔をしながら、シャドーは後方の金属壁にぶっ飛んでいた。
金属壁にぶつかった瞬間、シャドーの口元から茶色のオイルが零れる。
一瞬、何が起こったのかわからず、シャドーは間抜けな顔をしてスネークを見た。
今からひとつになろうというところで、どうしてこうなった!?明らかにいい雰囲気だったではないか。
スネークはそんなシャドーを見て、ケタケタと笑っている。

「おかしいと思ったんだよな、いきなり冷たくなってよ。どーせメタル先輩あたりに変なアドバイスでもされたんだろ」

図星だ。
スネークは、腹を抱えながらゲラゲラと笑った。
ひとしきり笑った後、

「俺を落とすのは難しいんだよ、この変態忍者」

スネークはそう言い残し、自分の部屋から出て行った。

(わ・・・・訳がわからないでござる・・・)

シャドーは口元のオイルを拭うと、立ち上がる。
廊下からは、何処となく嬉しそうなスネークの口笛が聞こえてきていた。




※※※※※




「とまあ、こんなことになった次第で」

「ふうむ」

「拙者はスネーク殿がわからないでござるううううううう」

シャドーは泣きながら、ロボ酒をいっきに飲んだ。
メタルは、空になったシャドーの杯に酒を注いでやりながら、相槌を打つ。

「なんというツンデレ・・・・・攻略の仕方が皆目見当つかん」

「拙者、どうすればいいんでござるかああああああああああ」

「ん、まあ、その、なんだ。あっちが参りましたと言うまで追いかけてやるしかないんじゃないか・・・・・」

メタルは、自分に抱き着きながら男泣きするシャドーを胡乱げに見る。
どうすればいいかと言われても、そんなめんどうくさい男に惚れたシャドーが悪いのだろう。
メタルは、シャドーを引き離し距離を取ると、ちびちびとロボ酒を飲んだ。
この前とは違って、やけ酒をしているようすは無い。

「メタル殿はクイック殿とどうなったのでござるか・・・」

「ん?ああ、久々にクイックがデレてな、お兄ちゃんは幸せだ」

「ああああああああああ!!スネーク殿はいつデレてくれるのでござるかあああああああ!」

「知らんよ」

シャドーの心からの叫びを聞きながら、メタルは酒を飲み続けた。





END









さきさんが言ってた社長のスネーク(ぽい)影蛇。
スネークは追われるとめんどくさいと言って逃げる。でも冷たくされると寂しくて愛を確かめたくなる。・・・・・でああ、やっぱこいつ好きなんだって思うとつれなくなるっていう・・・訳がわからないwwwwwwwww
むずかしいやつですねwwwwww
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